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格付け会社とソブリン債務の連鎖的スパイラル

サブプライム問題、リーマン危機を乗り越えようと、国々が一斉に財政支出を拡大した結果として、デフォルトを想起させる債務問題が起こった。米国の金融緩和策で急場はしのいだが、税収が増えず公的債務削減や実体経済面の雇用創出、住宅価格などに対していまだ実質的な解決はなされていない。投資銀行や格付け会社の違法性やモラルを問う米当局の動きは金融危機後の現在も続いている。今回は、米国債、日本国債のクレジット・スタンディングを引き下げた格付け会社について考えてみたい。

2011/10/02

リーマン危機後の政府債務拡大

 米国の追加的金融緩和策(QE3)が検討されているようだが、金融危機のリスクが一時的に政府サイドに移転しただけで、サブプライム問題は解決していない。米国では、FHFA(米連邦住宅金融局)が米国、欧州、日本の投資銀行を提訴し、巨額の賠償金支払を請求している。サブプライム問題に関連し、不適切なRMBS(住宅ローン債権担保証券)情報を流したというのが訴訟の理由だ。
 米国の3大格付け会社、スタンダード&プアーズ(S&P)、ムーディーズ、フィッチも、フレディーやファニーといった米国の公的住宅機関の格付けの妥当性や、サブプライムローンを多数束ねたRMBSに確率論から割り出したデフォルト(倒産)数値をもとに高格付けを付与した案件に対して、司法省から取り調べを受けたり、カルパース(CalPERS:カリフォルニア州職員退職年金基金)との訴訟の対象となっている。
 8月5日には、米国格付け業界で150年以上の歴史を誇るS&Pが、債務上限法案を瀬戸際でようやく可決したアメリカ政府の長期ソブリン格付けを最上級のAAAからAA+に1段階(ノッチ)引き下げ(見通しはネガティブ)、短期ソブリン格付けは最上級のA-1+に据え置いた。

 8月24日には、同じ格付け会社のムーディーズが、多額の財政赤字と過去5年にわたり首相が頻繁に交代し、政治が混迷して財政再建が進まない日本の国債をAa2からAa3に格下げした(見通しは安定的と付加したが)。
 S&Pによる米国債の格下げは、ニューヨークDJ株式を1日で634ドル押し下げた。アジア太平洋地域のソブリン格付けに直接影響なしと声明を出したものの、その影響はアジア、欧州を含む世界の先進国、新興国の株式市場に負の連鎖をもたらしている。
 興味深いことは、この影響で世界を動き回る投資資金が、金などの商品相場や欧州ゾーンの域外の国債(英国、デンマーク、スウェーデン国債など)に向かったほか、格下げされた米国債や日本国債がその後も買われ、価格が上昇したことである。投資家にとって、格付け会社がこういったアクションを取るであろうことはすでに織り込み済みであり、市場の厚みと流動性の高さから代替すべき債券が他になかったことがその理由として考えられる。同時に今後の潜在的な成長率、期待インフレ率の低下を織り込んだプライシングとなっていると思われる。
 ここで注意すべきことは、大きな格下げが行われた場合、一国や地域のソブリン格付けの問題は他の国々に連鎖するばかりでなく、国債などソブリン債券を大量に保有する民間銀行の支払い能力を危うくし、自己資本を毀損して、銀行の資金調達コストを上げることである。それが、金融・経済活動を停滞させ、さらに税収を減らし政府債務危機を増加させるというスパイラルを招きかねないのである。
 また、国の格付けの変動は、その国の政府系機関、企業、地方自治体などの信用格付けの上限にも影響を及ぼす。ムーディーズは日本の格下げに伴い、日本の12の地方公共団体の格付けを下げている。
 日本の代表的な格付け会社である格付け投資情報センター(R&I)も、日本ソブリンについて、野田新政権の財政運営姿勢を見極め、年内の格付け見直しを表明していることも付け加えておきたい。

ソブリン・デットの格付け

 こうした格付けは、発行体格付けと、それをベースにした個別債務格付けに分類される。さらに、発行体に依頼された格付けと格付け会社が投資家のために勝手に格付けするものがある。長期の債務の格付けでは債務不履行に陥る可能性(デフォルトリスク)の分析、債務不履行時点の損失の可能性(回収リスク)の判断を、その評価に織り込む。短期格付けでは主にデフォルトリスクの判断が焦点となる。
 国を格付けするために評価するポイントは、国の財務状況、債務など構造問題に取り組む政策の質と実行力、そして、国の資金調達能力である。
 格付け会社が行う一般的な格付けのプロセスの例は下図のような内容である。

参考資料
格付投資情報センター「格付け手法」
徳島勝幸著『新版現代社債投資の実務』財経詳報社
S&P:Credit Rating Portal(米国ソブリン)
Moody's Press Release (8/24/2011)
文:西村訓仁 構成:羽田祥子(編集部)

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