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コンサルタントを掃いて捨てる

コンサルタントになるには十分な経験と知識が必要だ

2種類のコンサルタント

 相変わらずIT業界は、就職先として人気のようである。かなりの論理的思考が要求される業界であるので、この業界に人気があるというのは喜ばしいことである。
 私事で恐縮だが、IT業界で長いこと働いてきて、新入社員の面接などにも駆り出されてきた。その際、新卒の人たちが「コンサルタントになりたい」と言うのをしばしば耳にして、驚いたものであった。まぁ、しまいには、耳にタコで慣れてしまったが。当時の我々の世代が「コンサルタント」という言葉で考えていたのは、一芸にも二芸にも秀でていて経験豊かで、他人を指導することができる人か「口先だけは達者でゼニが稼げる人」ということであった。(「コンサルタント」の悪口を言い始めるとキリがないのでこのへんで)
 新卒の人たちが後者を考えていたとはやや考えにくいので、意図していたのは前者であろう。しかし、学校を出て2年や3年でコンサルタントになれるわけはない。世の中でコンサルタントを必要としている人たち、あるいは企業は、その道で何十年も苦労を重ねてきた人たちである。
 たしかに企業は、マンネリズムに陥ったり、新しい視点を見出せないこともあるかもしれない。だが、それを指摘して、助言を与えるのには、やはり、十分な経験と知識が大前提なのである。また、そういう学生の意図を見抜いて、安易に名刺に「コンサルタント」と刷らせる企業もあったことは確かである。

実行するのは誰?

 私はこういう「コンサルタント志望」の裏側には「現実、現業、現場からの逃避願望」が含まれていると考えている。
 当時(かなり昔になるが)少なくとも私の知る限り、コンサルタントには「成功報酬」はなかったと思う。換言すれば「報告書や提案書を提出してナンボ」の世界であったようだ。報告書通りにやって失敗しても、コンサルタントは何の責も負わない。すなわち「提言」するのはコンサルタント、「実行」するのはその顧客という図式があったように思う(あくまでも私見ですので、その点はご了承ください)
 最近は、提案書通りに実行して成功したら、コンサルタント料のほかに、利益の何%かを報酬として頂くというコンサルタントが出てきたと聞く。これこそ本当のコンサルタントであり、どう逆立ちしても、駆け出しの新人がなれるものではない。
 イタリアの小噺にこういうのがある。
 鮫に追われて離れ小島にたどり着いた兎は、どうしたらよいかわからず途方に暮れていた。そこへ鷲が飛んできて、兎にこう助言した。「空を飛んで帰ればいい」。
 兎は答える。「何を言ってるんだ、私は飛べないんだよ」。
 鷲は傲然と言い放った。「俺はアイデアを提供したんだ、それを実行(implement)するのはおまえだよ」と。
 イタリアの同僚からこの話を聞かされたのは、もう40年くらい前のことだが、学生の皆さんが口々に「コンサルタントになるつもりです」というのを聞きながら、この小噺をいつも思い出していたものである。


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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