京都議定書、温室ガス削減、チームマイナス6%など「なんとなく知っている」気候変動にかかわる言葉は増えたが、きちんと理解しているだろうか。気候変動対策を大きな使命のひとつとして掲げるJICAの気候変動対策室 須藤智徳室長代理にビジネスパーソンが知っておきたい気候変動の諸問題をレクチャーしていただいた。
text: 羽田祥子(編集部) 資料提供: JICA

図1:循環炭素の仕組み(IPCC第3次評価報告書2001)

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温暖化の仕組み

 地球温暖化の原因は、大気中の温室効果ガスの濃度が増加することです。ポイントは地球上の物質の量は大きくは変わらないという点。地球というのは閉鎖空間なので、隕石が落ちてきたりしない限り地球上の物質量は増えません。またロケットを飛ばしてどんどん物質を捨てない限り、物質量は減りません。
 様々な物質は地球上で循環しています。そのうちのひとつが炭素で、酸素と結び付いて二酸化炭素となって大気中に放出されます。そして植物などに吸収され炭素となり、長い時間を経て石炭や石油などに変化します。人の体にも炭素が含まれています。
 地球の表層面では炭素のほとんどが海に含まれています。陸上では土地や動植物に含まれます。大気中の炭素量は、全体からみるとわずかです。大気中の炭素が自然に吸収される量が年間31億トン。そして石油やガスなどを燃やすことで人為的に排出される炭素量が年間で63億トン。つまり差し引き年間32億トンが毎年大気中に残って増えているということになりますね。図1を見てください。

 通常、大気中に含まれる炭素量は多くありませんので、それが少し変化するだけでも気候に大きな変化を与えます。また、温暖化によって海水温が上がると海洋中の二酸化炭素が空気中にどんどん排出されてしまいます。たとえば、冷えているビールは炭酸を含んでいて美味しいですが、温かいビールはあっという間に炭酸が抜けて美味しくなくなってしまいますね。それと同じです。そしてそれが温暖化に拍車をかけることになります。
 IPCCでは専門家が科学的見地から気候変動について検証、評価を行っています。そして大気中の炭素量の増加の原因は人為的なものであることは間違いないと発表しました。
 このように、温暖化は炭素の循環と大気中の炭素が増えることで進行していきます。このまま温暖化が進むと気候が変化し(1)砂漠化(2)大気循環のパターン変動による干ばつ、洪水、熱波、台風などの異常気象多発 (3)海面上昇(4)氷河後退による水資源への影響(5)気候の亜熱帯化による感染症の増加 などが起こると予想されています。炭素の循環について理解しておきましょう。

温暖化対策は「緩和」と「適応」なし

 ただし、今アクションを起こしてもその効果が現れるのは100年から200年先といわれています。この時間軸の長さが気候変動問題の難しさのひとつですね。  92年の国連環境開発会議(リオサミット)ではリオ宣言が採択されました。その中で、たとえ不確実性が残っても積極的に対策を講じ、予防していこうという「予防原則」という考え方が採択されています。
 気候変動対策は大きく2つ。(1)「緩和」温室効果ガスを削減すること(2)「適応」今後の温室効果ガス増加に向けて備えをすること。現在の日本では緩和対策が前面に出ていますね。頻繁に耳にする「マイナス6%」も排出の削減ですから緩和のひとつです。
 近年、台風が大型化し、発生地域が北に移動しています。この8月には日本近海でも台風が発生しましたし、10月には大型台風が日本列島を縦断して大きな被害を与えたのは記憶に新しいところですね。そろそろ、日本でも気候変動への適応を検討しなければならないでしょう。「緩和策で発生量を削減しつつ、適応策で備えをする」。いずれもコストがかかりますから簡単には進みませんが、対策の基本はここにあります。

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