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岸谷五朗インタビュー「虚構の世界のリアル」

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.13 舞台『クザリアーナの翼』

岸谷五朗インタビュー「虚構の世界のリアル」

4つの階級に縛られた架空の国「ジャメーリア」を舞台に、それぞれの運命に逆らって必死で生きる人間たちを描く、演劇ユニット「地球ゴージャス」の最新作『クザリアーナの翼』。出演ほか、脚本・演出を手掛ける桐谷五郎はなぜ今、斯様な国家を想像したのだろうか。

「作品にはその時代にある空気感を取り入れるようにしています。例えば前作『海盗セブン(Vol.12/2012)』は、東日本大震災後の日本を元気にしたいという思いから、登場人物たちをこのうえなくイキイキと描きました。それからしばらく経った現在、僕の中で浮き彫りになってきた事柄は、日本の対外関係や中東情勢など、いつの時代になってもなくならない国と国との問題。それをうけ、作品を通してどんなメッセージを伝えることができるのか自問を繰り返した先に見えてきたものが、ガチガチに縛られた階級制国家だったんです」
 抗えない強大な力に支配された世界で懸命に生きる人々の姿を捉えた本作は、ややもすれば、「自由」「平和」といったメッセージをダイレクトに投影した作品よりも強く、見る者にそれを感じさせるのかもしれない。

デコボコな個性

 今年結成20周年を迎える「地球ゴージャス」は、岸谷と、寺脇康文の2人が主宰する演劇ユニット。劇団ではなく、あえて「ユニット」で活動する意義とは。
「まず変な誤解を避けるために……寺脇とラブラブしたいから2人というわけではありませんので(笑)。劇団だとメンバー(キャスト)が固定されるので、どんなに作品のテイストを変えたとしても、ある決まった一種類のイメージに収まりがちになる気がするんです。その点、地球ゴージャスは僕と寺脇の2人以外、作品ごとにキャストの顔ぶれはガラリと変わる。この一貫性のなさ、バラバラ・デコボコな個性の違いこそが、作品によい刺激と面白さを与えてくれるのだと思います」
 本作には、ベテラン俳優の中村雅俊をはじめ、個性と実力を備えたキャストが集結。その、バラバラ・デコボコ感はいかがだろうか。
「もう最高!(笑)決して交わらない個性が集いうまく融合を果たした瞬間、舞台上で無限の可能性は花開く。本作の初顔合わせでメインキャスト全員が揃った際、僕の目にはその姿がはっきりと見えたので、とても嬉しかったです」
 今から公演が楽しみでならない様子の岸谷だが、何やら小声でボソリ。聞き直してみると……。
「実はまだ、脚本が書けていないんです(※取材時)。無論、脚本がないと稽古はできません。俳優としての経験上、脚本が出来上がるのを役者が稽古場で待つ辛さはよくわかるんです。だから自分が脚本を担う以上、そういう状況は絶対に避けたい! 地球ゴージャスの稽古のスタートは早く、公演の2カ月ほど前から始まるのですが、これまでもその10日以上前には必ず完成させてきたので、今回もおそらく……大丈夫でしょう(苦笑)」

岸旅~書ける地を求めて~

 多忙なスケジュールのなか、脚本の執筆はどのように進めているのだろうか。
「パソコンをもっていろいろな場所に書きに行きます。なかでもニューヨークが好きで、1カ月ほど向こうに行き、芝居関係のワークショップに参加しながら書くんです。ほかには……例えば、北海道のとある漁師町。人気がなくとても静かで、小説でも書けそうなほど良い感じの雰囲気だったのですが、夜になると風で戸がガタガタと揺れて、寒いやら、寂しいやらで、結局全く書けずに退散してきました。次は、もっと暖かく陽気な場所へ行ってみようと、ハワイを訪れたときのこと。今度は想像以上に暑くて、書けそうにないなと思っていたら、意外とスラスラ書けてしまったりするのだから、わからないものです。けれど、訪れた土地の空気が、自分の考え方や気持ちを動かし、作品づくりによいヒントを与えてくれることもある。だから執筆地選びは大事なんです! 今回はどこへ行けば書けるのか、誰か教えて~(涙)」と手で顔を覆い、ソファーに崩れ落ちてみせるチャーミングな岸谷。
 果たして、本作の脚本は何処で描かれるのだろうか。書ける地を求め、岸谷の旅は今日も続く。

