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大自然と大都市のダイナミックな調和 カナダ バンクーバー

大自然と大都市のダイナミックな調和 カナダ バンクーバー

スタンレーパークからダウンタウンを眺める。ハーバーを見下ろすコンドミニアムは人気で価格が高い

雄大なカナディアンロッキーに抱かれる大都市

 雄大なカナディアンロッキーが街並みに迫るバンクーバーは、バンクーバー島を挟んで太平洋に面し、海と山の大自然に近接した大都市だ。ブリティッシュ・コロンビア州の州都であり、トロント、モントリオールに次ぐ第3の都市としてカナダの西の玄関口の役割を持つ。1880年代にフレイザー川上流で金鉱が発見され、ゴールドラッシュが起きた。さらに1886年の大陸横断鉄道開通が契機となり、バンクーバーは急速に発展した。
 東京から直行便で約9時間。都市の第一印象を担う空港のデザインが美しい。白い鉄骨とガラスが曲線美を描く全体構造の内部に小さな滝や緑などが配置され、税関など本来無機質なエリアまでも、親しみやすい柔らかな空間が設計されている。ショッピングやレストランなどが並ぶ賑わいのエリアを見下ろす吹き抜けをエスカレーターで一気に階下に降りると入国審査のカウンターがある。パスポートを手に並ぶ行列もまるで公園にいるかのように和やかだ。

針山のようなBCプレイスと隣のロジャースタジアムの間を道路とスカイトレインの線路が手前に向かって伸びる

 ビジネスの中心地であり高層ビルがひしめくダウンタウン。ビジネス街の車道や景色の良い海沿いなど至るところにサイクリングロードが整備されており、ヘルメットと色鮮やかなアウターを身に着けた人々が自転車で颯爽と駆け抜ける。ビルの合間からは壮大な山脈が顔をのぞかせ、目の前のハーバーには真っ白なクルーザーが停泊し、頻繁に水上機が離着水する。対岸のノース・バンクーバーにもビルや住宅が集積し、その背後に見渡す限り美しい山脈が広がる。
 ダウンタウンの中心部から目と鼻の先に400ヘクタールもの敷地を持つスタンレーパークが広がる。ゆっくり散策すれば2~3時間は楽しめる。自転車をレンタルして海沿いのサイクリングロードを一周してもいい。対岸のビル群やイングリッシュ・ベイの美しい夕日を眺めるのが気持ち良い。広々とした芝生を横切って奥へ歩けば、広大な原生林や沼地に迷い込む。大都会から徒歩圏とは思えない静寂の世界だ。ビーバー・レイクには水芭蕉や睡蓮が咲き誇り、水鳥が泳ぎ回る。池を取り囲む原生林には、鳥の鳴き声と砂利を踏みしめて歩く自分の足音だけが響き、苔むした倒木や茂みからリスが走り出る。こうした恵まれた自然の中でのジョギングやサイクリングが住民にとっての日常だ。

変わりゆく命名権

テラス・ワールド・オブ・サイエンス

 カナダで最も人気のあるスポーツといえばアイスホッケーだ。住宅街の路地では子どもたちが草ホッケーを楽しんでいる。プロホッケーの試合のチケットは発売直後に完売し、高額なプレミアチケットが出回る。
 アイスホッケーチームのカナックスの本拠地であるホッケーグラウンドがダウンタウンにある。1995年のオープン以来「GM(ゼネラル・モーターズ)スタジアム」の名がついていたが、2011年秋、通信会社の名を冠した「ロジャース・アリーナ」へと名前を変えた。
 その隣にはこちらも国民的スポーツであるフットボールの巨大なグラウンド、「BCプレイス・スタジアム」がある。もともと1986年万国博覧会のカナダ館として建設された建築物だ。2011年9月まで行われた大規模改修によって全面開閉式の屋根を持つ全天候式グラウンドへと生まれ変わり、巨大なマシュマロにたくさんの針を突き刺したような個性的な外観に形を変えた。

 川を挟んでこの二つのスタジアムと向かい合うように、大きな地球儀状の施設がそびえている。ロジャースと並びカナダで高いシェアを誇る通信会社テラスが、2005年7月にこの命名権を購入し、施設名は「サイエンス・ワールド」から「テラス・ワールド・オブ・サイエンス」へと変更された。
 テラスはまたBCプレイス・スタジアムの命名権を4000万ドル(約34億円)で購入しようとしていた。州の名であるBC(ブリティッシュ・コロンビア)を民間通信会社の名に変更する是非を巡って大きな議論となった。2012年3月、州政府は「住民はBCプレイスという名前に大きな愛着を感じている」として命名権売却契約を締結しないことを決めた。通信企業の勢いの良さは街の至る所で見ることができる。しかし命名権が常に金銭で手に入るとは限らない。市民の間には今も賛否両論があるが、あらゆる名前に街の誇りの部分はやはり残る。安易な命名権売却に一石を投じた一件だった。
 これらの三施設がある地域は、2010年冬季オリンピック開催時に選手村となった場所でもある。シルバーに輝く巨大な地球儀の横をすり抜けるように、スカイトレインの線路と自動車用の道路とが大きく曲線を描いて伸びる。そして幾何学的なデザインの巨大なスタジアムの背後に、オフィスビルや高層マンションが林立する大都会の塊が見える。その光景はまるでスケートボードが空中を飛び交っていそうな、絵にかいたような近未来図だ。さらに冠雪のカナディアンロッキーの山脈が都市全体を取り囲むかのようにそびえている。自然と都市との迫力ある調和だ。


(カナダ)
国名:カナダ面積998.5万km²(世界第2位、日本の約27倍)人口:3,461万人(2011年10月統計)首都:オタワ言語:英語と仏語(公用語)在留邦人数:54,436人(2010年10月)通貨:カナダ・ドル(約80.1円2012年5月7日)
(バンクーバー)
ブリティッシュコロンビア州に属する。行政区分はメトロバンクーバーだが、周辺地域を含むグレートバンクーバーをバンクーバーと呼ぶことが多い。
グレートバンクーバー:人口210万人面積2,877.36km²バンクーバー市:人口64万人面積114.71km²

文:羽田祥子(編集部)

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