ホーム / Interview / BUAISOインタビュー / 我思う、故に我が道あり~白洲信哉インタビュー「白洲次郎に見るダンディズム」
我思う、故に我が道あり~白洲信哉インタビュー「白洲次郎に見るダンディズム」

我思う、故に我が道あり~白洲信哉インタビュー「白洲次郎に見るダンディズム」

大人の男の余裕とは斯様なものか――
そう感じさせる雰囲気を醸す、白洲信哉。かの白洲次郎を祖父にもち、文筆家、プロデューサーとして日本文化の普及を促し活躍するその生き方は、己のこだわりに満ちている。彼の独自のスタンスとともに、“白洲流ダンディズム”に迫る。

内と外の関係

 戦後の日本政治を中心で支え、スタイリッシュな生き方から“ダンディズムの象徴”と崇められる祖父・次郎の為人を、白洲は次のように振り返る。
「あんなにせっかちな人はいないでしょう。それも、例えば料理屋にご飯を食べに行き、席に着いた途端に満足して帰ってしまうような気の短さときたものです。私も祖父に車の運転を教えてもらいましたが、当初1週間かけてじっくり教習してもらう予定が、祖父の説明下手と飽きっぽさから、わずか半日で終了してしまいました(笑)」
 そうしたマイペースな面もある一方で、次郎の女性に対する接し方は非常にスマートだったという。
「若い頃に英国留学していたこともあり、祖父は紳士的なエチケットを身に着けていました。欧米の方は、例え恋人同士でなくても自然と女性を立て、エスコートすることがお上手ですよね。祖父の知人女性の中にはそうした心遣いを思い出し、今なお『素敵なおじいちゃまだった』と偲んでくださる方が多いです。私には恥ずかしくて、とてもできません(笑)」
 そんな次郎といえば、日本で初めてジーンズを履き、愛車の白いポルシェを颯爽と乗りこなすといった、粋なスタイルにも注目が集まる存在だが……。
「ジーンズを履いたのは単に新しいもの好きだったからで、ポルシェにおいては、本当はフェラーリが買いたかったけれどお金がなかったためやむを得ずと聞いています。皆さん、祖父を“ダンディ”という言い方で形容しますが、それは決して恰好などの外面的要素だけを指す言葉ではないと思います」
 それでは、祖父・次郎の生き方を通し、白洲が考えるダンディズムとは一体何だろう。
「どちらかといえば、その人の精神的な姿勢を表すものではないでしょうか。例えば、自分の物差しがあること。人の波に惑わされず、自分で考え行動することができる人だと思います。そういう意味で祖父は、後ろめたいことはせず真っ直ぐ素直に生きる、武士道を貫くがごとき生き方をしていたと思います。知人の陶芸家が『焼き物は後から外を削り、形を整えても美しいものにはならない。轆轤を回し、中を作るときに8、9割上手くできれば自ずと外もついてくる』と言っていました。それと同様に、人間も教養や生き方といった内面が整っていればこそ、かっこよさといった外見の魅力が生じるのではないでしょうか」

もてなしの流儀

 自分の物差しをもつことは、情報が錯綜する現代においては難しいようにも感じられる。その点について白洲は、次のように指摘する。
「最近では、情報サイトに頼らなければ飲食店を探すことができない方も多いようですね。私も人の意見を聞き、参考にしますが、それも顔の知れた信頼できる人が限定です。よく『今の時代、情報が氾濫して大変だ』と言われますが、そう感じるのは自分がその情報の中に泳いでしまっているからでしょう。自分で考え判断していれば、何も大変なことはないと思います」
 そう自論を語る白洲は、愛する「食」の嗜み方にも己のスタンスをもつ。
「基本的に、外食をするときには主人の顔の見える店しか選びません。遠方へ食の旅に出かけることもありますが、それは何かの食材を目当てに行くというより、その店の主人の人柄や街の雰囲気も含めて、食を楽しむことを目的としています。何かを味わう際、私にとって大事なことは料理人の姿勢です。真の料理人は、長い付き合いの中で客の年齢やコンディションによって味付けを自然と調整すると聞きます。そうした細やかで温かい心遣いこそ、食をより豊かに、味わい深くしてくれるのではないでしょうか」
 自身、気心知れた仲間を自宅に招き、自ら料理の腕を振るう機会も多いという。その際の、もてなしの流儀とはいかに。
「わざわざ足を運んでくれる客人のため、家の主人が自ら走る。これこそが『ご馳走』の文字に込められた意味なんです。ですから、私が人をもてなすときにはケータリングなどには頼らず、自分で料理を作り、振る舞うことを信条としています。これはもてなしの基本でしょう。美味しいものは舌で味わうだけではなく、食べる人の心で感じる要素も大きいと思うので、心のこもったもてなしは大事にしたいものです」


インタビュー・文・写真|松永理佐(編集部)

Scroll To Top