JICAは世界各地で地球環境を守る活動を行っている。
美しい自然に囲まれた南洋諸島の小さな島国も、時代の変化とともに島国特有の問題を抱え、困難な課題に直面している。高い技術力を持つ島国である日本のごみ処理技術を活用し、南洋諸島の島々の生活に貢献するJICAの取り組みを追った。
text: 羽田祥子(編集部) 写真提供: JICA

美しい海に囲まれたサモア

美しい島国サモアのごみ問題

 南太平洋に浮かぶサモア諸島。小学生のころ多くの人が歌ったであろう、青い空と青い海に囲まれた常夏の島である。サモアには※1SPREP(Secretariat of the Pacif ic Regional Environment Programme)の本部がおかれ、また南洋諸島諸国の中心地としての役割も果たしている。JICAの地球環境を守る活動は、この周辺地域の生活を力強く支えている。
 美しい海に囲まれた美しい島国は、概して特有の課題を抱えている。人口が少なく国土が狭く産業資源が限られ、経済基盤が脆弱であること。国土が散在し、電気・水道・教育・医療などの社会サービスを全国に広げるのが難しいこと。海に囲まれ気候変動の影響を受けやすいこと。そして、ライフスタイルの変化に伴い、小さな国土での処理能力を超えた量と質のごみが発生していることなどが挙げられる。

 もともと自然の恵みで生活していた島国では、ごみを処理する必要はなかった。限られた人材や財源を、より重要度の高い問題に投入してきたのである。
 廃棄物はすべて「オープンダンピングサイト」と呼ばれる野積みの投棄場に捨てられる。しかし、ごみには医療廃棄物が含まれ感染のリスクがあり、ごみ山からメタンガスが発生して発火の危険もある中、貧困層がごみをあさり、またごみから出る汚水が地下水や海岸を汚染する。
 廃棄物は小さな島国にとって大きな問題となった。土地が狭く埋立地を確保できない。海洋で分断されトラックで輸送できない。外から多くのモノが入り、出口がない一方通行であるためその場で朽ち果てる。リサイクルに際しても収集して輸送するコストが高い。これらは沖縄の離島が抱える問題と共通する。違いはある。沖縄には地域振興のための補助金が出るため、高価な焼却場を持つことが可能だが、大洋州の島々にはそれがない。

福岡方式の導入で生まれ変わったサモアのタファイガタ処分場。林に囲まれた緑の処分場からは悪臭が消えた

「福岡方式」をサモアへ

 サモアでごみ問題が深刻化したのは90年代以降である。市場経済化と都市化が進み、生活雑貨や食料品の輸入が増え、プラスチックやビニール袋など自然に返らないごみが溢れ始めた。ごみ投棄場は不衛生で危険な状態となった。  日本は、00年の※2太平洋・島サミットにおいて「宮崎イニシアティブ」を発表し、環境問題の一環として大洋州地域の廃棄物対策に取り組む姿勢を明らかにした。JICAは無償資金協力でサモアにSPREP教育・訓練センターを建設し、専門家を派遣して域内の人材を集めて研修を行った。この研修所は今でも域内の会議などに有効に使われている。  00年12月、JICA国際協力専門員の天野史郎氏は専門家としてサモアに赴任した。前職で、アメリカでの廃棄物処理に携わってきた天野氏は、その奥深さに興味をもったという。「廃棄物管理は衛生工学・土木工学などの技術分野とともに、環境教育や経済学など幅広い分野に関係しています」。サモア赴任後の最初の現場がタファイガタ処分場である。「はじめはあまりのひどさに途方に暮れました」。

 SPREPに配属された天野氏は、まずサモアの廃棄物担当者に研修を行うとともに、事例を積み上げる作業を行った。「まずは危険な状態にあったサモアのタファイガタ処分場の構造改善を4カ月かけて行いました。ごみの分解を促進する、『福岡方式』と呼ばれる準好気性埋立構造を大洋州で初めて取り入れ、その運営管理も教えました」。
 福岡方式とは処分場から汚水を速やかに排水し、同時に自然の空気を取り入れてごみの分解を促進する技術である。日本では処分場の標準的な構造として普及している。構造が簡単であること、維持管理に高い技術を必要としないこと、竹やドラム缶など現地の資材や廃材が利用でき高価な材料を必要としないことなどが大きな特徴である。ごみの分解をできるだけ早くする方式であるため、汚水の水質が他と比べて良く、悪臭もない。

タファイガタ処分場で構造改革の指導を行う天野氏(中央)

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