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自超守義~『藁の楯 わらのたて』大沢たかお

自超守義~『藁の楯 わらのたて』大沢たかお

だから役者は面白い

「ピリピリのピの字もない心地よい雰囲気の撮影現場で、三池監督もよく冗談を言って役者をリラックスさせてくれました」と、三池組初参戦を振り返る大沢が本作で演じるのは、凶悪犯の移送を命じられたSP。体を動かすことが好きという彼は、アクションシーンにも手応えを感じたようだ。しかし、いかなる時も自らの感情を表に出してはならないSP役には、難しさも感じたと打ち明ける。
「SPはどんな時も感情をぶらしてはいけない、表情すら変えてはだめ。ほかの役者たちが顔色を変え表現できるところを、自分だけはできないという役柄は、演じてみるとストレスになる部分が多かったです」
 しかし、そこが大沢流。そうした制約条件のある中から表現手段を開拓していくことに面白さを見出したと、無邪気な表情を覗かせる。

自分との約束

 映画、ドラマ、舞台で活躍し、ある時はテレビドキュメンタリー番組で世界を巡るアクティブな大沢。自らのフィールドを広げ続ける彼を突き動かす思いとは。
「やりたいことをやり続ける、それだけ。それが叶う俳優業である限り、我慢なんかせず自分が心の底から望むことにのみひたすら挑み続けたい。例えトライするだけでもいい、その姿勢が大事なんです」
 このスタンスについて大沢は、視線を落とし自らの心情を確かめるように静かに語り始めた。
「40代に入ってから、人生の限られた時間のリミットを実感するようになりました。あるいはこれまで、それに気づかないフリをしてきただけかもしれない。でもそれは確実に近づいています。だからこそもう我慢も後悔もしたくない、自分に正直に生きる。これは僕の中で守っていることです。もちろん必要な我慢はしますけどね(笑)」
 その芯の強さを支えるモチベーションを彼は教えてくれた。
「ひとつは、これまで作品を通し出会った素晴らしい人々との関係性。今回の三池監督との映画作りも然り、誰にでもできることではない経験に感謝と誇りをもっています。もうひとつは、観客の存在。せっかく映画館まで足を運んでくれるのであれば、『大沢の出ている映画は面白いね』と言ってもらいたい。正直、認められたいという気持ちは強いです」
 真っ直ぐ見据えた眼差しに、彼の思いの強さがこもる。

自己革命のススメ

 そんな大沢といえば、ストレス社会で日々奮闘するビジネスパーソンと同年代。どうすれば彼のように、強く自分らしく生きられるのだろうか。
「人生いろいろなことがあるけれど、暗くなっていてもしょうがない。光の指す方を向き、自己革命を起こしながらハッピーに生きたい。これは僕に限らず、みんな今すぐ実行できることでしょう。自分が変われば、きっとまわりの世界も動き出すと僕は信じています」
 またリフレッシュ法については、「昔からよく『健康な体に健全な魂が宿る』と言われるように、『心・技・体』のバランスを整えることが大事。そういう基本的なことが現代では曖昧にされているように感じます。特に今のようなストレス社会では、みんな頭ばかり使って悩み、頭でっかちになっているのでは。そんな時、僕はとにかく体を動かし汗をかくようにします。そうやって頭と同じように体を疲れさせ、心身の調和をとることがストレス回避に繋がると思います」と、清新な自論を展開する。

ビジネスパーソンに捧ぐ“息抜き(生き抜き)方”

