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戦後初めて、独立系の生命保険会社の誕生 ―ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口治明

契約数が伸びていますね。

開業して1年、ウェブ直販で1店舗のみの販売ですので、まずまずだと思います。経済危機下の環境でしたが善戦し、申込数ベースで1万件を超えました(2009年6月現在)。ライフネット生命が目指す「わかりやすさ、安さ、便利さ、正直な経営」をご理解いただけた結果だと捉えております。

支持されている理由はなぜでしょう。

当社の生命保険は「20代、30代、40代の子育て真っ最中世代の保険料を半額にしたい」「保険金の不払いをゼロにしたい」「保険商品の比較情報を発展させたい」というコンセプトが基本です。この思いに共感いただいているのではないかと思います。
生命保険料は、年齢や性別によって変わる純保険料と、経費・手数料である付加保険料からなります。純保険料は生命保険会社間であまり変わるものではありませんので、「半額にしたい」という思いは付加保険料を引き下げる工夫によって実現しています。具体的には、保険を販売するセールスパーソンや、代理店業務を行うミドルパーソンをなくし、販売経費を縮減しています。

商品をふたつだけにしてシンプルにすることで、事務・管理コストも減り、「保険金の不払い」の原因も少なくできます。「保険金の不払い」に対しては、さらに複眼的なチェック体制をとるなど細心の注意を払っています。また、電話によるコンタクトセンターは平日朝9時から夜10時まで、土曜日は朝9時から夜6時までと長めに設定することで利便性を高めました。
「比較情報の発展」実現のためにできるだけ情報開示に努めました。マイホームや自動車、電化製品を購入する時は、誰でも仕様書を目を皿のようにして商品比較するものです。同じように、生命保険という各社提供の商品も仕様書レベルで比較できることが理想ですが、現実はそのようにはなっていません。当社ではウェブサイト上で「保険約款」や「保険料表」を開示し、契約前でも比較・確認できるように配慮しています。加えて生命保険の原価である付加保険料率も公開 しましたので、透明性がさらに高まっていると思います。

ウェブサイトも使いやすいですね。

ウェブが唯一の店舗ですから、ユーザビリティとデザインにこだわりました。指示を出したのは3点だけで、優先順位の高いものから、ユーザビリティ、 SEO(Search Engine Optimization)、デザインです。自身はネットが専門ではないので、任せることが肝要だと思っています。上司が部下に徹底的に調べさせてからイエス・ノー判断を下すケースがありますが、これは間違いです。時間も部下も無制限に存在するという前提で資料を作らせる旧態依然とした日本の仕事の進め方では、ビジネスが時間に追い越されてしまいます。

国際畑で活躍されていましたが、世界で通用する人材になる秘訣はありますか。

元アメリカ国務長官のキッシンジャー氏に「人間はワインと一緒だ。世界中のすべての人は、自身の生まれた土地に愛着を持ち、先祖に誇りを持つ」と教えられました。時間があれば相手の国の歴史と地理を一生懸命勉強し、背景となる共通認識を広く、深く掘り下げます。その国の土地を学び、先祖を敬い、理解力を深めれば、互いに胸襟をいて話し合うことができます。

日本の次の20年を考えると主役は20~30代です。20~30代のうちに為すべきことは。

本をよく読み、お酒が好きなら可能な限りたくさんの人と飲み、休暇には世界へ旅に出ることが大切です。さまざまな人に出会い、話し、書籍を読むだけで大脳への インプットが増加します。知識や経験が蓄積されればされるほど視野が広くなり、正しい判断に近づきます。株式やFX(外貨証拠金取引)よりずっと自身に対するリターンが大きい投資になるはずです。

この先の出口社長は何をしようとしているのでしょうか。

一般的に親は子どもを産むと4、5年間子どもにかかりきりになります。私も会社(ライフネット生命保険)を産みましたので、4、5年はかかりきりの予定です。過去のことも遠い未来のことも興味がなく、少し先のことでいえばこの会社を大きくすることですね。現状3%の知名度を10倍にして、ライフネット生命保険を10倍ご購入していただこうと企んでいます(笑)。


出口治明(でぐち・はるあき)
1948年三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長を経て、 2005年日本生命保険相互会社を退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを経て、現在、ライフネット生命保険株式会社代表取締役社長

発行人後記
気配りの利く人である。ともに新しい道を切り開いた関係者に感謝し、ともに歩んでいく社員を気遣い、鼓舞し、そして顧客を最優先に考えた商品開発を指揮す る。Weで話し、Weで行動するトップ。人も社員も惹きつけてやまないことだろう。「100年続く企業」は絵空事ではないかもしれない。

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