JICAの多岐にわたる活動の中で重要なもののひとつに、都市・地域開発がある。
日本では六本木など首都圏の都市開発などをイメージするが、それとは全く異なる。世界各地で行われているJICAの都市・地域開発の援助の現場を追った。
text: 羽田祥子(編集部) 写真提供: JICA

円借款で整備された第2メコン国際橋。日本企業のほか、タイ・ラオス両国の企業や技術者が工事に参加した

都市とは経済を回す原動力

 都市とは途上国にとって社会経済文化の中心であり、経済を回す原動力である。人間が生活するための場所を整える必要があり、急激に都市化が進むことによる歪みの解決も、開発から遅れた地域の問題を解決するための都市計画作りも、いずれも都市開発の活動に含まれる。
 発展著しい開発途上国においては、発展に伴って次々発生する問題に対処する必要がある。ゴミ処理、水質汚濁、洪水など、様々なトラブルシューティングが必要だ。日本における都市開発と異なり、途上国におけるそれは、計画と実際、需要と供給のギャップを埋める作業が多く求められる。
 開発の遅れた地域においては、長期的な計画を設定して実行しつつ、同時に現在目の前で生活している人のインフラを急いで整える必要がある。

発展著しいメコン地域

 近年メコン川流域の国々の成長が著しい。カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスの近年の経済成長率(07年)は4.8%(タイ)~10.2%(カンボジア)と軒並み高い数値を示す。JICAは地域の発展のために、長期的計画のもと多くの援助を行ってきた。
 JICAは地域の成長を牽引する経済インフラの整備に力を入れてきた。ヒト・モノ・カネの自由な流れを推進するため、国をまたいだ「経済回廊」の実現を目指している。
 東西経済回廊はベトナムのダナンからラオス、タイを経てミャンマーに続く約1450キロの道路である。タイとラオスをつなぐ第2メコン国際橋などJICAの支援によるものが多く含まれる。06年12月に完成したこの国際橋により、バンコクからハノイまで海上ルートで約2週間費やしていた輸送が陸路で約3日に短縮された。
 これと併せ、バンコクとプノンペン、ホーチミンを結ぶ南部経済回廊と、中国雲南省とバンコク、ハノイをつなぐ南北経済回廊が整備された。この3本の経済回廊の完成により、輸送時間の短縮とコスト削減、開発が遅れた内陸部の農村開発や、回廊周辺地域の開発の進展が期待されている。

ラオス日本センターでパソコンを学ぶ修行僧。メコン地域諸国はかつて社会主義体制下にあったため、市場経済発展を担う人材育成が急務だ

南部スーダン・ジュバのナイル川流域。不衛生な水の利用でコレラなどが蔓延するため、JICAは安全な水の確保のための都市給水計画を進めている

衝撃的だったスーダン・ジュバ

 国際協力専門員の石渡幹夫氏は、世界各地で都市開発にかかわってきた。南スーダンの中心であるジュバにはJICAが06年から援助を行っている。「長くこの仕事をやってきましたが衝撃的な光景でした。足掛け50年間内戦状態だったためすべてが壊れていたのです。都市のサービスが何もありませんでした。水道がない、舗装道路がない、電気は自家発電。21世紀にこのような街があることが衝撃でした」。
 平和構築としての作業も含むこの地域の都市施設について計画を策定した。まず水道を引き、道路や橋を直す計画を作るとともに、街中を流れるナイル川に港を造った。「街から外に出る道路が壊滅していました。橋は落ち、地雷が埋まっており、道路が使えません。川に港を造ることで物資を輸送できるようにしました。比較的発展している北部スーダンからナイル川を経由して運ぶのです」。
 10年先、20年先を見据えての計画とともに、現在困っている都市の最低限のサービスを整える手助けが必要となる。アフガニスタンのカブール同様、戦争で壊滅状態となった都市の最初の立ち上げである。「今後人口が増えて街が広がることなどを想定して計画を立てます。ジュバはいずれ南部スーダンの経済中心都市として成長が見込まれています。現在、北と比べて南スーダンは立ち遅れていますが、もし南スーダンが独立すれば、国を支える首都として機能していくはずです」。

スマトラ沖大地震の復旧
スリランカ、モルディブの実例

 壊れた都市機能を直し次の災害に備える支援も行う。スマトラ沖大地震後にはインド洋周辺国が支援対象国となった。
 モルディブでは、ほぼ毎年高潮の被害があったマーレ島に、大地震の前にJICAの援助で堤防が建設されていた。この援助が全島民の命を津波から守った。一方、他の島々ではこの津波により多くの子供が亡くなり、地震後には様々な防災支援が行われた。
 スリランカでは、津波を契機に防災の役所、防災省ができた。「それまで小さな役所はありましたが、ほぼゼロから立ち上げた状態だったので、人材のトレーニングを重点的に行いました。専門員が現地で指導し、また現地スタッフを日本に呼んで防災教育をしました」。地震、台風など災害の多い日本ならではのノウハウの積み上げは、世界に大いに貢献しているのだ。
 洪水の予備警報のシステムを整備し、大雨洪水警報をを出して逃げる訓練もしている。「津波観測データは太平洋の観測センター送信する予定ですが、現在は暫定的に日本の気象庁が観測・データ送信しています。24時間交代で見張って観測して、地震があるとFAXを送るという地味な作業ですがほとんど知られていません」。
 防災分野における日本の技術は世界でも圧倒的に高いという。季節ごとの災害の経験がそのノウハウをさらに高めている。「日本人は災害対策の大切さが身にしみて分かります。欧米で水というと井戸を掘るものだと思っていますが、日本人には、水がないのも困るがありすぎるのも困るという治水の感覚が根付いています。都市化が進むと洪水が起きやすくなりますので、日本の技術を大いに生かすべき分野だと思いますね」。
 主に支援対象国となるアジアとアフリカ諸国だが、地域によって支援内容は異なる。「アフリカだと洪水対策よりもインフラの整備が重要視されます。アジアは土地が低いところが多く、どこも洪水問題を抱えていますね。渋滞・道路交通問題は共通の問題です」。

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