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【今、伝えたいビジネスのヒント】女性が輝ける新たなステージへ

【今、伝えたいビジネスのヒント】女性が輝ける新たなステージへ

今でこそ女性の起業家、経営者は珍しくなくなったが、明治生まれの経済人も多かった半世紀前は、女性が会社を興すことは並大抵ではなかった。そんな時代にゴルフ会員権という新しい分野で起業し、最盛期には300億円以上の売り上げを誇るまでに成長させた桜ゴルフの佐川八重子社長は、女性経営者にとって立志伝中の人物とも言える存在だ。
女性起業家の支援にも熱心な佐川氏に、会社を軌道に乗せるまでの道のりやこれから目指していくこと、起業を目指す若い世代へのアドバイスなどを聞いた。

パーティーで味わった苦い思い

──佐川さんは女性の起業家がまだ珍しかった時代に、ゴルフ会員権売買という新しい事業で会社を興されました。
佐川 昭和45年(1970)に会社を立ち上げましたが、当時私は26歳でした。高度経済成長の波に乗ることができ、おかげさまで創業3年で32億円、今の価値でいうと100億円以上の規模の売り上げを上げることができました。
──女性経営者のはしりとして、ご苦労も多かったのでは?
佐川 当時、ゴルフ会員権を扱う仕事はまだ社会的な認知を得ておらず、胡散臭くみられることもありました。また、年上の従業員を使わなければならない苦労もあり、一時期は精神的に相当追い詰められ、日々針のむしろに座らされるような思いを味わっていました。
 そんな傷だらけの自分を慰めようと、会社設立の翌年から10年ほどは帝国ホテルを住まいとしていました。昼間の苦しい仕事を終えてホテルでシャワーを浴び、夜はパリコレに身を包んでパーティーなど晴れやかな場に出かけ、傷ついた自分を手当てしていたのです。
──パーティーというのは企業経営者が集まる交流会などですね。
佐川 そうです。当時、女性経営者は非常に珍しい存在で、パーティーでお会いするのはファッションデザイナーの森英恵さん、高島屋で初めて女性重役となった石原一子さん、東京ソワールを創業した児島絹子さんのお三方ぐらいでした。
 ただ、先輩方はいずれもご主人がいらっしゃる身で、独身の、しかも20代の私は肩身が狭かった。それにパーティーの席では華やかにと心がけていましたので、「スポンサーが陰にいるのではないか」などと陰口も叩かれました。
 そんな苦い経験から、自分が経営者として一人前になったら、若くても実力で生きている女性経営者たちに、必ず手を差し伸べようと思っていました。
──当時モットーにしていたことは?
佐川 男性中心の社会では、人の3倍の仕事をして、一歩退く謙虚さも必要でした。女性というハンデがあったからこそ、頑張ることができたのかもしれません。ですから、モットーは「ビジネスは大胆かつたくましく。一人の女としては美しく華麗に生きていきたい」。夜まで鬼のような顔を引きずっていたくなかったのです。

ゴルフ場事業に進出、そして挫折も

──創業から順調に事業を拡大してこられましたが、壁にぶつかる経験もありましたか。
佐川 会社設立10周年の集大成として、昭和55年(1980)にゴルフ場事業に進出しました。ところが、共同経営者の背信行為により、1年半で経営から手を引く羽目になりました。進出は簡単ですが、撤退を決意するのは本当に難しく、6億円に近い返済義務が生じたのです。返済には14年かかり、言葉には表すことのできない試練を味わいました。

サッチャー英首相のセミナーを開催

──ニュービジネス協議会(NBC)では、だいぶ活躍されましたね。
佐川 NBCは、経営学を学ぶには最良の場でした。昭和60年(1985)に多摩大学の学長をしていらした野田一夫先生が、当時の通産省の後押しもあって創設した経済団体です。桜ゴルフも創業15年を迎え、売り上げも100億を達成しましたので、そろそろ自分が培ってきたものを社会に還元したいと思うようになり、野田先生のお誘いによりNBCの創設メンバーに加わりました。そして、女性経営者委員会を立ち上げ、後進の育成と支援に取り組むこととなったのです。
──サッチャーさんをお呼びできたのは、画期的なことだったのでは?
佐川 「燃える女性経営者委員会」は、当時NBCの目玉と言われました。重厚長大からソフト、サービス中心へと産業構造が変化しつつある時期で、その推進の担い手として女性起業家が注目されていたのです。女性が社長を務める会員企業は当初10社程度でしたが、70社まで増えました。
 3年目に「女性の時代」を印象づけるイベントをやりたいと思い、イギリスのマーガレット・サッチャー首相を招聘しセミナーを開催しました。「できるはずがない」という声が多いなか、NBC会長だった関本忠弘さん(当時NEC社長)のお力添えもいただき実現できたのです。夢のようでした。サッチャーさんは、「Yes, We can.」「Ambitious !」(私たちはできる。志を持て)と私たちを勇気づけてくださいました。
──その後も一貫して、女性起業家支援に取り組まれていますね。
佐川 NBCの役員を退任してからは、支援の場を産業人クラブに移しました。こちらは、日刊工業新聞社という歴史の長い新聞社が運営していることもあって、ネットワークは全国規模です。今から18年前になりますが、東京産業人クラブに女性部会を創設しました。
 同会は「小さくても本物」を標榜しています。経営経験の長い女性経営者が中心ですが、後進の育成にも熱心で、起業間もない方も安心して加入できる支援組織です。会員は50社を数えます。

