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連載/Column
提言
第27回 九平次とイアーゴー ~裏切りに備える~
九平次はほぼ実在の人物を近松門左衛門が浄瑠璃『曽根崎心中』に仕立てたキャラクターだが、一方、イアーゴーはシェークスピアが『オセロ』の中で創造したキャラクターである。私にはシェークスピアが創造した人物の中で、イアーゴーが最も魅力的なのである。
2011/11/16

ビジネスにおける"裏切り"は日常茶飯事。常に備え、攻守どちらにも利用できるようにしなければならない
2人の裏切り
前回も書いたが大学と大学生は増加の一方だが、文学部は縮小の憂き目を見ている。したがって前述の超有名物語を読んでいない方も多いと思う。しかし、字数の関係でここで紹介するわけにはいかないので、興味のある方は図書館などで読んでみてほしい。
九平次とイアーゴーの2人は、現代的に見ても大変なワルである。九平次は親友の徳兵衛から借りた金を「借りた覚えはない」と突っぱねて徳兵衛を心中に追いやる。一方、イアーゴーは奸計をもって上司のオセロを裏切る。
徳兵衛への裏切りは比較的簡単なもので、単なる金銭取引上の問題である。しかしイアーゴーは手が込んでいた。そして徳兵衛と同じくオセロを自殺に追い込むのだが、その前に自分の妻の裏切りによって、悪事は露見してしまう。
“昨日の友は今日の敵”
ここは文学論を述べるところではない。あくまでも古典から学んでビジネスにどう生かすかを考えるところである。
この2つのストーリーを大阪の色街の話やキプロスの話にとどめておいたのでは役に立たない。
「裏切りはどこにでもある」ということを学ばなければならないのだ。
友人関係とか家族関係とかいうことにはとどまらない。企業関係においてもそういうことはしばしば起こる。
昨今の財閥系企業の他グループとの連携を見れば、それを裏切りと見るかどうかは別としても、既存の枠組みの分解と垣根の低下には目を見張る。
今まではわが社の優良顧客と信じて疑わなかった企業が突如、ライバル企業に奪われるということなどは日常茶飯事だ。
重要なのはそういうことに備えて常に神経を張り巡らせていなければならないことであるが、それでは全くもって「守り」にすぎない。そして、裏切りにあっても動じないタフな神経も要求される(オセロはその神経症的性格から敗北するのだ)。
しかし、守りだけでは企業は成り立たない。サッカーを例に考えてみよう。いくらゴールキーパーが優秀で点を与えることがなくても、攻撃陣が点を稼がなかったら試合に勝つことはできない。
攻撃も裏返しでターゲットに裏切らせることを考えなくてはならない。
経済の縮小によりマーケットのパイは当然縮小している。そういう時に「あのプロスペクトはライバル社とガチガチだからなぁ」と慨嘆していたのでは、売り上げは減少する一方である。正面突破、から搦め手からのけん制などを含めていろいろ考えなければならない時代なのだ。
100%の子会社ならいざ知らず、企業グループという縛りも緩んでいる時代である。
逆に言えば蟻の一穴でルースな(ゆるい)企業グループの1社を突破すれば他のグループ内企業をも手に入れられる可能性だってあるのだ。
今や国内にとどまらず国際的にも離合集散が激しい。アメリカとベトナムの海軍が合同演習をやる時代である。そんなことは20年前には考えもつかなかった。
昨日の敵は今日の友という考えは甘い。昨日の友は今日の敵くらいに考えていないと、いつ足をすくわれるか分からない。
イアーゴーの奸計は本当に示唆に富んでいる。
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリッ ク)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中
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