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転職を考える

グループで2万人削減を発表した日産。いつ何が起こってもおかしくないビジネスの現場では、いつでも高く売れる自分自身を準備しておくことが必要だ(Photo:ロイター/アフロ)

グループで2万人削減を発表した日産。いつ何が起こってもおかしくないビジネスの現場では、いつでも高く売れる自分自身を準備しておくことが必要だ(Photo:ロイター/アフロ)

ビジネスマンは「商品」 自分自身を高く売る

 春も間近、皆様いかがお過ごしでしょうか? 「派遣村」ができるやら、正社員も職を失うやら、騒然とした年末のことはよく覚えておいでと思います。
 私は「100年に一度」というかなり恣意的なフレーズには賛成できません。第二次世界大戦で敗戦の憂き目を見ましたが、あの時はこの程度ではなかった。あれは100年どころかたった60有余年前のことです。また、アメリカの大恐慌だってたかだか80年前のことですから「100年に一度」などという言葉に騙されてはいけません。この程度のことは、いつ発生してもおかしくはないのです。
 そうはいってもビジネスマンやサラリーマン(「サラリーマン」という言葉は和製英語です)にとって大変な時代を迎えていることは間違いありません。望むと望まざるにかかわらず、それまでの職場を離れることになれば、当然、転職や職探しをしなければなりません。
 実はこの問題は、この連載をお引き受けした時に最初に浮かんだことでした。「転職」に極意があるとすれば、それはいつでも高く売れる自分自身を準備しておくことだ、というのは常々思っていたことだからです。そしてビジネスマンとはビジネスの世界においての「商品」であると認識しなければなりません。
 終身雇用制度が崩壊した今、割り切りが必要なのです。

不景気の転職で問われる真のビジネス力

 ビジネスマンとして、最も重要な心掛けは「いつでも転職できる準備をしておくこと」にほかなりません。
 一度、新入社員の歓迎会で「いつでも転職できる社員になれ。この会社だけでしか通用しないようではだめだ」と挨拶をして、人事部(時として「ヒトゴトブ」と読むこともあります)あたりから、いやな眼で見られたことがありました。しかし、この主張に間違いはありません。特に外資系企業の場合、いつ何時「明日から出社に及ばず。今日中にできるだけ早く私物をまとめて退社すること。今からは会社の電話を使ってはならない」と言われるか分かったものではありません。
 そのためにも、自分の得意とする分野の深い専門化、自己研鑽、同業企業とのコンタクトと自己PR、ヘッド・ハンターとの接触は大事なことなのです。もっともヘッド・ハンターの中には口が軽かったりする者もなきにしも非ずですから、注意が必要です。
 これは聞いた話ですが、昔「虚無僧」の前に提げた箱には「明暗」と書いてありました。その意味は「明刀」(明るい方から討ちこまれる刀)に対しては「明刀」で討ち返す、「暗刀」に対しては「暗刀」で討ち返すという心構えのことだということです。すなわち常時、四方八方に気を配り、常にどういう「刀」が飛んできても、対処する心構えを忘れてはならないという戒めとだと聞きました。
 現在、ビジネスという戦場で戦っている皆さん、「そんなことは分かっている」とおっしゃるかもしれませんが、一瞬の隙に今回のような未曾有の経済崩壊もあるわけですから、油断は禁物です。

 転職を経験されている方々も多いと思われますが、真のビジネスの実力は不景気の際の転職で発揮されるということを、申し上げたく思います。


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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