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【今、伝えたいビジネスのヒント】「多様性」の時代、 経営のあり方は大きく変わる

【今、伝えたいビジネスのヒント】「多様性」の時代、 経営のあり方は大きく変わる

起業、創業をテーマにしたセミナーや講座はあまたあるが、いざ会社を立ち上げようとするときに
本当に役立つノウハウを学べる場は意外なほど少ないという。
そうしたなかで、多摩地域を拠点に起業家や経営者の支援に取り組む税理士、
金成祐行氏の「志創業塾」は、起業にこれから取り組もうという人の実践的な道しるべになると好評だ。
現役税理士ならではのスタンスで起業家育成に力を注ぐ金成氏に話を聞いた。

会計数字で経営の「基礎体力」をつける

──金成さんの本業は税理士ですが、起業家の育成にはどのように取り組んでいらっしゃるのですか?
金成 現在、多摩市の創業支援施設・ビジネススクエア多摩の「志創業塾」塾長として年2回行われるセミナーに携わっているほか、自分の事務所でも顧問先を対象に経営者塾を開催しています。また、来年からは東京・八重洲のインキュベーション施設・ウィズスクエアで、「女性のための起業塾」の講師も務める予定です。
──金成さんの「創業塾」の特徴とは?
金成 ポイントは二つあります。一つは「会計数字」に着目すること。もう一つは会社を立ち上げようとする自分自身の「志」をきちんと自覚する、ということです。
 今まで経営に関する本を数多く読んだり、セミナーに参加したりしてきましたが、この二点は常になおざりにされていると感じていました。しかし私は、会社経営の成否を決するのは、まさにこの二つだと考えています。
──今回出版された著書(『夢をかなえる志経営塾』プレジデント社刊)でも、そのあたりに紙幅を割かれていますね。
金成 本を出版する以上は、起業家や経営者にとって本当に役立つ指南書にしたいと思ったからです。結果として、類書にないユニークな内容に仕上がったと思っています。
P1000439s さて、一つ目のポイントについてですが、経営者が会社の経営状態をきちんと把握するには会計数字が不可欠だということです。経営戦略を導く方法としてPDCA(計画-実行-評価-改善)サイクルは広く知られていますが、これを回す際にぜひとも必要になるのが月次の決算数字です。
 たとえば、ある月の粗利益率が0.1%改善されたとします。しかし、わずかな変化ですから、会計数字を把握していないとそれに気づくことは難しいでしょう。
 数字の変化を捉えることができれば、「仕入れ先を変えたためだろうか」「それとも、キャンペーンが効いたのか」などとその理由を探ることで、さらなる成長に向けて的確な経営判断を下すことができます。
 逆に経営状態が思わしくないときには、会計数字からその原因をたどることができますから、いち早く手を打てるのです。
──会計に関しては、税理士事務所などに丸投げする経営者が多いのでは?
金成 「会計なんてアウトソーシングすればいい」という発想では、経営の実態がつかめず、いずれ会社は立ち行かなくなります。経営者として成長できる機会を放棄することにもなると心得るべきです。
 会計数字をわがものにする──すなわち数字を“体感”できるようにすることは、会社を経営していく上での「基礎体力」をつけることにほかなりません。
 数字を体感できずに経営に携わることは、実際にプレーしたことがないスポーツをテレビで観戦するのに似ています。観客の視点であれこれ批評できても、実際に試合を切り盛りすることはできないのです。
 ですから、私の起業塾では、参加者に最低でも簿記3級の資格を取るようアドバイスしています。

