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鹿賀丈史インタビュー「演技とは自由なもの」

鹿賀丈史インタビュー「演技とは自由なもの」

40年はあっという間だった

「『40年』という月日は、芝居を始めた頃は想像もしなかった時間です。まさか60歳を過ぎても俳優を続けているとは、若い頃には思いもしませんでした」
 鹿賀丈史が2013年に俳優人生40周年を迎える。
「振り返ってみると色々なことがありましたけど、あっという間に過ぎた40年でしたね。『レ・ミゼラブル』など足かけ20年以上も関わった作品もありましたから、余計に早く感じるのかもしれません」
 この世界に入ったきっかけは、友人に誘われて劇団四季を受験して受かったこと。はじめからから俳優として生きていこうとは考えていなかった。しかし、『ジーザス・クライスト=スーパースター』や『ウエスト・サイド物語』、『カッコーの巣をこえて』など数々の作品で主役に抜擢され、劇団四季の中で確固たる地位を築くまでに至った。
「役者として生きていこうと思ったのは26〜27歳の頃。それまでは『楽しみながら役者を続けていければいい』と思っていましたから。思えば、若い頃は特に、良い作品や役、人との出会いに恵まれました。そんな環境の中で『役者に目覚めた』のです」
 29歳で劇団四季を退団後、30歳で映画に初出演し、36歳の時には再び舞台の世界に戻った。劇団を飛び出した後、俳優として活躍の場が大幅に広がった。
「初の映画となった『野獣死すべし』、7年ぶりに舞台に立った『トーチソング・トリロジー』、その翌年から長く関わった『レ・ミゼラブル』。外の世界を見ることができた、学ぶことが多かったという意味で、劇団四季を辞めてから出演したこれらの作品は、自分の俳優人生で大きなターニングポイントになったと思います」

3年ぶりの『シラノ』
「初演より間違いなく面白い」

 これまで幾多の作品に出演してきた鹿賀の、40周年という新たな節目の年は『シラノ』とともに幕を開ける。原作はフランスのメジャー文芸作品『シラノ・ド・ベルジュラック』、人並み外れた大鼻をもつ剣豪の純愛を描いた作品だ。鹿賀にとっては2009年以来、2度目のシラノ役となる。
 3年前は世界初の上演だったこともあり「初演は台本やスコアが未完成だった」(演出・山田和也氏)。十分な準備ができなかった反省を生かし、万全の状態で公演に臨む。
「今回は丁寧に(作品を)作っていく時間があるので、少し粗かったり足りなかった部分を一つずつ修正していきたいと思います。初演より間違いなく面白い、レベルの高いものになりますよ。
 個人的には、3年前は少し硬かったように思います。シラノの“気持ちの揺れ”を出し切れなかった。今回は愛情と友情、そして自分の気持ちの狭間で思い悩む、シラノの柔らかく揺れ動くような気持ちを表現したいと思います」

悩みを抱えながらの演技も楽しみの一つ

 シラノといえば特徴的なのはその大きな鼻。主人公につきまとったこのコンプレックスは、鹿賀にも悩みを与えている。
「この大きな鼻をつけて歌うと、声の響きが変わってしまうんです。普段とは全然違う。これがこの役の非常に難しいところですね。稽古で慣れて、この扮装に合わせた発声法をまだまだ勉強しなければなりません。
 シラノにとってこの鼻は悩みの種でしたが、役を演じる僕にとっても、この鼻で歌を歌うことが一つの大きな悩み(笑)。でも、その悩みを抱えながら表現するのも楽しみの一つですよ」
 鹿賀が歌う楽曲を作るのは、今回もフランク・ワイルドホーン氏。『ジキル&ハイド』で主役を演じた鹿賀に惚れ込んで「『シラノ』をやらないか」と持ちかけた人物でもある。
「(ワイルドホーン氏は)甘く美しいメロディーを多く書かれる方ですね。『シラノ』にはそれほど長い曲はないんですけども、すべての曲が美しい。全体的に優しさを醸し出すような舞台になるでしょう。
 彼はいつもにこにこしていてね。それでいてあっという間に曲を作ってしまうんですよ。その辺りの柔軟性はすごい。それに難しい音階を使った曲があまりないものですから、僕にとってはやりやすい相手です」

役に入り込みすぎない
ゆとりを持って作品に臨む

 東京公演は1月6日から約3週間続く。鹿賀はそのうち約半分は1日2公演に出演、1公演で16曲を歌う。加えて、主役のシラノはほとんど舞台上に出ずっぱり。大きなプレッシャーと強い緊張にさらされ続ける。公演中のハードな毎日に押し潰されないために、鹿賀は役と適切な距離を保つことが重要だという。 
「公演中はシラノの世界に心地よく浸ることが非常に大事だと思っています。役に入り込みすぎると余計な力が入ってしまうことが多いのですが、それは僕があまり必要とする力ではありません。役と自分の距離感をある程度保って、その間を自由に動いて、軽やかに行き来できるくらいがちょうどいいんですね。
 これは舞台に限らず、テレビでも映画でも同じことが言えると思いますが、本来、演技というのは自由なものだと思うんです。何かにとらわれたり強制されたりするものではなくてね。『大事なのは自由に演じること』。このことを忘れずに、心にゆとりをもって作品に臨みたいと思います」


ミュージカル『シラノ』
脚本・作詞:レスリー・ブリカッス 作曲 :フランク・ワイルドホーン
演出:山田和也 翻訳:松岡和子 訳詞:竜 真知子
出演者:鹿賀丈史、濱田めぐみ(Wキャスト)、彩吹真央(Wキャスト、東京公演のみ)、田代万里生(Wキャスト)、平方元基(Wキャスト、東京公演のみ)ほか
【東京公演】
2013年1月6日(日)~29日(火)
会場:日生劇場
【大阪公演】
2013年2月8日(金)~10日(日)
会場:新歌舞伎座
www.tohostage.com/cyrano/

撮影:堂本正令、ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム)、スタイリスト:中川原寛(CaNN)

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