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2011.10.03

京都市美術館~世界の名作に出合う。国際交流の舞台~

京都市美術館~世界の名作に出合う。国際交流の舞台~

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション

 京都市美術館は昭和8年(1933年)に大礼記念京都美術館として設立された。
 建築設計はコンペで入賞した前田健二郎が担当し、昭和6年(1931年)に着工、8年に竣工した。前田は資生堂本社などを設計したことで有名である。また京都大学教授で「関西建築界の父」とも呼ばれる武田五一の影響も多分に反映されている。コンペの条件は「日本趣味を基調とすること」であった。
 京都市美術館は外観は美しいレンガタイルで、内外装には和風が取り入れられており、日本的な格子の天井や窓の意匠が見てとれる。また、エジプト風の柱彫刻など西洋様式も見られ、1925年にパリで開催された万博で紹介されたアール・デコもステンドグラスなどに取り入れられている。
 展覧会と共に、美術館の建物自体もじっくり見ると興味深い。
 マネ、ピサロ、ドガ、モネ、ルノワール、カサット、ロートレック、セザンヌ、ゴッホ。美術に特別明るくなくとも、名前を列挙しただけで、豪華な展覧会であることが分かるだろう。数々の海外有名展覧会を催してきた京都市美術館だが、これほど大規模な絵画展を開催するのは久しぶりのことだ。
 出展元であるワシントン・ナショナル・ギャラリー(以下WNG)はアメリカ人によるアメリカのための美術館と言われ、すべての収蔵品が設立者であるアンドリュー・メロンをはじめ、有志からの寄贈、もしくは寄付金で成り立っている。コレクションは12万点以上と言われ、特に印象派とポスト印象派の作品群400点は絶大な人気を誇る。
 その作品群の中から日本初公開の約50点を含む83点が来日している。中でもWNGの顔と言える「常設コレクション」から9点も出展。70年におよぶWNGの歴史上でもかつて類を見ない質の高い出展作品となっている。
 また1作品15回までしか館外に出せないというデッサン、版画、パステル、水彩などのコレクションも見どころの一つだ。

知っていると面白さ倍増
学芸員後藤結美子さんに聞く有名画家たちの交友録

後藤結美子氏

 印象派は19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで発生した、写実主義から抽象主義への過渡期の芸術運動である。写実主義にくらべ色彩鮮やかな作品が多い。
「当時のパリ画壇には、サロンと呼ばれる展覧会があり美の基準となっていて、サロンに入選しないと画家として認められないという風潮がありました。しかし、エドゥアール・マネを中心に『新しい芸術はどうあるべきか』という討論がカフェや酒場、美術学校などで交わされるようになり印象派が形成されていったのです。画家たちは個人的な付き合いを深めていきました。時にはキャンバスを並べて制作したといいます。今回の展覧会は画家たちの交友が分かる作品が選ばれています」。
 例えば今展覧会の主要作品であるマネ作『鉄道』をエヴァ・ゴンザレス作『家庭教師と子ども』と見比べると興味深いという。
「『鉄道』はマネ作品の中でも謎の多い作品と言われています。鉄道というタイトルにも関わらず、列車は描かれておらず、女の子が何を見ているかも分かりません。また女性と女の子の関係も分からない。そして女の子の脇に屋外であるのにポツンとブドウが一房置いてある。マネらしい、観る人に謎を仕掛けるような作品です。一方、ゴンザレスはマネの唯一の弟子と言われています。彼女の作品も女性と女の子が描かれていますが、女の子の見ているものは不明で、家庭教師と言いながらも2人の関係は希薄に見えます。構成要素が同じなので、『鉄道』のオマージュ作品だという説があります」。