テクニックに走るな、自分を見つめろ

──もう一つのポイントである「志」とは?
金成 事業とは、とりもなおさず自分自身の「夢」を実現することです。そして、その「夢」が社会に向けて形を成そうとするとき「志」になります。
 会社を立ち上げるなら、そもそもなぜ自分が起業したいのかという、「志」の根底にある思いを確認することからはじめてほしいと思います。自分の人生を振り返り、自分が抱いてきた望みや願い、価値観、能力などを“棚卸”してみることが、何より必要なのです。
 なぜなら、ゼロから会社を興そうとするとき、一番頼りになる経営資源は自分自身だからです。自分が今までどんな「夢」を抱いてきたか、これからどんなふうに生きたいか、社会にどう関わりたいかが見えてきて、そこで初めて自分にしかなしえない事業の輪郭がつかめるはずです。
──「志」というと、「心がまえ」とか「気合い」などといった精神論的なものを想像しがちですが、そうではなく起業する上で不可欠な条件ということですね。
金成 「起業とは何よりも自分の思いを形にすること」という根本のところを見誤らないでいただきたいと思います。
P1000464s 起業を志す人に言いたいのは、テクニックに走るな、ということです。まずは自分自身を見つめ、自分ならではの個性を自覚し、自分の思いを自らの言葉で語ってもらいたいのです。
 政治家などもそうですが、大企業の経営者でも自分の言葉で話せる人は少ないのではないでしょうか。自分の内側から生じてくる思いではなく、人から借りてきたような言葉で会社のことを話そうとします。実際には何も語っていないに等しいと思えてなりません。
 時代は間違いなく「多様性」を重んじる方向に向かっていると私は考えます。さまざまな個性を持つ人たちが、それぞれ自分の可能性を開花することができる世の中に近づきつつあるのです。
 起業においても、自分の個性、自分らしさに気づいている人が成功しています。自分の内なる声に耳を傾け、素直にそれを表現することが、差別化の源泉になると考えます。

経営者は自分に自信がないくらいがいい

──確かに、これからの企業経営には多様性=ダイバーシティが不可欠だと、最近あちこちで耳にするようになりました。
金成 しかし、現実に企業の中に多様性を取り込むのは難しいようです。特に、偏差値の高い、頭のいい人ほど固定観念にとらわれて自分の個性に目が向かず、自分を解放できずにいるのではないかと思われます。
 このことはマネジメントについても言えます。企業にとっても最も重要な経営資源は「人」にほかなりません。従業員一人ひとりが個性を思う存分発揮することで、会社は飛躍的に成長することができるのです。経営者はそこに気づかないと、発展の機会を逸することになります。
 今までだったらすぐに切り捨てられるような落ちこぼれ社員でも、秘められた個性や可能性を見極めて辛抱強く待つことで、余人に代えがたい戦力に成長することもあります。
 これからの時代、経営者は自分に自信がないくらいの方がいいのです。
 優秀な経営者ほど自信過剰になりがちですが、どんなに才能があっても個人のキャパシティには限界があり、強権的なマネジメントですべて自分の思いどおりに会社を切り盛りしようとしても、限界を突破することは難しいはずです。そのことに気づけるかどうかで、会社の行く末は大きく変わってきます。
 実は、かつて私自身も従業員は上から押さえつければうまく操縦できると考えるタイプの経営者でした。虚勢を張って、高圧的なマネジメントを行っていたのです。しかし、あるとき部下たちの反目に遭い、自分の至らなさに初めて気づきました。
 このことは自分を変えるきっかけとなり、以後、事務所のスタッフたちと信頼関係を築くことに努めるようになりました。すると、彼らの個性や能力を尊重するようになったことで、低迷していた事務所の業績も回復したのです。
 大切なことに気づかせてくれた当時のスタッフたちに、私は今でも感謝しています。


Profile

金成祐行(かなり ゆうこう)

かなり税務会計事務所所長。税理士。1966(昭和41)年、福島県生まれ。早稲田大学商学部卒業。多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、MBA取得。石油会社、公認会計士事務所勤務を経て、税理士登録。1994(平成6)年、かなり税務会計事務所を設立。税務会計業務全般をカバーしながら、創業支援・法人設立支援や企業防衛・営業戦略の提案も行う。

そうていあんポーズ2『夢をかなえる志経営塾』(金成祐行著、プレジデント社刊)

経営の基本を知り、会計数字を使って経営を”体感”するコツをつかめば、天才ではない「ふつうの人」でも大きな失敗をせずに会社を成長に導くことができる。悩める経営者のアドバイザーとして、多くの中小企業の再生に力を振るってきた金成祐行氏が、成功を勝ち取るための起業のイロハと経営建て直しの極意を伝授する経営の教科書。

文|千﨑研司(コギトスム)

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