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書き手に優しいエクリドール

ペンの持ち方で年齢がわかる?

 万年筆の正しい持ち方をご存知だろうか。ペン先の刻印を上向きにして、力を抜いて持つ。筆記角度(紙と万年筆の軸がなす角度)を45°くらいにして、ペン先の先端を紙に着地させると、その瞬間、ルイス・エドソン・ウォーターマンが発明した毛細管現象によって、力を入れずとも自然にインクが出てくる。あとは、紙の上を滑らせるように動かすだけ。万年筆は、筆圧をかけなくても書けるという意味で、最も軽い筆記具なのである。
 というと、万年筆が誰にでも愛想がいい、八方美人の筆記具のように聞こえるかもしれないが、実際は逆。正しく持たないとインクすら出ない、“お客を選ぶ”タイプの筆記具なのだ。だから、カランダッシュ本社のあるスイスでは、地域で多少の違いはあるものの、基本的に小学2年生から8年生まで、万年筆しか使わせない。宿題をやる時にも、万年筆を使わせる。それはもちろん、筆記具の正しい持ち方を教えるため。万年筆で字が書けるということは、正しい握り方ができていることの証しなのだ。
 こんな話をすると、「どうせ変な握り方だよ。万年筆なんて、こっちから願い下げだ!」とへそを曲げるブアイソー世代の声が聞こえてきそうだが、大丈夫。カランダッシュのエクリドールは、観音様のように慈悲深い。たとえ筆記角度が90°に近い“変な”持ち方であっても、インクがスルスルと出てくるのである。
 カランダッシュジャパン株式会社セールスマネージャー・青地美仁氏の長年にわたる観察によると、30代前半までの人は、90°に近い角度で、つまりペンを立てて持つ傾向にある。そして書かれた字を見ると、いわゆる「とめ・はね・はらい」のはね・はらいであるべきところも、カチッ、カチッと、とめる人が多い。つづけ字(行書)を書く人も少ない。それは、文字を“打つ”ばかりで、文字を“書く”ことが減ってきていることと無関係ではないだろう。30代前半と言えば、1999年2月、iモードのサービス開始の時に、大学生だった世代。有り余る若さと時間を使って、「手紙よりメール」のケータイ生活を、自ら実践しながら創り上げてきた世代だ。その下の世代になると、ケータイ、メールが当たり前。そんな万年筆とは縁遠い世代であっても、たとえ万年筆の持ち方が“変”であっても、エクリドールのペン先なら、自信をもってお勧めできる。
 他方、万年筆を正しく持てる人にエクリドールが不向きかというと、もちろん答えは否だ。45°くらいの正しい筆記角度で持つ人は、小学校に入ると同時に、正しい鉛筆の持ち方を厳しく指導されている50代以上に多いそうだが、その世代にもエクリドールはお勧めだ。

 エクリドールは万年筆の中では軸が細いほうだが、その点でもエクリドールの守備範囲は広い。立ててサラサラと書く30代前半までの人にとっては、細い万年筆の方が書きやすいだろうし、自身も50代に属する前掲・青地氏によれば、「50代以上には応用力がありますから、軸が太くても細くても大丈夫(笑)」。
 つまり、エクリドールは「10~30代、50~70代以上の方に向いていると思います」(前掲・青地氏)。(30代後半から)40代が除かれているのは、筆記角度が60°くらいと半端だから。40代に属する筆者としては複雑な気分だが、我が手元を見れば、筆記角度はたしかに60%。見放されても(笑)、文句は言えない。なお、10歳以下が除かれているのは、価格ゆえ。おもちゃのように遊んで壊される危険を考慮しているわけだ。
 性別に着目すれば、とくに女性にお勧めの万年筆と言えるだろう。「エクリドールは、私に似てボディもペン先もスマートですから、女性にも書きやすいと思います」(前掲・青地氏)。


カランダッシュ公式ウェブサイト
carandache.com

文:渡辺麻実

渡辺麻実

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