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コンセプトをはっきり伝えるためのコツ

最近の磯さんは、これまでに武藍さんから教わったことを活かして、チームをうまく回しているようです。どうやら、社内で色々と仕事を任されることもあるようですよ。さて、今は昼休み、そんな磯さんが考え事をしていたところ、武藍さんが通りがかりました。ちょっと様子をのぞいてみましょう。

武藍室長補佐(武) おう、磯。昼休みなのに、ずいぶんと険しい顔して、どうしたんだ?

磯主任(磯) あ、武藍さん、こんにちは。いや、ちょっと考え事をしていたところなんです。

 へえ。またチームで何かあったのか?

 いえいえ、おかげさまで、チームはうまくいくようになりました。今考えていたのは、ある種の課外活動のことなんです。

 課外活動?

 ええ。武藍さんは「新卒採用改革プロジェクト」ってご存知ですか?

 ああ、人事部以外を巻き込んで、来年の採用方法を抜本的に考え直す、っていう例のやつね。磯もあのプロジェクトに入っていたんだ。

 そうなんです。実は今朝もその会議があって、次年度の学生インターンの活用方法について、紙1枚で5分くらいの簡単なプレゼンをしたところだったんです。 

 へえ、磯がインターンについて?

 あ、前に話したかもしれませんが、今年、うちの課でインターンの学生を1人預かって、ちょうど僕が面倒見ていたんですよね。それで僕が、自分の経験を踏まえて、まずは議論のたたき台を出す役に選ばれちゃったんです。

 なるほど、そういうことか。

 でも、今朝のプレゼンでは、ちゃんと伝わらなかった気がしていて。来週の会議で本格的な議論をすることになっているので、どうしようかな、と考えていたところなんです。あ、ちなみにこれが今日の資料なんですけど……。

 へえ、ふむふむ……「徹底したプロモーション」、「事前選考の精度アップ」、「多くの社員の巻き込み」……なるほどね。別にこれ自体は、悪くない気がするけどな。

 今朝の会議でも、確かに「まあ、いいんじゃない?」って反応だったんですよね。

 そうなんだ。じゃあ何を悩んでいたんだ?

 それが、前に武藍さんに習った「聞く力」を意識して、出席者の反応を気にしていたところ、「そりゃそうだよね」という感じで反応が薄かったんですよ。なんとなく、同床異夢になってそうだな、という嫌な予感がしているんです。

 なるほどな。まあ、そんな予感がするってことは、きっとそうなんだろうな。

 うーん、やっぱりそうですよね……。前に武藍さんに習ったように、しっかりと「事実」「考察」「提案」の順にプレゼン内容を整理しておくべきだったかなあ、と、反省しています。

 まあ、今日は5分でコンセプトを伝えるだけ、っていうことだったんだろうし、思い切って紙1枚に絞ったのは、いい判断だったと思うけどな。次回の議論の最初にもう一度確認しておけばいいんじゃないか?

 そうですか? 武藍さんにそう言っていただけると安心します。

 ところで、磯の意図ってそもそも何だったんだ?

 うちの会社のインターンでは、「まずは、ありのままの姿を見てもらう場を提供することに意義がある」といったノリで、各課に任せっきりなんです。その結果、インターンをした学生が入社に至ることも少ないですし、そもそも、あまり優秀な学生を集められていない気がします。インターン生を受け入れる部署では、結構手間をかけているだけに、もったいないと思うんですよね。

 へえ、そうなのか? まあ、インターンを採用と関連づけるかどうかについては、色々と議論の余地はあるだろうけどな。

 もちろんそうだと思います。でも最近、他社のインターンはしっかり運営されていて、実際の採用にも結びついているらしいですし……。いずれにせよ、議論のたたき台として、来年からの案について、意見を出したつもりだったんですが。

 つまり、磯としては、色々深いことを考えていたのに、こうやって簡潔なコンセプトにまとめてしまうと、当たり前のことに見えて、さらっと流されてしまったということか。

 そういうことです。

 うーん、そうだな、俺だったらこういう場合、伝えたいことを「比較」で示そうとするけどな。

 比較で示す……ですか?

 例えば、磯は、来年度のインターンからは、いくつかの部分を変えなきゃいけないって言っているわけだよな。とすると、いくつかの要素について、「これまではどうだったか」と「これからはどうすべきか」を比較してみる。

 「これまで」と「これから」を比較するんですか?

 そうだ。さっきの話だと、これまでは、「自発的に応募してきた学生の中から選んでいた」のを、これからは「大々的にプロモーションしたうえで、優秀な学生を選抜する」ってことになるのかな。

 ああ、なるほど。あとは、これまでは「受け入れを担当する課に任せっきり」だったのを、これからは、「多くの社員を巻き込み、学生がインターン期間中に多くの社員と接するようにする」ってことですね。

 そうだな。こうやって整理したら、「変えたい」と思っていたことが何なのか、明確になると思うぞ。

 なるほど。改めて考えてみると、そもそもインターンのねらいについても、これまでは「ありのままの仕事の体感」だったのを、これからは「採用活動の一環としての、優秀な人材の囲い込み」にする、ということも最初に確認しておきたいところですね。

 そうだな。そうすれば、磯が言いたかったことが正しく伝わって、賛成してもらえるかどうかはともかく、意味のある議論ができるんじゃないか。

 ずいぶんすっきりしました。ありがとうございます。ところで、他にも似たような方法があるんですか?

 他に使いやすい方法としては、“A” ということを言いたい時に、あえてそれに対立する“B”を作って、「Bではなくて、Aである」、あるいは「BというよりもむしろA」といったような形で伝える方法もある。

 えーっと、どういうことですか?

 そうだな。例えば、さっき磯が「優秀な学生を集められていない」って言ってたけど、それなら、「当社として、どういう学生を優秀な学生とするか」ってことは、ちゃんと定義しておく必要があるよな。

 はい、そうですね。

 そこで、単に「問題解決力がある」とか「チームワーク力が優れている」とか言ってしまうと、「そりゃその方がいいよね」って話になって終わってしまう。

 確かに。

 そんな時には、単に「問題解決力がある」という代わりに、「独創的なアイデアをどんどん出せる人」じゃなくても、「論理的に問題解決をしていけるような人」であることを求めるんだ、と言うと、はっきりする。

 ああ、なるほど。そういうことなんですね。

 あるいは、単に「チームワーク力が優れている」という代わりに、「自分の担当範囲に対して強くコミットし、自分の力でやり遂げる人」でなくても、「周囲のメンバーの力を最大限引き出し、うまく巻き込んでいくことで結果を出せる人」であることを求める、と言ってみるとかだな。

 なるほど。

 こうやって、あえて二択を作ってどちらかを選ぶ、ということによって、何を重視しているのかということが伝わるし、万が一、お互いの意識がずれていた場合には、そのことがはっきりする。

 なるほど、だんだんわかってきました。「これまで、これから」にせよ、「……でない、……である」にせよ、伝えたいコンセプトがある時には、単にシンプルにするだけでなく、何かと「比較」して伝える方法もあるってことですね。

 その通り。

 わかりました。次のミーティングでは、この方法で、うまくいきそうな気がしてきました。武藍さん、今日もありがとうございました!

いかがでしたか? 「比較」を用いてコンセプトを明確にする方法について、2つの例で考えてみました。皆さんもコンセプトをはっきりさせたい時には、こういった方法を試してみてはいかがでしょうか。


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