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「役者でなぜ悪い」堤真一

映画『地獄でなぜ悪い』

「役者でなぜ悪い」堤真一

稀代の演技人は言った。「役者がやれるのであれば、苦すら幸に感じる」と。
何度“やられたっ”と思ったことだろう。泣かせ、笑わせ、ときに苛立たせもする、スクリーンの中の彼に。俳優・堤真一、「え、じき50歳やん!(普段は関西弁使用)」。
これまでジャンルを問わずさまざまな役に挑んできた彼が、今度は、鬼才・園子温監督のアクション活劇、映画『地獄でなぜ悪い』で人情深いヤクザの親分を演じるという。
「狂おしいほどまっすぐな思いが叶うなら、そこが地獄でも構わない」―― 映画作りに(文字通り)命をかける者たちを描く、これが本作のテーマ。って、かぶってますやん!?堤的役者心情と……。

たく、役者ってやつは

 その長い指で紙コップをじっと捕え、水を飲む、また飲む。「何でこんなトイレ近いんやろ。って水ばっか飲んでるからか!」と一人ツッコミを入れる剽軽さがまた、親しみ深い。カメラを向けると、ようやく“役者・堤真一”が顔を出す。無論、文句なしにかっこいいのである。

「役者論」は持ち合わせていないという――。
「それがあったら、もっといろいろなことが楽だろうに。役者は結局、その役にいかに自分の魂を委ねることができるかどうかだと思うんです。そうは言っても、すべての役にすんなりと入り込めるわけではありません。ときに、『どうしてこんな言葉を吐くんだろう』と納得のできない台詞だってある。そんなときには、まずじっと考え、徐々に役の本質に近づいていくようにします。そうやって試行錯しながら演じた役が、失敗することもあれば、“ありえないでしょう”という意図しない演出で面白く映ったりもする。だから役者ってほんと、おかしなものです」と首をかしげる彼の表情は、どこか楽しげにも見える。
 出演作品を選ぶ際は、自らの「直感」に従うという堤。本作には、不思議な惹かれ方をしたようだ。
「これはハチャメチャな映画なんです。が、脚本はもっとぶっ飛んでた(笑)。初めて読んだときには、園監督は一体どうやってこれをひとつの作品にまとめるのか疑問に感じたほど。そういう興味も働き、ある意味では“怖いもの見たさ”的な魅力を感じました」
 これまで演じたことのないような新しい役にチャレンジしていきたいという開拓心もまた、彼を本作出演に向かわせたきっかけのひとつだという。

愛らしい映画狂

「『僕、映画を作るのが好きなんです』という人と一緒に遊んでいる感じだった」と、自身初となる園組の撮影を振り返る。
「正直、園監督は怖いイメージがあったんです。アーティスティックな部分がどこか狂気じみているというか……。でも撮影を重ねるうち、その狂気がだんだん微笑ましく感じられてきたんです。この人は本当に映画作りが好きなんだと、伝わってくるから。きっとそう感じていたのは僕だけではなかったはず。現場の楽しげな雰囲気と、チームワークのよさがそれを証明していたと思います」
 今回、堤が演じるのはヤクザの親分。さしあたり、何か役作りは……。
「ないないないない(笑)。撮影もアドリブ勝負みたいな部分があったくらいです。だって監督、いつまでもカメラを止めないんだも~ん。だからシーンが終わっても、その場の雰囲気であれこれ続けて演じました。結果的には、そういう部分が作品にいい味を出しているのではないでしょうか」

振り返れば現在(ここ)にいた

 もともとは、舞台役者としてスタートした堤。若かりし頃の自分を「生意気坊主」と笑う。
「よく20代の頃には、『片っ端からいろいろなことに挑戦しろ』とまわりから言われるものですよね。でも僕はその頃、生意気にも自分の好きな仕事だけを選んでいたんです。人気作に出て、知名度を上げることもしようとはしなかった。そこから少しチャレンジ精神が出始めたのが30代で、後半にはテレビドラマや映画にも意欲的に出演していきました。そうこうしているうちに、気づけば今、「え、じき50歳やん!」という感じです(笑)。ここまで、本当にあっという間でした。何が言いたいかといえば、必ずしも人が勧める道や、人と同じような道を通る必要はないということ。各々が自分の道を信じ、ひたむきに真っ直ぐ突き進めばいいと、僕なんかは思うんです。あ、別に“生意気に”じゃなくてもいいんですけどね(笑)」
 時の流れを忘れるほど夢中になれる「役者」とは、彼にとって一体何か。
「何なんでしょうねぇ。別に、特別な仕事だとは思っていないんです」
「うーん」と、一点を見つめ、自らの心情と対話をするかのよう考えを巡らす彼を、静かに待つ。そしておおよそ1分後……。

「ひとつだけ言えるとしたら、苦しみも幸せに感じるんです。役者でいる限り」

 ある男が、狂おしいほど夢中になれる役者という人生に出会った――我が人生、役者でなぜ悪い。


(c)2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会

(c)2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会

『地獄でなぜ悪い』

出演:國村隼/長谷川博己 星野源 二階堂ふみ 友近/ 堤真一
監督・脚本・音楽:園子温
配給:キングレコード、ティ・ジョイ
9月2 8日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー

[Story]ヤクザの組長・武藤は、獄中の妻しずえの夢をかなえるため、娘ミツコを主演にした映画製作を決意。うだつのあがらない若手映画監督と通りすがりの青年をスタッフに迎え、対立する池上組の組長らを巻き込みながら、本物のヤクザ抗争をテーマに命がけの映画撮影に乗り出す。園子温監督が10年以上前から温め続けた脚本に自ら加筆した、痛快無比のウルトラ・アクション活劇!

堤真一(つつみ・しんいち)

1964年兵庫県出身。「シアタープロジェクト・東京」などの舞台を中心に活躍した後、今日までテレビドラマ、映画、舞台、CMなど幅広く活躍。主な出演作として、ドラマ『やまとなでしこ』、『SP』、映画『地下鉄(メトロ)に乗って』『クライマーズ・ハイ』など。2007年には、映画『ALWAYS続・三丁目の夕日』『舞妓Haaaan!!!』の2作品で第31回日本アカデミー賞助演男優賞を受賞したほか、これまで数多くの賞を受賞。本年12月には主演舞台『マクベス』が控える。

インタビュー・文|松永理佐(編集部) 撮影|花村謙太朗 スタイリング|中川原寛(CaNN) ヘア・メイク|藤原羊二(EFFECTOR)

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