初代インサイト発売から10年。
ホンダが考える自動車の次の100年に向けた戦略とは?
株式会社本田技術研究所・関康成氏に話を伺った。
photo:t.SAKUMA 
text:永野 幸(アクビ・インタラクティブ)

株式会社本田技術研究所
四輪開発センター インサイト開発責任者
関 康成氏

「だって高いんだもん」

―インサイト開発のコンセプトを聞かせてください。
関氏(以下S)ハイブリッドは環境に良い・燃費が良いと誰もが知っているけれど、なぜシェアが伸びていかないのか。そこを紐解いていった時、お客様から最初に返ってくる声が「だって高いんだもん」でした。どんなに環境に良いものでも、使っていただけなければ何の意味もありません。ハイブリッドカーだけれどもみんなが買える、少なくとも購買の土俵に乗せていただける価格をターゲットにしよう、というコンセプトで開発を始めました。また、ハイブリッドには、価格の面からだけでなく、ある種特別な車、自分達に手の届かない高嶺の花といったイメージがあります。我々開発チームには「特別な車だけは作らないようにしよう」という合言葉があります。通常のガソリン車に乗っていたお客様がなんの不安もなくそのまま乗り換えていただける車でないと普及しないと思ったんですね。ですから、変な言い方ですが「普通の車にしよう」と。

初代インサイトから180度の方向転換

―開発の中で苦労されたところは?
S)ひとつはコスト、もうひとつに車重。それに加えて、燃費と走りのバランス、つまり燃費がいいからといって走らない車には絶対しない、ホンダのDNAをどう入れていくか、というこの3つです。
―コストの面で200万円を切った価格は大きな魅力ですね。
S)初代インサイトは、とにかくホンダの持っている技術力をすべて燃費に注ぐという考え方で作られていました。「燃費が上がるのであれば何でもやる」という車なので、ツーシーター、車を軽くしたいがために総アルミのボディです。初代インサイトは生産されている間ずっと世界一の燃費を誇っていましたが、残念ながらお客様にはあまり注目していただけていなかった。それに対して今回のインサイトは、同じコンポーネントで同じハイブリッドの構成ですが、180度観点を変えました。「ハイブリッドをお客様に使っていただくためにできることは、何でもやる」。燃費だけを追い求めると高くなっちゃうんです。ですから、我々はコスト軸を横に、燃費軸を縦に取り、あるところよりも価格が高くなるものは使わない、と技術の整理をしながら開発を進めました。

1999年に発売された初代インサイト

―具体的にどのような部分のコストを削ったのでしょう? S)ハイブリッドシステムにおいて高コストなものは、モーターとバッテリーです。モーターは効率を同等に保ちながらも、性能を高めるために必要だった高価な希少金属を減らすことに成功しました。バッテリーは、先行の開発の中で従来のものよりも3割ほど性能が上げられそうなニッケル水素電池が作られていました。それを使ってとにかく本数を減らしました。またハイブリッドシステム自体を小型化していくということは車重の面でも重要でした。シビック ハイブリッドのシステムよりも小さく軽いが、シビック ハイブリッドと同じ走りの性能を持たせるということを目標に置いて、システムの簡略化、軽量化、低コスト化を進めました。

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