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「私、失敗しないので」「それ、医師免許がなくてもできる仕事」大門未知子

「私、失敗しないので」「それ、医師免許がなくてもできる仕事」大門未知子

優れた技術を持てば、一匹狼であっても生き残れる可能性は高くなる

EXCEL程度ではどうしようもない

 荒唐無稽ではあるが、2012年10月18日からテレビ朝日系列で毎週放送されたドラマ『Doctor X~外科医・大門未知子』は実に面白かった。ご覧になった方も多いのではなかろうか。
 とにかく「そんなのアリ?」と言いたくなるような外科医としての技術力と性格で居並ぶ権威ある人たちを痛快に振り回していく。実際の社会ではあり得ないようなことなのだが、実に痛快であった。「痛快」といってもおそらく「技術者」の皆様には痛快に映ったであろうが、旧弊な方々や、権威主義の方々には不愉快に映ったに違いない。
 私は一匹狼の技術者(優れた技術を持っていることが前提だが)が好きだ。よほど変な性格でない限りサヴァイヴァルできる可能性が高い。
 本連載の第17回では(2010年6月発行)では「専門領域を持たないジェネラリストの宿命」ということを書いた。そこでは産経新聞の記事を引用して「業種にもよるが、スペシャリストはその企業にとって必要不可欠な存在。一方、ジェネラリストはある程度、社内で代替がきく」と申し上げた。
 昔から「手に職を持つ」ということはよく言われてきた。上記の産経の記事でも「スペシャリスト」というのは技術者のことだ。
 技術者といってもメスを持って手術をするとか難しいシステムを作り上げるとかいうことばかりではない。例えば広報の仕事で、ジャーナリストと仲良くなり、思っていることを書かせる能力だって立派な技術だ。何も理科系に限ったことではない。
 スペシャリストは分野が非常に専門的に狭く、かつ需要が多いほどよいことは当然だ。いまどきEXCELができるから程度ではどうしようもない。

優れた技術を持てば生き残れる

『Doctor X』の大門未知子は並外れた技術力を持っている。口癖は「私、失敗しないので」という傲慢なもの。でも本当に失敗しないのだから、一目置かれる。性格は一般の社会では全く受け入れられないものだ。ちょっと医師としての本来の仕事から外れたことを頼まれると「それって医師免許がなくてもできるでしょう?」と言って取り合わない。
 私もコンピュータ技術者もどきで生きてきたが、彼女は理想像だ(ということは私も性格が悪いということなのかもしれない)。そして彼女は完全な一匹狼。実際には今の医学界でもビジネス界でも一匹狼がサヴァイヴァルできる余地は少ないのだが、このストーリーは面白い。
 これに対してもう50年くらい前になるであろうが山崎豊子が『白い巨塔』という小説を書き大ヒットした。
 主人公の財前五郎も私は好きだ。彼は優れた技術を持つ点では同じだが、大門未知子とは違い、名誉や昇進を追求する。そのなりふり構わない手段は目を覆うばかりだ。結局、財前五郎は優れた癌の手術医ではあるが自分の癌を早期発見できなくて死んでいく。
 だけどこの二人は性格が完全に異なるにもかかわらず、私にはとても魅力的に映る。それは何よりもこの二人が「他人をはるかに凌駕する技術、それも需要が非常に多い技術」を持っているからだ。しかも二人とも性格はひねくれている。要するに「イイヒト」ではない。「イイヒト」はいずれ利用されやすい。男性が女性から「あなた良い人ね」と言われたら「あなたは男として魅力的でない」ということだ。
 それはともかく、優れた技術を持っていれば、生き残れることを示している、それをこの二つのストーリーに見ることができるというのが私の解釈だ。余人の許さない技術を持つ、サヴァイヴァルには最適のことではなかろうか。
 60の手習いという言葉があるが、技術の習得を始めるのに遅すぎることはない。何か考えませんか?


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリック)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時にKDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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