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2/レンズ越しの世界

生きていくのに最低限必要なものと、カメラとフィルムだけを持ち、人生の旅に出る――。

2/レンズ越しの世界

祭りのような日々に溺れれば

 ガンジス河沿いに延びる階段状のガート(※1)では、沐浴をする者、祈りを捧げる者、はたまた火葬が執り行われている現場も目にする。すぐ傍では、日々変わらずに人々が石鹸を泡立てて顔を洗い、洗濯をして歯を磨く。河で泳ぐ青年も、物売りの少年たちも、誰ひとり目をくれることはない。普段はあまり意識することのない生と死、聖性と俗、富と貧困……。この国では、それらが渾然一体となり、日々の生活の中に溶け込んでいる。

 インドほどあらゆる多様性を受け入れる国はないだろう。絵に描いたように混沌と無秩序が目まぐるしく回転し、さながら毎日はお祭りのようでもある。でも、どこかゆったりとした時間と空間の広がりを確かに感じ、手を大きく広げたように包み込む姿には母の存在すら重ねてしまう。

 濃く、深く、優しく、美しく、汚くもある不思議な国。そんなインドを巡る旅もバラナシ※2を離れるともうすぐ終わる。見慣れなかったカラフルな景色がようやく目に落ち着いてきた。あれほど鬱陶しかった客引きも、今では微笑ましく映る。数えきれないほど多くのことがこの旅で起こったが、今、心の中は妙に静かで穏やかだ。

 ただひとつ気がかりなことがあるとするならそれは、腕と脚にくっきりと境界線を描いた、少し季節はずれの日焼けのあと。

 

※1 南アジア地域に見られる巡礼者の沐浴の場

※2 ヒンドゥー教の一大聖地であるインドの都市


花村謙太朗 / Kentaro HANAMURA

昭和59年3月4日生。愛知県出身。東京都在住。旅で写真を撮り始めたことを機に、フォトグラファーを志す。ポートレート写真家・山岸伸氏に師事し、2011年6月に独立。人物、風景を主に被写体とし、活躍の場は広告、雑誌、WEBなど多岐に渡る。

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