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吉高由里子インタビュー「心で演じた純愛 映画『僕等がいた』」

吉高由里子インタビュー「心で演じた純愛 映画『僕等がいた』」

言葉よりも心で動く方がまっとう

 物語の舞台は釧路。主人公2人が高校2年生になったばかりの春から始まる。クラスの3分の2の女子が思いを寄せる矢野元晴。最初は反発しながらも、どんどん矢野に惹かれる高橋七美。「恋したときのドキドキ感って、何にも代えられないと思うんですよ。本当に好きなものを食べていても、好きな場所へ行っても感じられるものではないです」と吉高が言うように、スクリーン全体から恋するオーラが出ている。七美役は今まで吉高が演じてきた役とは少し異なる印象を与える。本人曰く「ゆっくりした低い声」の地声ではなく「七美はどんな女の子なのかと考えたとき、ほわっとしてやわらかい声の持ち主だろうと思ったので、普段より高い声で演じています」
 出演が決まってから原作を読んだという吉高は「私は少女マンガをあまり読んでこなかったので、はじめは『私が演じていいのかな』と思いました。少女マンガを読んできた人の方がキュンとするポイントが分かって、見ている人の共感を得られるんではないかと。演じる上で葛藤が多いだろうなと思いました」と言う。役作りに入る前から感じていた今回の役の難しさを、撮影に入ってから実感した。
「自分の不甲斐なさにイライラして監督に結構かみつきました。なぜその演出になるのか分からない。でも自分がなぜ分からないかの理由は分かっているんです。それを認めずに『何でこういうふう(演出)になるんですか』と監督に突っかかってしまって。自分でも子どもだと思います。そんな私に監督はすごく穏やかな顔をして対応してくれる。たまったフラストレーションがすっと消える場合もありましたけど、逆に悔しくなってしまったりもしました。監督は執念深いというか(笑)、忍耐強い方で、本当に妥協しないんです。私がきちんと理解するまで粘って何度も撮ってくれました。ありがたいことですね」
 キラキラとまぶしいほどの恋をする2人に矢野の転校という別れが訪れる。矢野の気持ちを理解し、泣きながらも送り出す七美。その後、矢野には理不尽な運命が降りかかり、互いの気持ちを確かめることなく6年という歳月が過ぎ去る。それでも矢野を思い続ける七美の姿を見て観客の頭に浮かぶのは「まぶしかった恋であっても、なぜそこまで気持ちが揺るがないのか」という疑問だ。吉高はこう分析する。「七美は言葉で動くのではなくて、心で動く人だと思います。だから7年間自分の気持ちを信じ続けられたと思う。矢野に対する愛情は七美自身が一番よく分かっていて、矢野の気持ちも、たとえ確かめられなくても七美は分かっていたと思います。矢野には自分が必要で、自分でないと矢野はどうにかなってしまう、自分がなんとかしてあげなきゃっていう自信もあったかな。言葉がなくても好きな人同士は一緒にいるだろうし、逆に言葉があるから不安になったりもする。おじいさん、おばあさん世代の方とか、言葉はなくとも自然な流れで一緒になって、互いの思いにも確信を持っていた。言葉よりも心で動く方がまっとうなのかなって思いますね」

別れも時には最適な選択

 前篇の高校生時代、矢野と七美は、お互い「好き」という感情のみで行動していた。しかし後篇では周囲とのしがらみから、自分の気持ちに正直になることが最適な選択ではないと、二度と交わることのない道を歩もうとする。「登場人物が前篇後篇とも同じなんですよ(笑)。それでも好きな気持ちだけで突っ走れないのは、環境の変化ですよね。何かに対するブレーキというものは環境がつくるものだと思います」
 揺るがず一途な思いについて、自身の恋愛観に照らしてみると「私は7年間も一人を愛したことはありません。七美の状況は男という生き物を矢野しか知らないっていう状況ですよ(笑)。私は報われなくてもいいと思っていても、その状況が当たり前になった瞬間に好きになるのをやめてしまう。見返りを期待しているわけではないですけど。」終わった恋を引きずらないというより「しょうがない」と言う吉高、別れた後も相手のことを忘れるわけではない。「別れた人が幸せになってくれたら、『別れる』という選択も正解だったのかなと思います。私では彼を幸せにできなかったかもしれないですから」
 劇中で「記憶が思い出になる瞬間」という言葉が印象的に使われている。「記憶が心に残った瞬間、その記憶は思い出になる。でも、頭に残った瞬間、それはトラウマになる。そう整理しています。記憶が思い出になるって素敵なことですよね。」吉高の中で心に残る記憶とは、良いことも悪いことも含めて「素敵なこと」なのかもしれない。
 
 演じる上での葛藤を越え、心に残る演技を見せた吉高由里子。観終わった後、人を愛することについて考えずにはいられない作品だ。


『僕等がいた』『僕等がいた』
【出演】生田斗真、吉高由里子、高岡蒼佑、本仮屋ユイカ、小松彩夏、柄本佑、比嘉愛未、須藤理彩、麻生祐未
【監督】三木孝浩
【脚本】吉田智子
【原作】小畑友紀(小学館「月刊ベツコミ」連載)
【前篇】公開中 【後篇】4月21日(土)公開 全国にて2部作連続ロードショー
【配給】東宝/アスミック・エース
【公式HP】bokura-movie.com
【ストーリー】北海道・釧路。高2の新学期、七美は矢野元晴と学校の屋上で出会う。人気者だが時折寂しげな表情を浮かべる矢野に七美は惹かれる。互いに思いをぶつけ傷つきながらも未来を誓い合う2人。しかし、矢野は東京へ転校していく。6年後、東京。大学を卒業し出版社に勤める七美のそばには七美を支え続けた竹内(高岡)の姿が。しかし、七美の同僚で矢野の同級生だった千見寺(比嘉)が矢野を目撃。6年の間に矢野に何が起こったのか。矢野と竹内の間で揺れる七美が下した決断とは。
©2012「僕等がいた」製作委員会 ©2002小畑友紀/小学館

文|川口奈津子(編集部) 撮影|川田洋司 ヘア・メイク|横山雷志郎 スタイリング|有本祐輔 衣装協力|ナナミカ

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