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上流を目指そう

「伝説の経営者」と呼ばれたGEの元最高経営責任者。米国のビジネス誌『フォーチュン』では「20世紀最高の経営者」に選ばれた

「伝説の経営者」と呼ばれたGEの元最高経営責任者。米国のビジネス誌『フォーチュン』では「20世紀最高の経営者」に選ばれた(Photo:ロイター/アフロ)

目指すべきは上位層のビジネス

 上流を目指そうといっても、ハイソな社会を目指そうということではない。毎日のようにあちこちのパーティーに顔を出して、きらびやかな人たちと付き合うというのも、悪くはないかもしれないが、お話したいのはビジネスに関してである。
 コンピューター関係の方ならご存じと思うのだが「OSIモデル」というものがある(現状これがどの程度の役割を果たしているかは、現役を離れて長時間経過しているので知らない)。このモデルにおいては、最上位層の「アプリケーション」から最下位層の「物理層」まで7つの層に区分けされている。
 上位層になればなるほど、大変ではあるけれど、ビジネスとしてのうまみも大きく、また、いったん獲得したビジネスを競合他社に奪われる可能性も少ない。
 逆に下位層においては、いったん獲得したビジネスも、簡単に奪われる可能性が高くなる。しかもコモディティーに近くなるので、価格を叩かれやすいし、利益幅も少ない。
 良い例が、電話である。ほとんど物理層のビジネスにおいては、携帯の番号ポータビリティーでも分かるように、簡単に電話会社を替えることができるのである。替えられないためには、より上位層の付加価値をつけるより方法がない。携帯電話としてのiPhone(アイフォーン)などはその典型である。そしてこれが電話会社に比べれば上位層のパソコンメーカーから出てきたことは象徴的である。

ビジネスで苦戦する“世界最高の技術”

 数カ月前テレビで見たのだが、水ビジネス(水商売と間違えないでください)において、フィルターの技術では日本は世界最高の技術を持っているのだそうである。ところが諸外国への進出では、苦戦が続いている。
 それは「フィルター」という「物理層」の技術では優れていても、上水、下水などを含めた総合的な「水」のビジネスのノウハウが不足しているからだという指摘であった。日本においては、この意味での水のビジネスは、地方自治体が、特別会計で握っており、私企業でのビジネスとしては成り立っていないからである。
 もう一つ例を。米国での携帯電話のシェアのトップは韓国のサムスンであるが、その部品の95%は日本製なのだそうである。すなわち、いくら優秀な部品(下位層)を作ることができても、ビジネスとしてのうまみはないということなのだ。
 そして、下位層のビジネスが得意でも、上位層に食い込むのは難しい。どうしてもトップダウンで「下りてくる」ビジネスには太刀打ちできないのである。
 そういうことを考えると、ビジネスが目指さなければならないのは「上位層」(上流)なのであって、「下位層」はそれなりに甘んじなければならないということなのだ。
「下請けとしての確固たる地位」にいても、どうしても発注元に左右されてしまうのは、昨今の不景気でも明らかだ。「上位層ビジネスをいかに手中に収めるか」。これが、これからの生き残りの基本ではなかろうか。

ジャック・ウェルチの言葉
「Control your destiny , or someone else will.」

 この言葉が含む意味は、企業にも当てはまるのである。


石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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