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FROM PARIS パリのカフェ物語

FROM PARIS パリのカフェ物語

パリといえばカフェ。なんといっても、パリはカフェが良い。パリに住む人たちには、必ずと言っていいほど「行きつけのカフェ」があります。そこで友達とおしゃべりしたり、カップルでまったり時間を過ごしたり、すっかり顔なじみのカフェのギャルソンとふざけ合ったり。今回は、パリのカフェの人間模様をちょっとのぞいてみましょう。

*カフェ・ノワゼットは、ミルク入りのエスプレッソのこと。 ミルクの入った小さなピッチャーがエスプレッソに添えら れてきた場合は、自分で好みの量を入れます

「Cafe(カフェ)くださいって言ったら、エスプレッソが出てきたわ!」

彼女は少しびっくりしながら、出てきたエスプレッソを見て英語でつぶやきました。彼女はアメリカ人のようです。

すると、隣のテーブルに座っていた彼が、
「君が飲みたかったのは、Cafe allonge(カフェ・アロンジェ)?」
と、彼女に声をかけました。フランス語のアクセントがある英語で。
「カフェ・アロンジェって何?」

「君の国の『コーヒー』のことだよ! Cafe americain(カフェ・アメリカン)って言っても通じるけどね。フランス人は薄いやつが好きじゃないから、頼む人はいないと思うけど。フランスで『カフェ』って言うとエスプレッソが出てくるんだよ。君、アメリカから来たんでしょ?」
「そう。サンフランシスコ。ねえ、あなたが飲んでるのは何て言うの?」
「これは、Cafe noisette(カフェ・ノワゼット)*だよ」

そこから二人の会話が始まりました。

そう、パリのカフェは出会いの場所でもあります。

― シックなサンジェルマンのカフェにて
シックなサンジェルマンのカフェにてCafe Cassette 73, Rue de Rennes – 75006 Paris
TEL 01 45 48 53 78

夜の8時。彼は一人でテラス席に座っていました。
本や雑誌も読まず、タバコも吸わず、携帯電話をいじることもせず、彼はひたすら来ない人を待っていました。
行き交う人たちを眺める彼の目は、怒っているようにも見えました。

1時間半以上が経った頃、彼の待ち人がとうとう現れました。
濃い茶色の長い髪をした、雰囲気のある美しい子。
彼の目の前に立っても申し訳なさそうな表情もせず、彼に会えて嬉しいという表情もせず。目の下に少し、くまができていて疲れた表情でした。でも、彼のことを真剣な目で見ていました。

彼女は無言で彼の隣に座りましたが、彼は無言でポケットから自分のカフェ代を出し、それをテーブルの上に置き、イスから立ち上がりました。

普通フランスでは会った時、恋人同士なら唇にキス、友だち同士ならほっぺに挨拶のキスをするのですが、彼らは唇にもほっぺにもキスをせず……。

何も言わず歩き出した彼を追って、彼女も席を立ちました。

フランス人は……
真剣な愛に対してはとても重い人たち。

―学生街カルチエ・ラタンのカフェにて
学生街カルチエ・ラタンのカフェにてLe Latin St Germain 92, Boulevard St Germain – 75005 Paris
TEL 01 43 54 34 44

文:土井彩子(どい・あやこ)

東京の商社と出版社に勤務後、渡仏。現在パリと東京の二重生活を実践中。フリーのエディター・ライター。得意分野はライフスタイル。東南アジア、北米、オセアニアに居住経験あり。趣味は人間観察、旅行、読書、カフェめぐり、建築鑑賞、ピラティス、スキューバダイビングなど

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