「女性の力」で事業の総仕上げを

「月刊BOSS」より

「月刊BOSS」より

──ゴルフ離れが進んでいるといわれる一方、最近では若い人を中心にゴルフを見直そうという動きもあるとか。
佐川 ある調査によると、ゴルフ未経験者の中で「やってみたい」という意向が最も高かったのは20代前半でした。そこで、若年層の利用を進めようと、20歳の若者限定で全国のゴルフ練習場を無料で利用してもらうプロジェクト「ゴルマジ!20」が昨年スタートしました。今年3月までに1万人弱が利用し、うち8割以上に継続の意向があるとのことです。
 また、日本プロゴルフ協会も練習場、ゴルフ場と三位一体となって、若い方たちにゴルフの楽しさを伝えようと奮闘しています。
 ゴルフ会員権については、バブル期からみると30分の1以下にまで相場が下がり、安い価格で会員権を購入できるようになりました。諸費用を入れても150万円以下で買えるゴルフ場が、全体の8割にもなっています。
 会員権だけではなく、プレー代、金利ともすべてが安くなり、ゴルファーにとっては「わが世の春」を謳歌できる時代です。今、ゴルフをやらなければもったいないですね。
──ゴルフ会員権不要論も聞かれますが、ホームコースを持つ喜びとは?
佐川 たしかに以前と比べ、大方のゴルフ場で簡単に予約が取れるようになっています。ただし、本当にゴルフを楽しむなら、単にプレーをするだけではなく、競技会に出て会員との交流を図っていただきたいです。アットホームなクラブライフを味わい、新しいコミュニティーに参加することこそ、会員権を持つ価値と言えます。
──若い世代の経営者にアドバイスがあれば、お聞かせください。
佐川 最近の若い経営者の皆さんはPR活動に積極的ですが、パーティーなどに振り回されて失敗する例も見受けられます。まずは、ある程度事業の内容を固めてから、外交活動をなさるのがいいと思います。
 それからもう一つ、趣味を持つことをお勧めしたいですね。会社を始めて間もないころ、政治評論家の細川隆元さんから三ゴの趣味を勧められ、心機一転取り組むようになりました。三ゴとは、ゴルフ、小唄、囲碁のことです。
 小唄は、日本情緒豊かな古典芸能で、陶酔のひとときを与えてくれます。
 囲碁は、知的な戦略ゲームと言えるでしょう。「森を見て木を見る」大局観を養うために始めました。「生かして生きる」「逃げ道を与えた攻め方」といった対人戦略にもつながります。囲碁を始めて20年近くになりますが、先月四段に昇進しました。
──あと5年で創業50周年を迎えられますね。
佐川 道なき道を切り拓き、今年で45周年を迎えました。ゴルフ会員権という新しい分野で、ここまで生き残ってこられたのが不思議なくらいです。
 50周年に向けて、「女性スタッフの拡充」「主要都市での新展開」「デジタルメディアへの対応」を推進していきたいと考えています。
 会社が大きく飛躍できた創業から20年ほどは女性スタッフだけでやってきたため、もう一度女性営業部隊を作りたいと考えています。すでに3年前から新卒採用を行っていますが、フレッシュな新入社員を見ていると創業期を思い出しますね。若い力に期待しています。


佐川 八重子(さがわ・やえこ)
株式会社桜ゴルフ代表取締役社長。1944年千葉県生まれ。千葉経済大学附属高校を経て、63年文化服装学院本科修了。ゴルフ会員権販売会社2社を経て、ゴルフブーム幕開けの70年に26歳で桜ゴルフを創業。現在、東京ニュービジネス協議会特別理事、東京産業人クラブ常任理事(女性部会会長)、学校法人千葉経済学園理事、日本棋院参与などを務める。女性起業家の支援や、囲碁の普及活動にも力を入れている。

business_hint_3母の教え(財界研究所刊)
佐川八重子氏をはじめ、鈴木敏文、稲盛和夫、清家篤、山本寛斎ら各分野で活躍する24人のリーダーが「母の教え」について語ったエッセイ集。雑誌『財界』の連載を集成。

文|千﨑研司(コギトスム)

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