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ブアイソー世代のための資格講座(最終回)社会保険労務士 後編

社会保険労務士 近藤恵子氏

社会保険労務士 近藤恵子氏

労使間のトラブル増で
役割が大きくなってきた資格

 会社と社員とのトラブル増加に伴い、役割が大きくなっている社労士。
「社労士の場合、お客様は中小零細企業が中心になります。社会保険・労働保険の手続き業務をはじめとして、社内で日常的に発生する労務管理上のアドバイスや指導、人事制度の構築など、業務内容は多岐にわたっています。手続き業務から人事制度の構築までトータルサポートするケースも多いです。
 また、お客さまが大手企業の場合、人事部門にそれぞれ担当者がいますから、コンプライアンスやリスクマネジメントの観点からアドバイスをしたり、最新の法改正情報を提供したり、といったケースが多いです」(社会保険労務士・近藤恵子氏)
 資格の魅力はどんなところにあるのだろう。

社労士の醍醐味

「例えば、A君とB君という新入社員がいたとしましょう。A君はものすごく仕事ができる人で、B君は全くできなかった。その2人が入社してきて同じ部署で同じ仕事をしていた。A君は仕事が速いから定時に終わります。B君は夜の8時とか9時までかかる。
 そういう状況が続いて、ある時社長が2人の給与明細を見て、がく然とする。なぜBの方が多いんだ、と。『Aの方が仕事ができるだろう、あいつの方に払うべきなのに、なんでこいつの方が多いんだ、どう考えたっておかしい!』。社労士は『B君の方が残業代が多いんです。だからB君の方が給料が多いんです』。社長は『そんなのはおかしい、時間でお金を払うというやり方は現実にそぐわない、労働基準法の方が間違っている。成果だろう、仕事は!』。そう思っている社長さんって多いんですよ(笑)。でも、払わないと労働基準法違反となり、場合によっては労基署から勧告を受ける。
 そこで社労士が提案するわけです。『成果についてはボーナスで差をつけられたらどうですか?』とか『A君を昇給させたらどうですか?』。一番大事なのは、B君を残業させないような体制作りです。B君の仕事量を減らしたり、周りの人たちがB君に仕事を教えてあげたり、B君の部署を変えたり。いろいろやり方はあるんですよ。これは会社の内部事情にかなり首を突っ込む仕事になりますが、そういうことは外からの方がやりやすいんです。社内の人間が言うと『偉そうに』とか『自分が得したいだけじゃないか』などと言われてしまいますからね。
 そうした会社の根幹に関わる事柄についてアドバイスができる、これが社労士の醍醐味なんですよ」(社会保険労務士・右田修三氏)

社会保険労務士

合否の鍵を握るのは
精神力やモチベーション

 最後に、社労士試験について聞いていこう。
「合格までみなさん1年間くらい勉強されます。時間にして800時間から1000時間。直前期は別として、週に15時間から20時間というところです。社労士の試験は8月下旬なので、間違いなくお盆休みとゴールデンウィークをつぶすことになります。同僚は、海で日焼けしたとか、海外旅行に行ったといった話を楽しそうにしているのに、自分は勉強だけ。したがって、精神力やモチベーションが鍵を握ります」(前出・右田氏)
 マークシート方式で知識問題が中心、淡々と勉強すればすんなり受かる試験と思っていたが、そうでもなさそうだ。
「実際の受験者に対する合格率は例年、8%程度。これってプロ野球12球団のうちの1つが日本一になる確率と同じなんですよ」(前出・右田氏)
 自分が監督だとして優勝するためにどうしたらよいか、と考えれば、勉強を粛々としていればよいわけではないことがよくわかる。では、どのように勉強したらよいのか。
「独学で合格する方もいますが、ものすごく頭がいいか、要領がいいか、時間がある人。講座を受講される方がほとんどです。スクール選択にあたっては、講義がわかりやすいか、過去問をリンクさせた講義かどうか、モチベーションを維持できるようにフォローしてくれるか、といった点に着目するとよいでしょうね。私は辰已法律研究所の『佐藤塾』を推薦します」(前出・右田氏)

コラム「資格マメ知識」
資格と女性

 社労士・近藤恵子氏に、資格を取ったことで変化があったか、聞いてみた。
「大学を出て入った会社が、どちらかと言うと古い体質の会社だったのかもしれませんが、当時は良くも悪くも常に”女性“がつきまとっていました。でも、社労士として仕事をするようになってから、性別を意識したことはありません」
 女性読者のために特別に、社労士として活躍するまでの経緯を語ってもらった。
「運輸会社の旅行部門で勤務していましたが、会社の同期は、旅行の仕事をするためにちゃんと語学力を身につけていたり……とにかく優秀な女性がたくさんいたんです。自分は何もできない、と恥ずかしく思いました。でも、上司に恵まれ、根気強く指導・フォローをしてもらいました。何とか会社の中で仕事ができるようになった時、自分がしてもらったように、人の力を伸ばす仕事がしたい、それができる部署はどこだろうか、と考え、いわゆる人事部を志望するようになったのです。ただ、やりたいと言っているだけでは通りません。自己アピールとしてこの資格を取得しました。
 とはいえ会社という組織は、個人の意向が簡単に通るほど甘いところではありません。結局関係部署に異動することはありませんでしたが、資格を取ることによって、ある程度上層部に認めてもらい、充実した会社員時代を送ることができました。別に具体的に何か仕事をさせてもらったというわけではないんですよ。でも、ちょっとしたところで扱いが変わったんです。それに何より大きかったのは、自分に自信が持てたということです」
 退職のきっかけは?
「会社の中で異動を待っている間にも、どんどん知識は衰えていきます。自己研鑽しなければという焦りがあって、社労士の仕事をお手伝いさせていただいた時に『面白いな、やってみたいな』と思ったんです。あとは環境です。夫の仕事の都合で新婚当初から別居していて、約3年経っていましたので」
 資格を取るにあたって「結婚してからも続けられるな」という計算は、やはり頭をよぎった?
「それは考えました。やはり生きていくうえで、手に職ではないですが、確固たるものがほしい、という思いはずっとありましたね」


『知らないと損する労災保険』 近藤恵子/著 堀江篤史/本文イラスト  東洋経済新報社刊『知らないと損する労災保険』
近藤恵子/著 堀江篤史/本文イラスト
東洋経済新報社刊

文:渡辺麻実

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