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ブアイソー世代のための資格講座 第3回 弁理士

企業の未来を左右する弁理士のシゴト

 一昔前、弁理士や会社の特許部はマイナーな存在でした。研究がうまくいかない人が流れ込む”研究者の墓場“と陰口を叩かれていたほどです(笑)。そもそも知的財産という言葉がありませんでした」(プログレッジ代表、弁理士・廣田浩一氏)
 法学部出身の読者は、もしかしたら「無体財産法」といった名前の講義をうっすらと憶えておられるかもしれない。「そのくらい地味な存在だったんです。それが、小泉内閣あたりから劇的に変わりました。知財を売りにしていこうと、国家戦略として打ち出し、企業も、知財を経営に活かすと言い始めました。多くの業で特許部から知的財産部へと名称が変わり、特許部・知財部が花形部署になりました。また、多くの大学で知的財産法の講義が行われるようになりました」(前掲廣田氏)
 それに伴い、20代、30代の会社員や学生で弁理士をめざす人が増えているという。弁理士という資格にはどんな魅力があるのだろうか。「技術を理解したうえで、それをよりよい権利にするのが弁理士の仕事です。どれだけの利益を会社にもたらしたかに自分の知識と努力が表れるので、非常にやりがいがあります。ノーベル賞がいい例ですが、研究開発の世界では、何十年もたってから評価されることもあります。弁理士の仕事はそれより短いスパンで評価を受けるので、励みになりますね。
 それから、技術が素晴らしければ、いい権利が取れるかというと、そういうわけではないんです。素晴らしい技術を素晴らしい権利にするのは、弁理士です。例えば、徳島県にある日亜化学工業という会社は、高輝度の青色発光LEDを製品化しました。元社員の中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授との間で、特許の帰属や譲渡対価を巡って裁判となりましたから、ご存じの方も多いでしょう。あれは技術はもちろんですが、取っている権利の内容もいいのです。
 例えば、10人の弁理士が発明者から説明を聞いたとします。どのような権利として取りに行くかは10人全員違うんです。そこに弁理士の能力が表れるわけです。『基板上に光触媒を塗ったら、汚れない壁ができた』という発明を聞いた時に、弁理士が『基板上に光触媒の層を塗った物』という権利を取ったら、『板の上に乗った物』にしか権利が及ばない。『基板』を『基材』とすれば、形状に限定がなくなります。他社が球体の上に光触媒を塗った製品を開発したとしても、権利が及びます。発明の本質を把握し、技術がどういう分野で使われるかという想像力を働かせ、適切な言葉を使って表現するのです。
 特許庁に出願しても、90%以上が拒絶されます。そのまま通ることはまずありません。拒絶理由に対して反論したり、特許庁の言う通りだと思えば、権利の取り方を直したり。そうやってやり取りをしながら、会社・発明者側にとってよりよい権利、価値の高い権利を作り上げていく――それが弁理士の腕の見せ所なのです」(前掲廣田氏)
 素晴らしい発明はさまざまな分野で広く応用されるものだが、弁理士がうまく権利を取れば、応用範囲全部に特許の網がかかり、会社や発明者に莫大なライセンス料が入ってくるわけだ。
「うまくいった時は『他社がギブアップして、ライセンス料を払うと言ってきましたよ』と、喜びの報告があります」(前掲廣田氏)

仕事をしながら目指せる資格

 そんな魅力のある弁理士という職業にどうすれば就けるのか。試験について聞いていこう。そもそも弁理士というと、理系の資格というイメージだが、
「試験は文系・理系、関係ありません。ただ実務に入ると、文系の方は商標や意匠、デザインがメインになります。特許をやりたい場合は、理系の技術を勉強する必要があると思います」(前掲廣田氏)
 平成14年度に試験制度が変わり、昨年度から免除制度が拡大。
「試験科目数が大幅に減って、選択科目は場合によっては免除。一次試験を合格すると2年間は一次試験が免除になります。ここ数年は合格率7、8%で合格者が700人~800人。そのうちの1割、2割、直近ではそれ以上の方が1年か2年で合格しています。会社も辞めなくて大丈夫。仕事をしながら勉強をするというのが当たり前になっています」(前掲廣田氏)
 勉強のやり方はどうだろうか。独学は可能だろうか。
「難しいですね。一次試験はマークシートなので、何とかやろうと思えばやれますが、二次試験は論文式です。この論文というのは、独学では自分の書いた論文がいいのか悪いのか、判断がつかないのです。自分の癖を矯正するためには、ゼミや答案練習会など、受験機関で指導を受けるのが確実だと思います」(前掲廣田氏)

コラム「資格マメ知識」
宇宙飛行士【前編】

 宇宙飛行士を資格として見た場合、超難関でレアな資格であることに異論はないだろう。しかし「誰が宇宙飛行士資格保持者か」については意見が分かれそうだ。
 日本人宇宙飛行士のほとんどは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士だ。ほとんどと書いたのは、ロシアのソユーズロケットで最初に宇宙へ行った日本人、元TBS社員の秋山豊寛さんのケースがあるから。JAXAのサイトでは「日本人として初めて宇宙へ行ったのは秋山豊寛氏で、初めてスペースシャトルに乗って宇宙へ行ったのは毛利衛宇宙飛行士です」(http://iss.jaxa.jp/iss_faq/faq_ast_08.html)と記述し、「秋山豊寛宇宙飛行士」とはしていない。「宇宙飛行関係者」と捉えているとも読める。一方、JAXAの宇宙情報センターというサイトでは「秋山は、日本人で初めての宇宙飛行士となりました」と記述しており、秋山氏の宇宙飛行の評価の難しさを感じさせる。
 さて、JAXAの宇宙飛行士は、JAXA所属の候補者が訓練を経て宇宙飛行士と認定され、晴れて宇宙飛行士となる。宇宙飛行士と聞くと、漠然と「ああ、宇宙に行った人ね」と考えがちだが、宇宙飛行士と認定された後、さらなる訓練を受けている(厳密にはまだ宇宙に行っていない)宇宙飛行士も「宇宙飛行士」なのだ。
 ただJAXAの宇宙飛行士も、今のところはJAXAのではなく、米国航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルで宇宙へ飛び立っている。面白いのは、JAXAの宇宙飛行士はNASAのスペースシャトルで宇宙に行ったとしても、NASAで訓練を受けたとしても、「NASAの宇宙飛行士」とはならないということ。「JAXAはNASAに訓練を委託しているだけで、飛行士はあくまで、JAXA飛行士として訓練を受けます。シャトルへも、JAXA飛行士として乗り込みます。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)も同じ扱いです」(JAXA)


文:渡辺麻実

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