親友よ、

 19歳で舞台俳優を目指し、芸能界へ飛び込んだ。あれから30年、追いかけ続けてきた夢(舞台)は今――。
「肩を組んだ親友になりました。舞台は僕の生き方そのものを表していると思います。例えば演劇作品を作り、世に送り出していけば、それは僕自身の年表にもなるんです。この時期には、こういうことを考えていたのだと、作品を通して顧みることができるから。そういう意味において、舞台は僕の俳優人生と並行にあるもので、テレビや映画の作品は、そこで培ったものを発表するために〝出かける場所〟というイメージで捉えています。『ちょっと出張に行ってくるね~』という感じでね(笑)」
 それでは、岸谷を惹きつけてやまない、30年来の親友の魅力とは。
「俳優にとって、すべての快感を一瞬にして味わうことができるスペシャルな場は舞台しかないと思うんです。自分の演技で照明が変わり、音楽が入り、観客が息を呑む瞬間を直に感じることができる……」
 話の途中、彼の指で響いていたスナップの音が止んだとき、その解は舞い降りた。
「芝居という虚構の世界で、つかの間、極上のリアルを味あわせてくれる。舞台って、そんなやつなんです」

飢えを向いて歩こう

「地球ゴージャス」というユニット名然り、華やかで熱い舞台を生み出し続ける岸谷に、自身の人生における演出家としてのテーマ(人生観)を問う。
「僕は目標をもたない。これは俳優業特有のスタンスかもしれません。というのも、一見煌びやかな世界に属するように見える俳優も、裏では役作りなどに対し一人で思い悩み、苦しむ時間が多い孤独な生き物なんです。そういうふうにすべてを自分の感覚に委ねる職業であるならば、向かうべきは頭で思い描くような目標ではなく、もっと本能的な飢え。そうでなければ、撮影や舞台づくりはとても辛くて続けてはいけないと思います。俳優道を進むうえで僕が目を向けているものはただひとつ。目の前にある作品を終えたときの自分の状態にほかなりません。そのとき何に飢えているのか、それをキャッチするアンテナだけはしっかり張ろうと心に決めているんです。そうすれば、自ずと次なる道は見えてくるものでしょう。『クザリアーナの翼』を通り越したとき、僕は一体どうなっているんだろうか……」
 しばし宙を仰ぐかのようなしぐさを見せた後、彼は再び口を開いた。
「それもまた、楽しみってことで」
 そう笑みを浮かべる彼の瞳には、いつしかステージ上でライトを浴びる舞台人の如き輝きが灯っていた。


ダイワハウスSpecialinfo
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.13『クザリアーナの翼』

作・演出:岸谷五朗
キャスト:中村雅俊 風間俊介 山本裕典 宮澤佐江 佐藤江梨子 湖月わたる/岸谷五朗・寺脇康文 他
特別協賛:大和ハウス工業株式会社
企画・製作:株式会社アミューズ
【東京公演】2014年1月8日(水)~2月20日(木) 赤坂ACTシアター
【名古屋公演】2014年2月26日(水)~3月1日(土) 愛知県立芸術劇場 大ホール
【福岡公演】2014年3月7日(金)~3月12日(水) キャナルシティ劇場
【大阪公演】2014年3月18日(火)~3月31日(月) 梅田芸術劇場 メインホール

<お問い合わせ>
地球ゴージャスFC
03-5457-3485(平日 15:00~18:30)
http://www.chikyu-gorgeous.jp/vol_13/

 

Profile

岸谷 五朗 Goro Kishitani
1964年東京都出身。1993年、映画『月はどっちに出ている』(崔洋一監督)で数々の映画賞を受賞。以後、映画やドラマ、CM出演多数。1994年に寺脇康文とともに演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。全ての作品の演出を手がける。そのエンターテイメント性高い演出技法には定評があり、劇団 EXILE W-IMPACT『レッドクリフ-愛-』『DANCEEARTH~生命の鼓動~』『FROGS』、ミュージカル『SONG WRITERS』を演出。2009年に公開された映画『キラー・ヴァージンロード』では、自身初の映画監督を務めるなど、その活動は多岐に渡る。

インタビュー・文|松永理佐(編集部) 撮影|TAKA

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