「今の30代、40代の人たちは仕事以外で毎日どんなことをしているんでしょう。あまりお酒を飲みに行かなくなったとは聞きますが、やはりゲームとかかな」と、自身と同世代のライフスタイルが気になる様子の大沢。これまで芸能一筋に歩んできた彼だが、厳しい日本経済を支えるビジネスパーソンには、日々感心させられると話す。
「人口減少、経済力の衰退、税金や年金問題…… 今いろいろな面で、日本が踏ん張ることのできない苦しい状況にある中で、社会を支え奮闘しているビジネスパーソンは本当にすごいと思います。会社員を経験したことのない僕が言ってもあまり説得力がないかもしれないけれど(笑)、皆さん可能な限り、自分に正直に後悔しない生き方を貫いてほしいと思います」   
 そうは言っても、組織に属する会社員が自分の意思通りに真っ直ぐ生きるのはやはり難しい。その点について大沢は、「それはすごくわかります。だからそこは個々人の選択にも委ねられると思います。我慢して生きる人もいれば、日々何かに挑み続ける人もいる。少なくとも、僕は後者のような生き方がしたいと思い、そういうふうにトライするよう心掛けて今生きています。後悔したまま人生を終えるのはすごく切ないじゃないですか。それでも理不尽なことや、壁にぶつかることは誰にでもある。そんなときには、いったんその事象から離れてみることも大事。ゲームでストレス発散をするのもいいですが、簡単にサウナでもジムでも体を動かすことに意識を傾けると心身ともにすっきりして、何か新たな考えが浮かぶときもありますから」と健全な息抜き(生き抜き方)を示してくれた。

守りたいもの、守るべきもの

 20代にはモデルとして海外で活躍したこともあり、語学や外国文化にも精通する大沢。そのため海外志向が強いと思われがちだが……。
「特にこだわりはありません。ただ海外では僕のことを知らない方がほとんどなので、例え1人でお茶をしていても、美術館で好きな絵の前に1日中座っていても、『大沢って変なの~』と言われる心配はない(笑)。海外に限らず、誰にも気兼ねせず自分の好きな時間を過ごせるホッとできる空間を大事にしたいんです」
 逆にさまざまな海外経験により、日本の良さに気づくことができたと続ける。
「日本人の優れた性質は、『勤勉性』『勤労精神』だと思います。けれどこの前、子供たちと話す機会があった時にそのことを伝えたら、みんなの頭上にハテナマークが。現代の子供たちは、日本人の精神を表す言葉を知らないようです。僕たちが昔から当たり前のように使ってきた言葉が今、その輝きを失いつつあることにショックを受けました。そういう日本らしい伝統的な精神は、世界に誇れる貴重な財産として次世代に繋いでいきたいものです」

「新人の大沢です」

 大沢のキャリアはのべ20年以上に渡る。これまで築き上げた独自の存在感を、彼は今後いかに磨き上げるのだろうか。次なる目標を尋ねると、彼の口から「新人のつもりでやりたい」という意外な言葉が飛び出した。
「年齢的なこともあるのかもしれないけれど、最近いつまでも過去の慣れ親しんだところに収まっていてはいけないと強く思います。もっと冒険し、チャレンジしていかなければいけない。そういう意味では、過去は過去のものとして一区切りつけ、新人のつもりで新たなステージへと身を乗り出す時が今来たのではないかなと感じています」

 今の自分を超えていく―― そう語る大沢の視線はすでにラインの先を捉えている。


(C)木内一裕/講談社 (C)2013映画「藁の楯」製作委員会

(C)木内一裕/講談社 (C)2013映画「藁の楯」製作委員会

『藁の楯 わらのたて』
原作:木内一裕『藁の楯』(講談社文庫刊) 監督:三池崇史 製作幹事:日本テレビ放送網、ワーナー・ブラザース映画 配給:ワーナー・ブラザース映画 4月26日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー www.waranotate.jp
www.kiyomaru-site.jp

Story
財界を牛耳る蜷川の孫娘殺害事件から3か月後、「この男を殺してください」―― 蜷川は容疑者 清丸のクビに10億円という多額の懸賞金をかける。日本中がその額に色めき立つ中、恐怖を感じた清丸は自首。警視庁警備部SP銘苅をはじめとする計5名の警察官が清丸の身を守り、移送することを命じられる。“すべてが敵”という極限の緊張状態が続く中、果たして彼らは任務を遂行することができるのか……。

インタビュー・文|松永理佐(編集部) 撮影|堂本正令 スタイリング|黒田領(ViVid) ヘア・メイク|松本あきお(POP-EYE)

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