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はじめに数字ありき

はじめに数字ありき

経営の基礎となるのは数字。「数字に弱い」では企業人失格だ

財務諸表を読んで企業の裸を見る

 一昔前までは、数字は専門家(公認会計士や会計事務所)にまかせ、経営陣はものづくりや営業、企画に専念するという風潮があった。
 しかし、最近は企業の存在感を示すために上場する企業が増え、また、資金を求めての上場も増えている。上場は企業にとっていろいろな意味で好ましいものであるが、同時に株主に対する責任が大きくなることを忘れてはならない。
 株主や株主候補が会社を評価するのは、一番が財務諸表である。財務諸表を通じて企業の状態をまず第一に推し量る。風評、あるいは業界筋からの情報なども重要であるが、一番ものをいうのは、やはり財務諸表である。
 今ここで、財務諸表とは何か、流動比率はどうあるべきかとか、なぜ資本金は貸方勘定なのかを論議することはしない。しかし、そういうことを理解しないと、財務諸表は読めない。財務諸表からは資本金回転率や、在庫回転率も読める。そういうものに着目するようになると、おぼろげながら企業の実態が見えてくる。
 企業に関係する以上は、たとえ社員としてであれ、取引先としてであれ、その対象企業の財務諸表は読んでおかなければならない。
 社員としてであれば、「今ウチの企業はどんな具合なのだろう、大丈夫なのかな?」といったことであろうし、取引先ならば「売掛金が××円もあるが、回収できるのかな?」といった具合にである。
 特に現代のように、いろいろな情報によって企業業績が左右される場合はなおさらである。
 またこのような時代においては株主構成も重要である。かつては三井とか三菱といった「財閥系」ということの結束もあったが、今やそういう「しばり」は甚だ希薄になっている。会社名に「三井」とか「住友」と付いていても、それは企業を判断・評価するうえでの参考にはほとんどならなくなってしまった。
 だからこそ、企業の裸の姿を見るために、財務諸表を読まなければならないのである。

数字を見る基礎「簿記」

 そのためには数字に強くならなくてはならない。数字に強くなるということは、数学もある程度できなければ困るということだ。大学に入っても分数や小数の割り算・掛け算ができないのが普通であってはならない。「数字の表を見ていると頭が痛くなる」ようでは企業人失格なのである。
「俺は営業が得意なのだから売ればいいのだろう」というのは独りよがりだ。売った先が倒産でもすれば、何のための営業か!
「俺は技術者だから、良いものを作ればよい」と言っても、膨大な開発費をかけて売れもしないものを作っても仕方がないのである。
 だからこそ、数字に強くなる必要があり、企業の姿を映す財務諸表を見る必要があるのだ。そのための基礎としてどうしても必要なのが、「簿記」であることも銘記してもらいたい。独立して青色申告をするにも簿記の知識は必須である。
 簡単な簿記が理解できるのとできないのとでは、企業人として、雲泥の差になるのである。


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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