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魅惑の大国 インドネシア ~インドネシア概論と金融コラム

魅惑の大国 インドネシア ~インドネシア概論と金融コラム

多様性を受容する親日国家

2050年のGDP予測は中国、米国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシアの順で、
日本はその後方に位置する(ゴールドマン・サックスの2009年レポート)。
世界の大国へ序曲を奏でるインドネシアはあらゆる分野で成長の萌芽を迎えている。

 東南アジア唯一のG20のメンバーとなり、新興国の代表格として世界の注目を集めるインドネシア。1000社以上の日本企業が拠点を構え、近年さらに進出の勢いが加速する。親日国家として知られ、英BBC系調査機関による2010年の調査では71%の国民が日本に好感を持つと答えている。また、美しいビーチ、独自性の高い民族文化や料理、世界遺産登録遺跡などの観光資源が世界の人々を魅了する国でもある。
 北米の東西幅に匹敵する東西5110kmの範囲に、赤道に覆いかぶさるように1万8000以上の島が広がる。世界第4位となる2億3750万人の人口は、首都ジャカルタのあるジャワ島(国土面積の7%)にその6割が居住し、ジャカルタ特別州とグレータージャカルタと呼ばれるジャカルタ周辺地域に特に集中している。
 2010年から生産年齢人口が従属人口の2倍を超える人口ボーナス期間に突入した。2030年ころまで人口増加が続くと見られている。住宅の軒先や裏庭には溢れんばかりの洗濯物が吊るされ、崩れ落ちそうなバラックの裏庭にも今そこにある生活の匂いを感じる。ある日本人駐在員は、どんな田舎に行ってもたくさんの子どもが遊んでいることが日本との違いだと感じたと話す。
 日本企業が多く進出する首都ジャカルタでは貧富の差が広がる。ジャカルタの空港でのスマートフォン保有率の高さにまず驚く。外国人宿泊ホテルを狙った襲撃事件を機に外資系企業やホテルの警備が厳しくなり、手荷物検査や金属探知ゲートなど空港並みのチェックがなされるようになった。道路には真新しい自動車やオートバイがあふれる。ジャカルタ州政府の発表によると、2012年末にはジャカルタの道路面積を自動車とオートバイの専有面積が上回る見通しだ。高級ショッピングモールが増え、街中ではさまざまな高級ブランドのバッグを目にする。一方で交差点での信号待ちのたびに、自動車の窓越しに窓を拭く雑巾などを見せて日銭を稼ごうとする人もいる。
 世界最多の2億人のイスラム人口を抱える。敬虔なイスラム教徒は就業中も定時の祈りを欠かさない。日系企業の元社長は、工場建設に際して広い工場建屋の1%にも満たないモスクの建設に最もコストがかかったと苦笑する。デパートにはスカーフにつける華やかなアクセサリーや、体を覆う美しい布などが取りそろえられ、道行くムスリムの女性たちは色とりどりに着飾っている。ただしイスラム教一つとっても信仰の強さには個人差があり、さらに6つの宗教を公認するなど宗教の自由度は高い。ジョグジャカルタにあるボルブトゥール寺院(仏教)とプランバナン寺院(ヒンドゥー教)の世界遺産遺跡には多くの信者が訪れる中コーランが響き渡る。多様性共存の一風景だ。
 民主化から13年、ユドヨノ政権下で経済成長を高いレベルで維持し続けているインドネシアは、石炭や天然ガス、すず鉱やニッケルの鉱物資源など、豊富な天然資源の開発が進む資源国でもある。インフラや教育などの課題を抱えながらもパワーに満ちあふれた若い国は、日本から見て羨ましいほどの前途洋々の未来が待ち受けている。

