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魅惑の大国 インドネシア ~日野自動車に聞く

魅惑の大国 インドネシア ~日野自動車に聞く

日野自動車に聞く
日野モータース セールス インドネシア株式会社 
アドバイザー瀬戸洋泰氏

急拡大する自動車市場

日野モータース セールス インドネシア株式会社  アドバイザー瀬戸洋泰氏

 インドネシアの自動車市場が急拡大している。2010年には過去最高の76万台を記録し、2011年は前年比8.5%の増加が予想され、2015年には100万台に達すると見込まれている。ジャカルタの道路には新しい車が文字通り溢れている。目にするほとんどが、9割以上の販売シェアを占める日本車だ。
 旺盛な国内需要に呼応して商用車市場も拡大を続ける。2007年の中古トラック輸入自由化廃止と排ガス規制導入が、販売台数の伸びを後押しした。

物流を担い、資源国を支える

 日野自動車はフルラインナップの商用車を製造販売するインドネシア唯一の日系企業だ。1982年に現地の自動車会社インドモービルなどとの合弁会社を設立し、2003年に製造と販売を分離させた。販売会社である日野モータース セールス インドネシアのアドバイザーを務める瀬戸洋泰氏に話を聞いた。
「2010年以降、販売台数の伸びに勢いがあり、計画を見直すたびに上方修正をしなければならないほどです」。製造会社の日野モータースマニュファクチャリングインドネシアは、2012年半ばをめどに生産能力を5割向上させると発表した。
 現在最も多く売れるのは物流を担う車種だという。「商用車には何よりまず頑丈さが求められます。小型車も中型車並みの仕事をするのが実態なのです。したがって、期待に見合う耐久性を備えた車両を提供する必要がありますね。今後法の適用が厳格になるにしたがって、現在のここでは小型車需要が中型車や大型車にシフトすると思います」。
 輸送形態が日本のように確立されていないことも小型車需要の背景にある。「日本では、例えば東京~大阪間を高速道路で結び大型車が運搬し、大都市の拠点から各市街地に中型車がハブのように運び、各市街地から各市町村に、そして店舗に小型車が配送する、というシステムがあります。インドネシアにはそうしたシステムがないため、小型車にできる限り多く積んで遠くまで運ぼうとするのです」。
 インフラの未整備も頑丈さを求めるニーズにつながる。「ジャワ島を貫く高速道路もまだできていません。ジャカルタから100キロ走れば一般道路となり、舗装されていても路肩が崩れ落ちているなどの悪条件の道路が続く上、大都市周辺を除けば舗装されていない箇所が多くあります。あらゆる悪条件に耐えられる強靭性が求められますね」。
 物流とは異なるが、カリマンタン島の炭鉱では日野の資源運搬専用車が活躍する。ヨーロッパ勢が多い分野に日本車で唯一日野が参入しているのだ。「最近石炭が採れるようになったスマトラでも活躍しています」。

パワーブランド戦略とサービス網の拡充

日野モータースセールスインドネシア 販売計画

 日野はパワーブランド戦略をとる。業界首位を狙うのではない。2位、3位が存在しえない圧倒的な存在を目指しているのだ。
「この国で本当に必要とされるものは何かを考え、販売網、アフターサービス拠点、修理のための部品供給拠点を大幅に拡充しています。拠点の部品ストックを増やすことで、修理の依頼に迅速に応えられるようになりました。ジャカルタから部品を運んで修理するのでは、時間がかかり過ぎます。途上国では時間とコストの節約のために純正でない部品を使用して車体寿命が短くなることがよくありますが、最近、車を長く使うためにも純正部品を使おうという雰囲気に変わってきました。販売もサービスも顧客のアクセスを向上し、需要があるところにきちんと手を打つということを着実に行っています。またブランドの認知度向上のためにテレビCM放映も開始しました」。

インドネシアと日本の補完関係

 インドネシア人と一緒に働くには国民性を理解する努力も必要だ。
「彼らの多くは日本人のように厳しい規律の中で、整然と物事をこなしていくことがあまり得意ではないように見受けられます。人前で声を荒げたり叱ることを良しとせず、時に婉曲的な表現を好むので、文脈から真意を酌んで対応する必要もあります。遅刻しても『渋滞した』の一言で済んでしまう文化もあり、時間に対する感覚が日本人とはずいぶん異なります。仕事の納期を守るため、毎週進捗を報告し合ってゴールを意識してもらうなどのPDCAを仕組みとして導入しています。日本人としてこの地で働かせてもらっているわけですから、考え方の違いから摩擦が生じても頭ごなしに否定せず、お互いの『いいとこ取り』をして乗り越えるよう心がけています。根は素直で情が厚い国民性なので、『一緒にがんばろう』とひとたび仲間意識が芽生えればとても頼りになりますよ」。
 日本への好感度が圧倒的に高い親日国家、インドネシア。日本との間には絶妙な補完関係がある。「計画性や管理体制は日本人が提供し、インドネシア人がおおらかさを与える。同様に国同士も補完関係にあると思います。日本が技術やビジネスインフラを、インドネシアが資源を持っているのですから」。
 この国の内需は世界から独立して動いており、4種の神器であるオートバイ、冷蔵庫、エアコン、テレビを一つずつ買いそろえている状態だという。
「物流を担うトラックは国民の所有欲を背景に動いているので、需要増加は止まらないと思います。また、将来的な資源不足は確実ですから、資源国という観点でも魅力的な国ですね」。

 製造工場の生産能力5割増のニュースが飛び込んだのは11月8日。インドネシアに関するニュースを目にする日が多くなった。物流を担う商用車の需要がどこまで加速するのか熱視線が注がれる。


取材協力:Ministry of Tourism and Creative Economy, Republic of Indonesia、 ガルーダ・インドネシア航空
文:羽田祥子 川口奈津子(編集部)

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