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4/レンズ越しの世界

生きていくのに最低限必要なものと、カメラとフィルムだけを持ち、人生の旅に出る――。

4/レンズ越しの世界

星の数ほどある夢のかたちの、あるひとつの例

 上京して7年が経つ。東京を目指す人の数だけそのきっかけも理由も様々だろうが、僕の場合は進学だった。あの日、なんでもない田舎町から親里離れて、大方がそうであるように一人でやってきた。新幹線の中から東京タワーが見えたかと思えば、あっという間に空を突くような高層ビル群に取り囲まれ、スクランブル交差点を行き交う人の多さに胸の高揚は止まらなかった。

 長年、憧れてきた街だった。多くの夢と希望を抱えるこの街へ飛び込みたかった。たとえ、世界中の女の子から、代わりに遊んであげるからもうやめなさいよ、という嬉しい引き止めがあっても、上京という切符を捨てることはできなかったと思う。

 学業を終えた僕は、社会人になるものの、一転、葛藤の日々を送っていた。一度きりの人生、やりたいことがしたい。それからパタリと仕事を辞めると、一心発起して、写真を仕事にしようと決めた。アルバイトの生活に戻った。下積みを何年も続けた。ずいぶんと寄り道をして、遠回りをして、ここまできた。

 まるで継ぎ目のない川の流れのように時間は過ぎていったが、今、思い返すとどれも決して無駄ではなかった。それは、川底にひとつ、またひと粒と砂金が沈むように、僕の一部になっている。大学で培ったロジカルな考え方も、ビジネスマンとして得たマナーや言葉遣いも、写真とは無関係でも、全てのことはどこかで繋がっている。人生において、無駄なことはなにひとつとしてないのだ。

 あの日から夢は大きく変わったが、この街で叶えると決めた想いは、今も変わらない。


花村謙太朗/Kentaro HANAMURA

昭和59年3月4日生。愛知県出身、東京都在住。旅で写真を撮り始めたことを機に、フォトグラファーを志す。ポートレート写真家・山岸伸氏に師事し、2011年6月に独立。人物、風景を主に被写体とし、活躍の幅は広告、雑誌、WEBなど多岐に渡る。

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