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相手を安心させるレスポンス

今回の磯さん、どうやら仕事は順調みたいですが、プライベートで少し悩みごとがあるようです。今は仕事帰りに、武藍さんと2人で軽く飲みに来ているみたいですね。ちょっと2人の様子をのぞいてみましょう。

武藍室長補佐(武) なんか、磯と飲むのも久しぶりという気がするな。最近はどうなんだ?

磯主任(磯) そうですね。基本的には順調ですよ。いつも武藍さんにいろいろと教わっているおかげで、助かっています。

 そうか。それはよかった。

 まあ、仕事はうまくいってます。

 ん、仕事「は」? なんか意味ありげだな……ってことは、プライベートに悩みでもあるのか?

 う、さすが武藍さん。鋭いですね。

 なんだ、わかりやすいヤツだなあ。

 実は僕、昨日、彼女と大ゲンカしちゃったんです。それが結構大変で……。いやあ、参っちゃいました。 

 おいおい、なんかずいぶんと深刻そうだな。

 うーん、まあ大したことないとは思うんですけど……。うちの彼女、先月、職場の上司がやり手の女性課長に変わったんですよ。どうやら、その新しい上司と合わないみたいで、最近、いつもイライラしているんです。

 へえ。

 それで、昨日はあまりに元気がなかったので、ちょっと相談に乗ってあげようとしたんですけど、それが逆効果でした。いやあ、女の人ってホント難しいですね。

 へえ、何があったんだ?

 それがですね、うちの彼女は、その新しい上司が、自分に対してだけ特に厳しいんだ、って言っていたんですよ。それで、いつも、ヒステリックに怒られているって。

 ははは、そりゃ大変そうだな。

 でも、よくよく話を聞いてみると、単に、前の上司は男性で、女性に甘いタイプだったので、その時に甘やかされていただけみたいなんですよ。

 あらら、なるほどな。

 だから僕は、それくらいなら、特にひどいってわけじゃないし、それよりもその新しい上司とうまくやるためにはどうするかを考えたら? って言ったんですよ。そしたら、いきなりケンカになっちゃって。

 おお、いきなりケンカに?

 いやあ、そうなんですよ。僕も、つい「もともと甘やかされてただけでしょ」って言っちゃったもんだから、いきなり「わかってないくせに、適当なこと言わないで」って、キレられてしまって。

 そうなんだ。

 でも、正直言って、その上司は厳しいだけで、前の上司よりもむしろフェアみたいですし、大体、文句を言ったところで上司が変わるわけじゃないじゃないですか。だから、どうやってうまく付き合っていくか、の方が役に立つアドバイスだと思ったんですけどね。

 うーん、なるほどな。磯は、彼女の話を聞いて、客観的に考えて、一番役立つアドバイスをあげようとしたわけだ。

 そうなんですよ。でもまあ、ついつい嫌味っぽく言っちゃったのはちょっと失敗でした。いつも、言った瞬間「しまった!」って思うんですけどね……。まあ結局、最後には「やっぱり、あなたなんかに相談した私が馬鹿だった」なんて言われちゃったというわけです。

 うーん、そりゃつらいな。

 いやあ、参っちゃいましたよ。でもまあ、考えてみれば、彼女は最初から少しイライラしていたんですよね。だから、まずは愚痴を聞いてあげればよかったのかな、と思っています。

 うん、まあ、そうだろうな。

 やっぱり、そうですよね。

 そもそも磯は、プライベートに限らず、人の悩みを聞いたり、相談に乗ったりするのは得意なのか?

 えっ? どうでしょうか。確かに、そう言われると、あまり得意じゃないかもしれません。

 磯ももう主任なんだから、そろそろ大事なことだと思うぞ。

 はい、わかってます。どうしたらいいのか、ぜひ教えてください。

相手を安心させるレスポンス そうだな。悩みや相談を聞く時には、何よりもまず、相手が言いたいことを、すべて気持ちよく吐き出させてあげることが肝心だ。つい、「それは○○が悪いんだろう」とか「きっとこうした方がいいんじゃないか」とか、あれこれ言いたくなるが、そこをぐっと我慢する。

 あ、僕、いきなりダメですね。

 ははは、そうかもな。まあ、ひとまずしっかり聞きながら、いいタイミングでレスポンスを返していくことだ。

 えーっと、いいタイミングでレスポンスを返す、って、どういう意味ですか?

 そうだな、ひとくちにレスポンスと言っても、実際には、何パターンかある。簡単なのは、「へぇ」とか、「なるほど」とか、相手の話のリズムに合わせて「相づちを打つ」ってこと。うまく相づちを打てば、相手は「ちゃんと聞いてくれてるんだな」と安心する。もちろん、オーバーだったり間が悪かったりすると逆効果だから、注意が必要だ。

 なるほど。いい感じの相づちですね。

 ほかには、相手が強調している「キーワード」を繰り返すという方法もある。例えば、相手が「それが結局、最初からやり直しにされちゃったんですよ」と言ったとすれば、「え、最初から?」と返す感じかな。

 なるほど。キーワードを繰り返すんですね。

 あるいは、相手が話した内容をひとことでまとめる、という方法もある。最近、仕事が忙しかった話をあれこれしていた相手に対して、「へえ、ってことは、3日連続で昼休みが取れなかったんだ?」と返す感じかな。

 なるほど、内容をまとめるんですね。うーん、ちょっと難しそうですね。

 まあな。でも、キーワードにしても、内容をまとめることにしても、うまく返せば、相手を正しく理解していることが伝わって、相手を安心させられる。

 なるほど、そうですよね。

 それに、こういうレスポンスがあれば、「そう、最初からなんですよ!」とか、「ええ、正直3日連続はきつかったです」という感じに、言いたかったことを繰り返すことができる。それによって、相談している方もすっきりするんだよな。

 あ、確かにそういう流れになりますよね。うーん、なるほどなあ。

 そして最後に、相手が、言いたかったことをある程度出し切った段階で、「それは大変だったね」とか、「それはつらいね」とか、相手の気持ちを代弁してあげることだ。それによって、相手に共感している、ということが伝わる。

 気持ちの代弁ですね。なるほど。

 注意しなきゃいけないのは、相手の話をまとめるにせよ、相手の気持ちを代弁するにせよ、やり過ぎないってこと。いちいち話を遮ってしまうと、うまくいかないからな。

 はい、わかりました。

 もちろん、言葉だけじゃなくて、表情とか、仕草とか、そもそも気持ちが入ってなければダメだぞ。相談している人が、「ちゃんと聞いてもらえているな」と感じられないと、安心して悩みを打ち明ける気にならないからな。

 そうですね。

 まあ、こういったレスポンスをうまく返していけば、相手が安心して悩みを出し切れるようになるだろうし、出し切っちゃえば、悩みの大部分は解決しているようなもんだ。

 確かに。

 もちろん、そのうえで、一緒に解決策を考えていこう、となるわけだ。くれぐれも、最初から「よし、俺がその解決策を教えてやろう!」という態度で接することのないようにな。

 はい、本当にいつも勉強になります。次からは、ちゃんと意識してみます。

 そうだな。あ、でも、まずは彼女と仲直りしろよ。

 あ、忘れてた。そうでした……。それは気が重いですが……でも、武藍さん、今日もありがとうございました!

いかがでしたか? もし、皆さんが人の悩み相談を受けることがあれば、武藍さんのアドバイスを参考に、相手を安心させるレスポンスを試してみてはいかがでしょうか。


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