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すがすがしいばかばかしさ 生きる原動力を得て前を向く

すがすがしいばかばかしさ 生きる原動力を得て前を向く

地球ゴージャス プロデュース公演 Vol.12 『海盗セブン』

――2年ぶりの公演ですね

 地球ゴージャスの公演は、まず「どんな芝居にしたいか」から始まります。劇団の人数に合わせて脚本を書くのではなく、こういう芝居がしたいから、こんな人が必要で、何人必要で、こんな劇場でという手順なので、時間がかかるんですね。地球ゴージャスが(岸谷)五朗と僕の二人だけという理由も、自由な発想でフットワークを軽くして芝居を作りたいという思いです。また1回の公演に相当エネルギーを使うので、次の作品の準備に入る前に、五朗と僕が別々の仕事をしてエネルギーを蓄える必要があります。なかなか年に1回のペースで公演はできませんね。

――今回は大掛かりな芝居のようですが

 第11回公演はキャストが6人だけだったんですが、全公演が終わって次回作について五朗と話していて、「地球ゴージャスの王道ともいえる、大人数のアクションあり、歌あり、ダンスあり、ギャグありという大掛かりなものをやりたい」となったんです。そこから何となく「個性的な人が7人並んでいたらカッコいいよね」と、7人の登場人物のイメージが出てきました。『荒野の七人』、『七人の侍』、『ワイルド7』、あまり知られていないけど『ザ・ゴリラ7』とかね(笑)。とにかく「セブンってカッコいい」と。あとは7人のキャラクター配分を、強い女性、渋いおじさん、若者などと決めていき、「今、一緒に演じたい人は誰だろう」とキャスト候補を考えました。エンターテインメント色の強い芝居になるので、メーンの女性は大地(真央)さんしかいないだろうと、ダメ元でオファーしました。快諾していただけてよかったです。キャストに関しては毎回希望がかなっていますね。

――個性的な役者をまとめるには苦労もあるのでは

 僕らは直感で芝居に真摯に取り組める人を見極められるようです。今回のような大人数の舞台になると、世間的に無名な役者やダンサーが多く出演します。名前もキャリアもある役者であっても、その無名の役者の中に尊敬できる人がいることに気づき、少しでも近づこうと自分を磨いていく。地球ゴージャスの稽古場は「自分もがんばらねば」と思わせる空気があります。努力して、自分の120%を出さないとお客さんには感動してもらえないという考えは、稽古場にいる人全員に浸透していると思います。芝居に真剣で、向上心もある方々なので、目指しているものを伝えられれば、自ずとまとまっていきます。

――演出家はまとめ役でもありますが、役者・寺脇康文から見て演出家・岸谷五朗はどんな演出家ですか

 例えて言うなら「頼れる学級委員」ですね。学園祭でお化け屋敷をやるとします。まずは皆がやる気を出すように引っ張っていく、そこから「お前はこれをやれ」ではなく、「何がやりたい」とそれぞれ聞いて、「一本足傘」と言うと、「じゃあ、どういう風にしようか」とその方法も一緒に考える。自分のビジョンは持ちながらも、役者の意見を取り入れたり、その人の魅力を一緒に引き出したりしていく。そんな演出家です。ここ数作、五朗が脚本も書いていますが、毎回「俺(岸谷)が知らない寺脇康文を書いているんだ」と言って、僕の今までにない部分を引き出してくれていますね。

――役者との対話の中で作品ができていくようですね。その中で地球ゴージャスらしさも役者の方々に浸透していくのでしょうか

 言葉にすることは難しいんですが、僕らが目指しているのは「誰も嫌な気にさせない芝居」なんですよ。どんなに面白いギャグでも誰かを嫌な気分にさせるものは、地球ゴージャスでは採用しません。僕らが考える気持ち良さというのがありますから、それは演者にも伝えるようにしています。お客さんだけでなく、演者も含めて誰もが気持ち良くないといけない。お客さんに観ていただくことを第一に考えながらも、自分たちが楽しんでいないと、お客さんにも楽しんでもらえません。お互いに気持ちを共有するという感じですね。