 家族ぐるみの関係を表すエピソードも多数ある。ピエール=オーギュスト・ルノワールが『モネ夫人とその息子』を描いた時、実はマネが先に2人を描き始めていた。
「クロード・モネはこの時、夫人と息子の横で庭仕事をしていたんです。その風景をマネが正面から描いており、この時の作品は今、NYメトロポリタン美術館に収蔵されています。マネが描いているところへルノワールがモネを訪ね、モデルがポーズを取っているのを見て『これは描かずにはいられない』と、モネに絵の具を借りて描き始めたそうです。ルノワールより先輩であるマネはそれが気に入らず、モネに『やめさせろ』と言ったという逸話が残っています」。
 マネは怒ってしまったが、同じ場所で画家たちが制作することは珍しくなかったようだ。
「モネと同じ学校で学んだアルフレッド・シスレーが『アルジャントゥイユのエロイーズ大通り』を描いた時、モネもキャンバスを並べて描いていました。アルジャントゥイユはモネが6年間暮らした町で、シスレーがモネを訪ねたのでしょう。この時のモネの作品はイエール大に収蔵されていますが、今回『アルジャントゥイユ』が出品されています」。
 同じ場所でも時を異にして描かれている作品もある。ブータンの『オンフルールの港の祭 』(1858年)とスーラの『オンフルールの灯台 』(1886年)だ。
「ブータンが描いたオンフルールは大きな帆船が入港し、大勢の人々が集う活気ある港です。しかしスーラの描いたオンフルールには打ち捨てられた舟の残骸があるだけ。これは対岸にできた新しい港が発展し、オンフルールが荒廃していたためです。オンフルールはモネやターナーなども描いていて、スーラは先輩画家たちが描いた場所を選んだのです」。
 鮮やかな青色が目を引く『青いひじ掛椅子の少女』の作者メアリー・カサット。彼女はアメリカに印象派を伝えた人物だ。カサットを印象派に誘ったのはエドガー・ドガだと言われている。
「ドガは後年、入浴の絵ばかり描いていましたが、カサットも『入浴』など日常生活の一部を切り取った作品が多いです」。
 まだまだ作品の背景にあるエピソードは尽きない。作品を隅々まで鑑賞し、自分なりの発見をすることも楽しいが、キャンバスの後ろ側を知るとまた違って見えてきてワクワクする。絵画とは本当に人を飽きさせない。

(作品上から)
●エドゥアール・マネ《鉄道》1873年頃 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington / Gift of Horace Havemeyer in memory of his mother, Louisine W. Havemeyer
●ピエール=オーギュスト・ルノワール《モネ夫人とその息子》1874年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington / Ailsa Mellon Bruce Collection
●メアリー・カサット《入浴》1890-1891年 カラー・ドライポイント、アクアチント、ソフトグラウンド・エッチング・局紙
National Gallery of Art, Washington / Rosenwald Collection
●ジョルジュ・スーラ《オンフルールの灯台》1886年 油彩・カンヴァス
National Gallery of Art, Washington / Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon

ロートレックのレシピ?! 芸術的メニューで余韻を楽しむ
ホテルオークラ『ピトレスク』

特別ランチコース(左)と特別ディナーコース
※各コースとも追加料金でメーンの変更可

京都ホテルオークラ17Fにあるフレンチレストラン『ピトレスク』では、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展の会期中フェアメニューがランチ、ディナーで楽しめる。「ロートレックはグルメで、料理を作ることも好きだったらしく、レシピブックを残しています。今回はその中からポンムスフレというじゃがいも料理と、グラ=ドゥーブルという牛の内臓煮込みを、牛フィレステーキの付け合わせとして再現しました」。(玉垣雄一郎料理長)ランチではカミーユ・コロー作『うなぎを獲る人々』にちなんで、うなぎとフォアグラのクロメスキ山椒風味がいただける。フランス語で絵画的を意味する店名の通り「視覚でも楽しんでいただけることと、フレンチですが京都ならではということも大切にしています」。(同)京都の秋野菜が彩られた一皿にはマネ作『鉄道』を連想させるブドウが一粒。茶目っ気も利いている。

特別ランチコース3,800円(4,489円):アミューズ ブーシュ/クラムチャウダーをピトレスクスタイルで/鰻とフォアグラのクロメスキ山椒風味 サフランのリゾット 茸添え赤ワインとポルトのエッセンス/季節のパティスリーワゴンサービス/食後の香りとフリアンディーズ

特別ディナーコース10,649円(12,300円):アミューズ ブーシュ/秋の味覚プレートと一粒のブドウ/甲殻類と卵のココット/和牛フィレ肉のポワレ ロートレックのポンムスフレとリヨン風グラ=ドゥーブル 食べ頃フロマージュ各種/プレデセール/季節のパ
ティスリーワゴンサービス/食後の香りとフリアンディーズ

予約・問い合わせ:075-254-2535
営業時間:ランチ11:30~14:30、ディナー17:30~21:00
okura.kyotohotel.co.jp

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
会期:開催中、11月27日(日)まで
会場:京都市美術館(京都市左京区・岡崎公園内)
開館時間:午前9時~午後5時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(10月10日は開館)
チケット:一般1,500円・高大生1,000円・小中生500円(当日券)
お問い合わせ:京都市美術館 075-771-4107
主催:京都市、読売テレビ、読売新聞社
文:川口奈津子(編集部) 撮影:橋本雅嗣(雨音Graphics)
モデル:千葉素子 きもの提供:白イ烏

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