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九州の秘湯、黒川温泉で至福の湯巡り

九州の秘湯、黒川温泉で至福の湯巡り

人気温泉地として名高い熊本「黒川温泉」。アクセスはバスか車のみ、という場所にあるにも関わらず年間100万人以上の観光客が足を運んでいる。美しい風景、もてなし、スローフード……そこには日本人の心の琴線に触れる“何か”がたくさんある。凍えた身体と心をほぐしに、訪れる価値大!だ。
写真:黒川を代表する名宿「黒川荘」の露天風呂は白緑色の神秘的な湯
黒川荘/熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6755-1 TEL 0967-44-0211

山みず木

露天風呂の美しさで知られる「山みず木」。新緑や紅葉の季節は特にその美しさを実感できる山あいの宿
山みず木/熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6392-2 TEL 0967-44-0336

溜まったストレスの分だけ心地いい

 人里離れた静寂の地で、日々の疲れをゆったりと癒すなら黒川温泉がいい。フランスの「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」において二つ星を獲得したこの地は、福岡空港からバスで約2時間半、阿蘇くまもと空港からも約1時間40分。どちらのルートも山道を抜けて抜けて、やっとたどり着く……といった印象で、決してアクセスに優れているとは言えないが、“日本人の心の原風景”とも呼べるような、美しいふるさとの姿を求めて、全国から年間100万人もの観光客が訪れる。そこにあるのは、心と身体にエネルギーがチャージされ、再生していくような非日常感。日頃のストレスがたっぷり溜まった分だけ、この地の良さが感じられるに違いない。

入湯手形1,200円。旅館組合「風の舎」ほか、各旅館で購入することができる

入湯手形1,200円。旅館組合「風の舎」ほか、各旅館で購入することができる

 黒川温泉は旅館組合のある建物「風の舎」を“母屋”、宿と宿をつなぐ道を“渡り廊下”、各宿を“離れ”と位置づけ、町全体を一つの宿と見立てておもてなしをする、というのがコンセプト。この一体感というか、旅人を包み込む温かさがリピーターの心をつかむ。
 その考え方から生まれたのが、入湯手形だ。数ある宿の中から好きな3軒の露天風呂に入れる温泉手形で、朝8時30分から夜21時まで利用可。朝風呂はここで、夕食後のひとっ風呂はこっちで……と多彩な温泉巡りを楽しめるというわけだ。宿は中心地となる温泉街エリアとそれを取り囲む山あいエリアに広がるが、特に温泉街は宿から宿へ、浴衣で歩くのにちょうどいい距離感。宿泊している宿の浴衣を着て、他の宿に入浴しにいく、というのも黒川では日常の風景だ。

町全体がしっとりとした雰囲気。ゆるやかな階段状のいご坂など、坂道も多いが、道沿いに土産店などが軒を連ねているので、立ち寄りながらゆったりと散策できる

町全体がしっとりとした雰囲気。ゆるやかな階段状のいご坂など、坂道も多いが、道沿いに土産店などが軒を連ねているので、立ち寄りながらゆったりと散策できる

自然という“本物”の癒し

 さて、実際に湯煙に包まれた露天風呂に身を委ねてみる。阿蘇くじゅう国立公園に隣接し、森や川がすぐそばに感じられる温泉地だけに、空気が澄んでいる。そこに聞こえてくるのは清流・田の原川の川の音、そして鳥の声……。森を渡る風が頬を伝い、昼なら優しい木漏れ日が、夜なら柔らかい月光に包まれる。星の数の多さ、明るさも、初めて見るかのように新鮮だ。秋は燃えるような紅葉が、冬ははらはらと落ちる雪が、春には一斉に芽吹く新緑が、夏には生命力に満ちた緑が美しく、季節ごとに訪れても違う世界が広がっている。広々とした露天風呂で手足を広げて、空を仰いでいるうちに、日常の悩みやストレスが些細なことのように思えてくる。
 もちろん、各宿ともに料理も充実。近くの川でとれたヤマメや鮎、熊本特産の馬刺、肥後牛、小国黒豚など、地消地産にこだわっているが、特筆すべきは野菜の味の濃さ、滋味深さ。店主自らがその日の朝収穫してきたばかりの野菜や山菜を使った料理を提供する宿も多く、素材の良さを生かした料理の数々が人々を魅了する。
 こんなに川の音って心地よかった? 星って明るかった? 野菜って味が濃かった? 洗練されたリゾート感はないが、自然という“本物”の癒しに包まれる……。人々に足を伸ばさせるだけの価値が、ここにはあるのだ。


黒川温泉[ 問い合わせ先]
旅館組合「風の舎」
熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6594-3
TEL 0967-44-0076 9:00~18:00 無休

文:中野智恵<Fe>

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