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THE SPIRIT OF THE JAPANESE

カカオティエ・小山進に刻まれたクリエイトの原点

THE SPIRIT OF THE JAPANESE

まだ、そこにたどり着いていない

 最近話題になっているビーン・トゥ・バー。カカオ豆の原産地や、醗酵、焙煎にこだわったタブレット作りが業界のトレンドとなり世界的な広がりを見せている。この風潮に対して小山氏は問う。
「単なるポーズやファッションではなく、世界中のまだ見ぬ素晴らしいカカオとの出合いや感動を、広く伝えることがビーン・トゥ・バーの本質だと思いますね。カカオ豆の選別、醗酵、焙煎はそれぞれにかなり専門的知識と経験を必要とします。私の知るクーベルチュリエたちの実力は相当なもの。彼らの培ってきたものに触れるにつけ、生半可な気持ちで取り組んではならないと思うばかりです。ショコラティエの中には、ボンボンショコラとタブレットの両方を作る方がいますが、私はカカオ豆からタブレットを作ることは今はまだできません」
 カカオに携わるスペシャリストを知るがゆえに、簡単に取り組むことはできない。もっと勉強と経験を重ねなければ、到底たどり着けない領域だと言う。小山氏は、ボンボンショコラをキャンパスに、クーベルチュールと、組み合わせる素材の力によってカカオ豆に秘められたメッセージを伝えることを選んだ。今はまだ——。

世界各地で出合ったクーベルチュールの味覚に感動すると、ルーツであるカカオ産地を見たくなると言う小山氏。現地では生のカカオ豆を噛み砕いてテイスティングを行っている。フルーツであるカカオを日本に持ち込むのは不可能。本来のカカオ豆を知るために産地に足を運ぶ。エスコヤマにあるクーベルチュールは90種類。そのうち25種類は個人輸入しているもので、中には小山自身がカカオ産地で出合った豆をクーベルチュールに仕立ててもらっているものもある

世界各地で出合ったクーベルチュールの味覚に感動すると、ルーツであるカカオ産地を見たくなると言う小山氏。現地では生のカカオ豆を噛み砕いてテイスティングを行っている。フルーツであるカカオを日本に持ち込むのは不可能。本来のカカオ豆を知るために産地に足を運ぶ。エスコヤマにあるクーベルチュールは90種類。そのうち25種類は個人輸入しているもので、中には小山自身がカカオ産地で出合った豆をクーベルチュールに仕立ててもらっているものもある

カカオから、本当に伝えたいこと

 産地に出向くのは、カカオ豆を新たに求めるためだけでなく、カカオ豆をより深く知るため。現地の生活や文化、人間性を肌で感じることで作品作りに対する気構えが変わり、表現力の深みが増すからだ。
「2度目となったコロンビアの訪問で、祈祷師の方からお話を聞くことができました。マヤ文明の頃、アステカ帝国で貴重な飲料にも、硬貨の代わりにもなっていたカカオ豆はアステカを征服したスペインによってヨーロッパに持ち帰られ広まります。この時のスペインによる侵略でカカオと共に生活していたインディオたちは奥地に追いやられ、すべてを失ったといいます。時を経て、ようやく、インディオの方々は再びカカオを育てることができるようになってきました。今回のC.C.C.の出品作には、コロンビア・アルアコ族の皆さんが初めて栽培から収穫まで自分たちの手で作られた原料を使わせていただいています。現在のショコラ文化誕生の裏に、南米の方々の大変な歴史があることはあまり知られてないでしょうね。チョコレートにまつわる真実を伝えることが私の使命の一つだと確信しました」
 コロンビアのカカオ豆で作ったショコラが、ヨーロッパで高く評価されることが恩返し。そんな風にも考えていた。
「これからも、生産者の方々が育てた素晴らしいカカオが産地から世界に飛び立つ手伝いをしていきたい」
 小さな一粒のショコラの中で、生産者の想いとカカオティエの感性がつながる。

日本精神は世界でも最高レベル

 一般的にはヨーロッパこそがショコラの本場とされるが小山氏にはまた違って映っていた。
「世界からは、いまだに和素材を用いた和風テイストのショコラを期待されているのが分かります。和食文化にそれだけ魅力があることは嬉しいですが、もっと自然に、日常の中で私が出合ったもの、面白いと思ったことを自由に作品にする。その感性を大切にしていきたいです。その国特有の素材を使っているからその国らしいものづくりだというのではなく、個人のユニークさに注目し、評価されるようになれば、と思っています」
 いつか、日本人が外国での評価ではなく、自分たちの価値観で世界中のショコラを楽しめるようになる日が来ることを待ち望んでいる。
「世界に足を運んでいると、日本は文化レベルが高いことを認識できます。日本人の精神性は世界でも最高レベル。誇りをもってほしい」
 コンクールは、繊細な美意識、味覚、ものづくりに対する実直な姿勢を世界に伝える一つの場とも捉えている。
 日本のチョコレートはヨーロッパのチョコレートを超えているのかもしれない。世界を舞台にする小山氏から感じる。

洞窟を思わせるショコラトリーROZILLA(ロジラ)の1階は、日常とは異なる秘密空間のようで、隠された宝物を探しに来たような気持ちになる。エスコヤマの敷地内に設置された、Mr.Childrenのアートディレクションなども手掛ける丹下紘希氏による「エスコヤマ秘密基地マップ」も目を引く。火口にジャムの湧き立つ火山やバウムクーヘンの巨木に虫たちが寄ってくる……。エスコヤマの世界観とリンクしたファンタジーワールドに思わず心が踊りだす

洞窟を思わせるショコラトリーROZILLA(ロジラ)の1階は、日常とは異なる秘密空間のようで、隠された宝物を探しに来たような気持ちになる。エスコヤマの敷地内に設置された、Mr.Childrenのアートディレクションなども手掛ける丹下紘希氏による「エスコヤマ秘密基地マップ」も目を引く。火口にジャムの湧き立つ火山やバウムクーヘンの巨木に虫たちが寄ってくる……。エスコヤマの世界観とリンクしたファンタジーワールドに思わず心が踊りだす


メイン画像解説

カカオはフルーツ。実の外側は硬い皮で覆われておりカカオポッドと呼ばれている。カカオ豆と呼ばれるチョコレートの原料は、ラグビーボールのようなカカオポッドの中にある白い繊維質の果肉に覆われた種のこと。そのまま口にしてもマンゴスチンやライチに似た甘みがおいしい。このカカオ豆を醗酵、乾燥させてから焙煎し、粉砕してペースト状にしたものがカカオマスとなる。土壌の特徴、カカオの品種、栽培環境、醗酵過程、乾燥に用いる手段、焙炒などさまざまなファクターによってチョコレートの味は変わってくる

PATISSIER eS KOYAMA(パティシエ エス コヤマ)

兵庫県三田市ゆりのき台5-32-1
TEL 079-564-3192
www.es-koyama.com

文|竹井雅美(編集部) 写真|バンリ 写真提供|パティシエ エス コヤマ

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