――今回共有するものというと

「すがすがしいばかばかしさ」ですね。芝居というのはその時々の作家・演者それぞれ自分の生き様を出すものです。五朗の中では、昨年の震災があっての今回の作品なんですよ。震災があって、現実は辛い。被災地の方々は特にですが、放射能の問題などもあって、日本中が気持ち的に辛い。そんな時にリアルな芝居を作っても仕方がないんです。僕らが努力して、たくさん稽古を積んで作り上げたレベルの高いばかばかしいもの、そこまで突き詰めたらすがすがしいよっていうくらいばかばかしいものを観てもらって、大笑いして、僕らのエネルギーを感じ取って元気になってもらいたい。現実逃避するのではなく、現実を踏まえた上で、少しでも生きる原動力になればいいなと思います。
 地球ゴージャスを旗揚げした1995年は、阪神・淡路大震災があった年です。その時も「俳優という仕事は一番必要ない仕事ではないか」と落ち込みました。しかし、苦しんでいる人たちに少しの余裕ができた時、物質的ではなく、精神的な支援ができる仕事ではないかと思い直しました。傷ついた人たちに心の栄養を与えることが、僕たちの役目なのではないかと。舞台に立って、喝采や拍手を頂きますが、「役目を果たさせていただいている」という気持ちが強いです。役目を全うするために、力いっぱい自分の極限に挑む。僕は仮設住宅を建てたりすることはできません。僕ができるのは、人が元気になる芝居を作ることなんです。

――50代になって初の舞台でもありますが、何か変化はありますか

 気持ちの変化は特にないですね。より体を大事にして、日々のケアをきちんとしないといけないと思います。若い肉体の魅力はありますが、年々さまざまなことを吸収していて、去年より今年、10年前より今の自分のほうがいいんですよ。「あの時は良かった」とか「あのころに戻りたい」というのがありません。今が人生最高の時なので。年を取ることって割と好きなんです。五朗は「寺脇康文生誕50周年記念作品」と言っていますが、誰もそんなこと言ってくれないでしょうね(笑)。

――最後に少しだけ今回の作品の見所をお願いします

 歌も踊りもアクションもふんだんに盛り込まれていますし、ギャグも全編に入っています。派手で明るい反面、7人の絆や、力を合わせてがんばること、一人ひとりの成長物語などジーンとくる場面もあります。喜怒哀楽がシンプルに詰まっているという感じですね。

自身の存在価値を「元気を与える芝居を作ること」といい、「今が人生最高の時」と言い切る寺脇康文。彼が作り出す舞台からは吸収してあり余るエネルギーが発せられているに違いない。さあ、元気をもらいに劇場へ行こう。


寺脇康文 (てらわき やすふみ)
1962年2月25日生まれ。テレビ朝日『相棒』シリーズなど数多くのテレビドラマに出演。映画『相棒-劇場版-』にて第32回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。2012年2月NHK『大地のファンファーレ』に出演

ダイワハウスSpecial
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.12
『海盗セブン』
【作・演出】岸谷五朗
【出演】大地真央・三浦春馬・森公美子・施鐘泰(JONTE)・小野武彦・岸谷五朗・寺脇康文 他
【Story】かつて7つの海を盗み出した7人の大怪盗たち、その名を「海盗セブン」。彼らに盗めぬ物はなく、彼らに触れた者はいない。誰も居場所を知らないはずの彼らに届いた1通の招待状。差出人はフィクサー・ジョー。謎の男に集められた7人への依頼とは。
3月8日~
東京、名古屋、新潟、福岡、大阪にて公演
公演日程・チケットなど詳細は公式HPで
www.chikyu-gorgeous.jp/vol_12/

文|川口奈津子(編集部) 撮影|川田洋司 ヘア・メイク|西島容子 スタイリング|山本祐行

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