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第17回 専門領域を持たない ジェネラリストの宿命

部下と同じ仕事ができなければ、これからは出世しても生き残っていけない

2010/06/25

現在の職を離れたらあなたは何ができるだろうか……

現在の職を離れたらあなたは何ができるだろうか……

 3月31日付け産経新聞のfrom Editorカラムは秀逸なものであった。
 タイトルは「『部長ならできます』への考察」(MSN産経ニュース)。
 要約すると、失業中の50代くらいの男性が中小企業を訪れ、社長の面接を受けた。社長から「手に何か技術を持っているか、例えば財務関係にはくわしいとか?」と聞かれたこの御仁の答えは「そうしたものは特にありませんが、“部長”ならできると思います」ということであった。
 換言すれば、「優秀なスタッフを与えてくれれば、そのまとめ役と監督はできます」ということである。恐らくこの方は大企業でそれ相応の地位にあった方で、履歴書には歴任した赫々たる経歴が列挙されていたことと思われる。
 ここに見られるのは、すでに時代遅れとなった管理職像であるといったら言い過ぎかもしれない。しかし、ひと昔前までは(すなわち私が現役の頃までは)、この手の管理職にも十分働く余地は確保されていた。難しいプロジェクトが完成すれば、打ち上げで、スタッフを一杯飲みに連れていき、元気のないスタッフがいれば「どうした? 今夜一杯やっていかないか?」などと声をかけ、元気づけるというような役回りである。この面接を受けた方の頭にある「管理職像」あるいは「部長像」というのはそういうものであったに違いない。
 だが、仄(そく)聞するところ、昨今の企業の特に若手スタッフはこういう「管理職」を苦手とするようである。プライヴェートな時間まで上司と過ごしたくないという若者(私はそれは大変健全なことだと思うのだが)が多い。
 むしろ近頃は、難しいプロジェクトなどに遭遇した時に、一緒に働いてくれる(すなわち上から目線で管理・激励してくれるのではなく)上司の方が仲間意識が出て、歓迎されるのではないかと思われる。そのためには部下と同じレヴェルで仕事ができる上司が必要なのではなかろうか。

スペシャリストとジェネラリスト

 ITバブルの頃、多くの大企業は、コーディングなどの「川下」作業は外注に出し、自社では鵜飼よろしく、下請け(「協力会社」などと言っていたが、実態は「川下業務の下請け」)の鵜を操る技術が重要であった。
 しかし、一旦バブルがはじけたら、鵜飼の仕事どころではなくなり、だぶついた人員の整理を避けるためには、それまでの鵜飼が外注に出していた「鵜の仕事」をしなければならなくなった。そのため「外注を操る技術」など何の役にも立たなくなり、「外注がしていた仕事ができる技術」が要求されるようになっていった。
 このカラムの一節には次のようなことが書かれている。
「業種にもよるが、スペシャリストはその企業にとって必要不可欠な存在。一方、ジェネラリストはある程度、社内で代替がきく」
 だから不要になるのはジェネラリストが先なのだということである。
 この「部長職には自信がある方」は直属の部下がしている仕事が恐らくできないお方であろう。部長は課長の、課長は係長の、係長はスタッフの仕事を、技術的に同じようにこなすことができなければ、これからは出世しても生き残っていけない時代になったということが、申し上げたいことの主旨であります。

石原憲一(いしはら・けんいち)
1962年慶應大学卒業(英文学専攻)。日本Olivettiに入社し、ソフトウェア統括部長、子会社社長を経て、1982年GE(ゼネラルエレクトリック)社にて商用ネットワーク部門を担当、電通国際情報サービス常務取締役を兼任。1999年に退職後もGEに嘱託として残り、同時に KDD、シェル・サービス、JetFormの顧問やコンサルタントとして2003年末まで勤め、現在は長野県の森の中で隠遁生活中

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