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旅行は自分でカスタマイズする時代 ネットが変える旅スタイル~エクスペディア  ホールディングス株式会社 代表取締役 兼ゼネラルマネージャー 三島 健 氏~

旅行は自分でカスタマイズする時代 ネットが変える旅スタイル~エクスペディア ホールディングス株式会社 代表取締役 兼ゼネラルマネージャー 三島 健 氏~

日本市場でのみ登場する「エクスベア」と三島氏。国と地域に合わせたマーケティングを徹底している

ローカライズではなくカスタマイズ
グローバル企業に求められるもの

 エクスペディアの特徴の一つとして「ダイナミックツアー」という商品がある。航空券とホテル、希望すれば空港への送迎など、「好きな航空会社で」「好きなフライト時間で」「好きなランクのホテルで」「好きな部屋タイプで」旅行をつくることができ、その組み合わせは1億通り以上になる柔軟性の高いサービスだ。しかし、他国では数年前から実施しているこのサービスを、日本で開始するまでに4年の歳月を費やしている。
「あるものをそのまま提供するのではなく、その国に合ったパッケージをつくれるようなラインナップが必要です。ダイナミックツアーを利用する方は、パッケージツアーを経験済みの方々が多いです。パッケージツアーには添乗員もおり不安なこともありません。しかし数回パッケージツアーに参加すると、添乗員にそれほど頼らずとも楽しめることに気付くのです。特に女性がダイナミックツアーの市場を引っ張っている感じがします」。
 世界中でサイトを運営するグローバル企業として、各ユーザーの期待に応えるためには、エリアに適した戦略とサービスが不可欠だと認識している。その一環として、24時間日本語対応のコールセンターを3月に開設した。
「日本の方は真面目で、勤務時間内に旅行の手配はされないようです。コールセンターへの問い合わせは夜8時くらいから増え、ピークは夜10時~11時。これがオーストラリアなど他国になると、夕方6時以降はピタッと電話が鳴りやみます。これは一例ですが、国が違えば習慣や考え方は異なります。利便性を高める意味でも、それぞれにサービス、サポートを考える必要があります。保障内容など、本社であるアメリカの方針を引き継いでいる部分もありますが、目に見えるサポート、見えないサポートともに、それぞれの国に合わせたサービスを用意しております。例えばエアアジアのサイトは、チケット予約を目的とするため、ローカライズ対応のみとなっています。しかしエクスペディアのサイトはカスタマイズが必要なのです。ブランドを周知させる活動の一環としても、今後もさまざまなサイトを開発していく予定ですし、開発への投資は外せないものだと思っております」。

 ローカライズではなく、カスタマイズ。つまり、見た目は単に英語版、日本語版の違いだけに見えても、実際には、ユーザーがどう感じ、どのような行動にでるのか、何が求められているのかを見越して、種々のシステムが構築され、コンテンツが配置されている。これは受け入れる側、発信する側ともに見過ごしてはならないポイントだろう。各エリアにコミットする精神は実にさまざまな面で発揮されている。
「エクスぺディアでは13万以上のホテルを取り扱っています。それだけの数を扱えるのはそれだけ売ることができるからです。また仕入が非常に強いということでもあります。仕入担当者は、ホテルと一緒になってそのホテルのPRまでも考えるスタンスで取引をしています。日本でのマーケットデータを元に、世界各国の仕入担当と緻密な連絡と微調整を繰り返し、ローカルでできることを最大限に行うことが求められます。特にアジアは世界で話されている言語のほぼ半分を有し、数千の言語が話されている地域ですから、エリアへのコミットメントはより必要でしょう。特にここ1~2年で日本独自という傾向は強くなってきていると思います。例えば、CMや広告物に使用しているクマのキャラクター『エクスベア』は、アメリカのスタッフから見れば、理解不能なのです。しかし、日本ではアメリカの現実的なCMは受け入れられません。そこを押し切るのには苦労しました」。

レビューで得る安心感
オンラインサイトの進むべき道

 大手旅行会社が主催する旅行には、航空券とホテルのみのフリーパッケージと呼ばれる商品も数多い。しかし、航空会社やフライト時間に選択肢がなく、ホテルもクラス指定のみでホテル自体は指定できないなど、“パッケージ”という枠は出ない。旅先でも日本語で相談でき、早朝出発も深夜出発も選べ、日本を理解したスタッフがこまごまとしたことも調整したホテルが利用できるとなれば、“インターネット”というハードルは低くなるのではないだろうか。特にLCCでは片道ずつの販売が常だ。往復以外は割高になってしまう大手航空会社とは違い、往復の空港が違っても問題ない。LCCを乗り継いで、または鉄道を利用して国内、近隣国を巡る旅行も計画しやすい。旅行だけでなく、各国に拠点を持ち、一度の出張で効率よく業務を終わらせたい企業にとっても、LCCと選べるホテルの利便性は高い。現在、特に周遊チケットの取り扱いはないが、近い将来開発される商品の一つだろう。しかし逆に気になるのは選択肢の多さ。1人で決められず、他人のリコメンドが必要な現代人にとって、1億という数は適正なのか。「ある程度の設定、例えば日程や予算を限定していただくことでお薦めのものが出てくるようになっています。1億以上ある選択肢で旅行をビルドアップするというよりは、選択肢から都合のいいものをピックアップするというイメージですね」。
 また同社が過去に買収し、近く売却するサイト「トリップアドバイザー」といったレビューサイトが果たす役割も大きい。「今後は単なる手配サイトではなく、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の要素を持ったサイトになっていく必要があるでしょう」。
 日本人は「悪いこと」を発信することを躊躇するきらいがあるため、レビュー機能の真偽が測れないという問題はある。しかし、無のところから自らで選択するよりは、経験者の声を聞けるという安心感がある。
 利便性、特にビジネスパーソンの利便性を上げるものとしては、モバイルでの利用がある。この点においては、本家のアメリカを待っていては遅れてしまうと三島氏は言う。
「NTTドコモの機種に対応したサイトはすでにあります。これから他のキャリアに対応したものも出ていく予定です。スマートフォンに関しては、キャリアやメーカーと協力して、アメリカより早く対応していくことが求められています」。

旅の計画が楽しくなる

 店舗を持つ既存旅行会社よりも価格的優位に立てるオンライン旅行会社と、格安運賃を実現したLCCが手を組んだことによる日本の旅行業界への影響は大きい。今後同じようなスキームの提携・合弁が生まれ、利用者の選択肢が増していくので、旅の計画は面白くなりそうだ。日本人の旅行スタイルがより自由に変わる大きなきっかけとなるかもしれない。


文:羽田祥子、川口奈津子(編集部)

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