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10/レンズ越しの世界

10/レンズ越しの世界

チャイナの人々

 中国を周遊していた時のことだ。店の店主と気さくに立ち話をしたり、ノーにはノーとはっきり突き付けたり、中国人のコミュニケーションをよく真似たものだった。自己主張を避け、はっきりと意見を言わない僕からしたら到底考えられないことばかりだが、そこはひとつ足を踏み出して彼らの色に染まってみるのも悪くは無かった。人々の人間性には僕を確かに惹き付けるものがあり、だからそうしてみることは居心地が良かったのだ。
 彼らは、実に感情豊かに自分を表現する。幼い子供でも、歳を重ねて大人になってもそれは共通していた。年上か年下か、知人か初対面かという間柄や肩書きすら人々には問題では無いのだ。よく意見をぶつけ合ったり、つい声を荒げて怒ったり、ともすれば高らかに笑いながら肩を叩き合っている。そんな古い旧友のように喋っていた彼らが、実は名も知らない他人だと知らされた事もあった。街中では、親が子どもを凄まじい力で引っぱたく光景をよく見かける。すると、子どもも全力でその叱咤を受け止め、反省し、何事もなかったように日常へと戻ってゆく。自分をさらけ出して相手と向き合うその姿勢は、異国の地から来た僕にさえ変わらなかった。切符の買い方を一から教わり、重い荷物に辟易していると席を譲られ、小腹が空いたら食事を分け与えられた。度あるごとに会話が生まれ、一人旅をしていたはずなのにひと時も寂しさを感じたことはなかった。
 中国人のやり取りは、人が人をそっくりそのまま受け入れているようだ。僕は人々の会話を見ているのが大好きで、口元はいつもはにかんでいた。同じアジアにいて、同じ顔立ちをしているのに、何故か似ても似つかぬ遠い国の人々のような気がしたのだ。


花村謙太朗 (はなむらけんたろう)

1984年愛知県生、東京都在住。世界中を旅する中で、写真に興味を持ち始める。
写真家 山岸伸に師事し、2011年に独立。主に人物、風景を被写体とし、活躍の幅は広告、雑誌、WEBなど多岐に渡る。
kentarohanamura.com

 

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