世界経済の中心:マンハッタンにおいて、ニューヨーク市立大学院(バルーク・カレッジ)は名門コロンビア・NYUと並び、非常に人気の高いビジネススクールだ。高田博和氏はここで世界中から集まる学生を相手にマーケティングを教えている。約30年近くビジネスの最前線をウオッチし続けてきた高田氏が見るアメリカの今、そしてそこから見える日本のあるべき姿とは。
text & photo: 加藤紀子(編集部)

Baruch Collegeは、マディソン・スクエア・パークに程近い、マンハッタンのダウンタウンにある。ウォール街をはじめ、どこへ行くにも交通の便が抜群のロケーションだ。高田教授のオフィスからはエンパイアステートビルなどマンハッタンの高層ビルが一望できる

金融危機がもたらした学生の志向の変化

「昨年のリーマン・ショック以前、金融業界で成り立っているマンハッタンは異常ともいえる状況でした。実体を伴わないマネーゲームをやっていましたからね。
 日本のバブルでは、一部の人々が土地の高騰によって巨額の富を得ましたが、こちらのバブルはそれどころではなかった。国民全体の価値観を根本から変えてしまい、さらにはそれが国の体制にまで及んだといえます。ようやくこのショックによって軌道修正し始めたのではないでしょうか」。 
 学生の志向にも変化が見られたと言う。
「リーマン・ショック以前は、うちの学生の多くも金儲けのことしか考えておらず、ほとんどが金融業界で働くことを希望していました。ところが今年の春の授業から大きく変わりました。起業したいという学生が再び増えてきたのです。中には非営利組織として社会貢献したいという者も少なくない。皆、人生のクオリティを意識するようになってきたように思います」。
 しかしながら雇用面では、まだアメリカはブリーディング(=血を流している)な状況だ。失業率は9.7%(米労働省による8月の雇用統計)と依然、高水準である。
「でもね、アメリカの社会ってすごくタフなんですよ。だから僕は楽観視している。アメリカはすぐにまた元気になりますよ」。
「タフ」たり得る――その源泉は「起業家精神」にあると高田氏は見る。

常に新しいものを生み続けるアメリカ

「日本の産業構造には、大企業・中小企業・下請けといったハイアラキカル・システムが依然存在しています。一方アメリカでは、大企業よりはむしろ中小企業や個人企業の存在感が大きく、全体のシステムを縦型よりは、むしろホリゾンタルであると捉えることができる。このことは米国の歴史を見るとよく理解できます。つまり、欧州の閉塞的な社会から脱出すべくアメリカに新天地を求めた先人達にとっては、大企業依存よりは、自力で起業し成功するドリームを追い続けてきたわけです」。
 常に多くのスモールエンタープライズが生み出され、マイクロソフトやアップル、グーグルもここから生まれ、成長した。年齢、出自、性別などは一切問われない。アメリカの人々は、先人達と同じように自らの夢を成功に導きたいと、常に新しいものを生み続けるパワーを今なお持ち続ける。

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