金融のプロが見るインドネシア

 G20の一員でありASEAN5カ国の中でも順調な成長を遂げているインドネシアは、一党独裁の中国、ベトナムと異なり、政治経済体制は柔軟であり、特にユドヨノ現政権の安定が経済成長を下支えしている。時間当たりの労働コストにもまだ十分競争力が見込まれている。2億3750万人の人口を持ち、しかも2030年以降も増加傾向が続き3億人に接近する予測が出ている(国連)。
 輸出依存型の経済を持つ国々とも違い、巨大な国内市場からの消費需要が期待できる。GDP成長率はリーマン危機後の2009年も4.5%を記録して、大幅な落ち込みやマイナス成長に転じた他の新興国と比べて安定している。2010年の成長率は6.1%、2011年は原油価格にも依存するが6.4%(IMF)から6.8%(アジア開発銀行)程度と予測される。通貨ルピアも同国の安定した政治経済と良好な対外債務返済、そして、将来性を見込んだ先進国からの資本投資に支えられ安定している。ジェトロの調べでは、日系企業が重視するアジアの地域として、日本を除いてインドネシアが一番高い。
 インドネシア経済の強みは、GDPの6割を占める個人消費が旺盛で、諸外国の景気に左右されにくい成長軌道が見込まれることだ。昨年、二輪車販売台数は700万台を超え、多機能携帯電話販売台数も大きな伸びを示している。1998年のスハルト政権崩壊後のインドネシア通貨危機を乗り越えて、2004年から政治パワーを握ったユドヨノ政権が安定的な経済政策を行っている。
 良質の石油産出国ながら石油輸入国でもあることから、インドネシア政府は昨今の資源価格高騰によるインフレーション(同国のインフレ目標は4~6%)を抑制するために、国際価格との差を政府補助金で埋めており、そのことが財政赤字をじわじわと拡大させている。
 しかし、経常収支も資本収支も黒字であり、カントリーリスクは限定されると考えられている。社会構造は、イスラム教徒を頂点とした重層的な民族構造であるが、失業率は7.1%と高い。さらに、成長に欠かせない固定資本形成が圧倒的に不足しており、経済成長に伴いインフラプロジェクトなど外資の導入が期待される。
 天然ガス産出も東南アジア一であり、最大の貿易パートナーである日本への輸出が多い。日本の国際協力銀行(JBIC)は、今後の天然ガスの開発プロジェクトに多くの日本企業が参入できるようにインドネシア政府と覚書を交わした。
 また、用途が広く環境に配慮したアルミニウムへの世界需要に対応して、JBICと日本の銀行・企業グループが、インドネシア化学アルミ会社向けに263億円の協調融資を行い、日本の民間企業が同社の株式を取得することで日本とのビジネス関係も一層強化された。現在のカントリー格付けはBB+格程度だが、今後は安定した経済政策のもとで成長軌道に乗り、一段の格付け格上げが期待できる。
 欧州債務危機の拡大によるインドネシアからの資本流出と社会格差是正の連鎖がリスクだが、アジア開発銀行のインドネシアに対する2012年の予想成長率は6.8%と高く、不確実な世界経済見通しが強まる中で、国際投資家が最も注目している国の一つであろう。
(インフォーマ グローバル マーケット ジャパン株式会社 代表取締役 西村訓仁)


インドネシアMAP国名:インドネシア共和国/人口:2億3756万人(世界第4位)/面積:191万931平方キロ(日本の5倍)/主要都市:首都ジャカルタ、スラバヤ、メダン、マカッサル、スマラン、バンドン/言語:インドネシア語/民族:ジャワ族4割など/宗教:イスラム教89%、キリスト教9%、ヒンズー教、仏教/国家元首:スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領(任期2014年10月まで)/政治:立憲共和制/通貨:インドネシアルピア(100RP =約8.77円、11月9日現在)

日本との関係
名目GDP:7,067億米ドル(2010年、世界第18位)/一人あたりGDP:3,015米ドル(2010年、世界第105位)/GDP支出構成:民間消費57%、投資32%、輸出24%/GDP業種構成:製造業25%、農業15%など/在留邦人数:11,701人(うちジャカルタ特別州6,377人)/進出日系企業:1007社(ジェトロ・ジャカルタ日系企業ダイレクトリー2010年版掲載数)他多数/アクセス:成田、名古屋、関空などから約7時間

取材協力:Ministry of Tourism and Creative Economy, Republic of Indonesia、 ガルーダ・インドネシア航空
文:羽田祥子 川口奈津子(編集部)

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