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けいこ不足を幕は待たない 恋はいつでも初舞台

けいこ不足を幕は待たない 恋はいつでも初舞台

ビジネスに型通りのトレーニングはない。その状況にいかに対応するかが重要だ

ビジネスに型通りのトレーニングはない。その状況にいかに対応するかが重要だ

めまぐるしく変化する現代

 さて、ギリシャ神話に続いては演歌である。先月号から少し趣が変わったのは、編集部からの注文で“古典とビジネス”という観点から書いてほしいということが元になっている。
 そこで先回ではギリシャ神話を引っ張り出したのだが、今回は演歌の古典・梅沢富美男の『夢芝居』である。
 昔は日進月歩と悠長なことを言っていたが、今は実にめまぐるしく事態は変化していく。ドッグイヤーなどといって、かつては7年かかって推移したことが、今では1年で変わってしまう。そのうちに“納棺年”などというものが言われるかもしれない。49年で変化したものが1年で変化するのだ。
「昨日の敵は今日の友」などということは暢気すぎる。昨日のJV(ジョイントベンチャー)パートナーが今日の敵となることだって十分あり得る。これらの状況で、これまでの経験から何らかの結論を導き出そうとしても、解は見つからない。そういう時代なのである。
 もちろん、経験が豊富であれば、それだけ解を見つけることが容易であることは間違いない。しかし、それも過去に縛られたり成功経験に酔っていたりすると自滅する。
 企画にしても、マーケット戦略にしても、すべて白紙から始めなければならないようなケースが多すぎる。結局、これらのことを克服して新しい手段を見つけていかなければならない。
 以前は方法と中身は別に考えるべきだという考えが支配的であった。すなわち一種の「方法論」が確立していれば、あとはそれに個々の事案を当てはめるだけということがかなり有効だった。演繹的手法とでも呼べるかもしれない。学校の優等生の最も得意とするところであった。

一つの実体として考える

 例えば、輸送手段の競合を考えてみよう。かつて自動車は皆ガソリンで走るものだった。その原理原則はどの自動車メーカーでも同じであった。あとは性能、デザイン、価格、そして昨今ではブランド力やイメージといったものが加わってきたのだが、根本においては日産もトヨタも同じであった。
 ところが、最近ではガソリンばかりでなく、ハイブリッドや電気という新たな動力・燃料も考慮に入れなくてはならなくなった。こうなると「輸送手段」に加えて、エコとか経済性も考慮に入れなくてはならない。
 長距離輸送にしても同じである。東京~大阪間が「のぞみ」で2時間半で結ばれると、航空会社にとってはライバルとなる。航空と鉄道は、現在、東京と青森や秋田の間などで猛烈な争いとなっている。
 今までは考えてもみなかった情勢において何かを考えるときに必要なことは、「方法」と「中身」を区別することなく一つのエンティティ(実体)として考えることかもしれない。
 とにかく、ビジネスは“鬼が出るか蛇が出るか”の世界に否応なく組み込まれていってし
まっている。
 こういう時には常に不安を抱えて行動するのがよいのか、あるいはもう出たとこ勝負で気楽に構えていればよいのかは分からない。
 不安と危機感の持続=サバイバルと言った人もいるが、それではノイローゼになってしまう。
 とにかくこの時代、恋もビジネスも常にけいこ不足で対応しなければならない。いつも初舞台のつもりで。


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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