医療産業都市構想を掲げる神戸市。厳しい時代の突破口として、創薬を目指すバイオベンチャー(以下BV)の集積に向けても環境整備を推進してきた。中でも注目されるBVの一つ「エムズサイエンス」は、先端医療センターのそばで、世界を見据えた新薬開発を進めている。
text: 加藤紀子(編集部)

再編される医薬・製薬産業

 なぜ今BVが注目されるのか。最大の理由として、医薬品業界に激動の時代が到来していることが挙げられる。製薬業界は、世界的にも2010年前後から始まる特許切れを前に、収益構造の改編を余儀なくされているのである。日本では、長期収載薬品(※1)を保護してきた薬価基準制度が、医療費抑制策の一環として今般の事業仕分けの対象となり、今後はジェネリック薬品の本格参入によって日本国内の医薬品市場は厳しい価格競争を強いられることが必至だ。大手はすでに海外での売上比率が3割を超え、海外での販売拠点の整備を急いでいる。国内の土俵だけでは成長が見込まれず、主戦場はもはや欧米市場となっている。

 一方で、近年、ブロックバスター(売上10億ドルを超す大型医薬品)に占めるバイオ医薬品(※2)の比率が増加している。大手が従来得意としてきた医薬品開発手法が変化し、BVが持つ技術に頼るよりほかない、というのが世界的な流れだ。大手製薬会社は膨大な研究開発費の多くを、BVとの提携・M&Aに投入し、最新技術の導入とともに、入手したパイプラインの後期臨床開発、承認取得後の営業・マーケティングを担当する傾向が強まっている。新たな新薬でハイリターンを得るため、従来のビジネスモデルを見直し、ベストプラクティスを目指す。

※1 長期収載薬品
特許が切れた後も高い価格が維持される薬品。日本は薬価を国が定めるため、厚生労働省の既得権益やいわゆる「護送船団方式」のメカニズムが根付いているといわれる。これにより、中堅規模の製薬会社が保護され、競争力のある大手の足を引っ張る要因となっている。一方海外では“Winner takes all.”となっており、企業買収によって市場占有率を上げ、コスト削減を実現した結果、基幹産業として国力増強に貢献している

※2 バイオ医薬品
遺伝子組み換え技術を応用して、微生物や培養細胞に大量に生産させた医薬品

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