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相手に合わせたスキルの教え方

最近、武藍さんから教わりながら、チームのマネジメントに力を入れている磯さん、少しずつ状況は改善しつつあるようです。どうやら今は、スキルの教え方について、チームの六車さんと話し合っているみたいですね。ちょっと様子をのぞいてみましょう。

磯主任(磯) ……で、六車さん、一之瀬の教育をお願いしてから2週間くらい経つけど、どう? 少しは自分で動けるようになってきた?

六車(六) 一之瀬君はまだ1年目だからしょうがないと思いますけど、まだまだ大変ですよー。

 そっか。実際どんな感じ?

 余裕がある時には、資料の作り方とか、打ち合わせメモの取り方とか、あらかじめ丁寧に教えてから、少しずつ仕事をお願いしているんですけど、なかなか安心して任せられるレベルじゃないんですよねー。

 うーん、まあ、俺が見ていた時も、確かに器用な方ではなかったな。ガッツはあるんだけどなあ。

 そうですね。いつも返事だけはすごくいいんですよ。でも、教えた内容をちゃんと理解できていないことも多いんです。

 そうか。困ったなあ。

 実は今日も商談があったので、一之瀬君に少しだけ説明してもらおうと思って、資料作りも1、2枚お願いしていたんですよ。でも、作ってきた資料を見ると、最新の価格データが反映されていなかったり、日本語が変だったりして……。この間、資料のチェックの仕方を教えたばかりだったので、少し怒っちゃいました。

 あらら。

 結局、そんな調子じゃお客さんへの説明なんてとても無理なので、商談は私一人で行ってきたんですけどね。その間、一之瀬君には資料を作り直してもらってました。

 うーん、そっか……。だけどむしろ、連れていって、六車さんの説明を見せたり、下手でも少しはやらせてみたりした方がよかったんじゃない?

 でも、今の調子だと、お客さんの前に連れていっても意味ないですし、ちょっと危険だと思いませんか?

 そうかな? 人間、誰だって最初は失敗から学ぶことも多いと思うけどなあ。俺だってそうだったし。

 そうですか? 私が新人の時は、武藍さんから最初にしっかりと教わりましたし基礎をちゃんと理解しておかないと、できるようにならないと思います。

 そうかなあ。俺も武藍さんに指導してもらってたけど、どっちかっていうと、やりながら学んでいったと思うなあ。

(ちょうど武藍さんが通りかかる)

 あ、武藍さん。お久しぶりです!

武藍室長補佐(武) お、六車、久しぶり。元気か? ああ、磯と打ち合わせ中か。

 はい。ちょうど今、昔、武藍さんに教わったことを話していたんですよ!

 へえ、そうなんだ。何の話?

 そうだ、武藍さん、いま、お忙しいですか? ちょっと聞いてくださいよ。

 いや、大丈夫だけど、どうした?

 実は今、六車さんと、新人の一之瀬って子の教え方について話をしていたんですけど……。

 そうなんです。私は、しっかり最初に基礎を教える方がいい、って思うんです。私も武藍さんにそう教わりましたし、そう思いませんか?

 僕は、まずはやってみながら学んでいくのもいいんじゃないか、と言っているんですけど……。

 まあ、教える内容にもよるだろうけどな。そもそも、その一之瀬君ってのは、どういうやつなんだ?

 返事だけはいい子なんです。

 えーっと、元柔道部の、典型的な体育会系人間です。礼儀正しいし、ガッツはあります。

 想像するに、六車とも磯とも違うタイプなんじゃないか?

 違うタイプ……ですか? はい、違うと思います。でも、どういうことですか?

 あ、それって、この間教わった、やる気を上げる方法は相手のタイプによって違う、ってやつと、同じですか?

 そう、まあ同じようなことだ。ただ、スキル教育については、相手に合わせて1つの方法を選ぶというよりも、どういう順番で、どこに重点を置いていくか、といったことになるんだけどな。

 なるほど。

 へー、面白そう。具体的にはどういう方法があるんですか?

 大きく分けて3つの方法がある。1つ目は、さっき六車が言ったように、「言葉で詳しく説明する」という方法だ。物事のやり方をしっかり頭で理解してから始める頭脳派タイプに対しては、この方法から始めることが有効だ。

 あー、そうなんですね。きっと私は「頭脳派」なんですね!

 そうかもな。コツとしては、内容が複雑な部分については、一旦説明したあとに、逆に、相手がどのように理解したのかを説明してもらうといい。「ホントにわかった? じゃあ、何がわかったのかちょっと説明して」という感じかな。そうすれば、理解がずれていないかどうか、確認できる。

 なるほどー。確かに私も、武藍さんによく聞かれてましたよね。

 そうだな。そして、2つ目は「手本を見せる」という方法だ。人の真似をしながら物事を覚えていくのが得意なタイプには、ごちゃごちゃ説明する前に、「見せる」ところから始めるといい。

 確かに、百聞は一見に如かずって言いますもんね。言葉で説明しても、わからないこともありますし。

 でも、ちゃんと説明せずに見せても、正しく伝わらないんじゃないですか?

 もちろん、簡単なポイントくらいは事前に伝えておいたほうがいいだろう。でも、六車みたいに、詳細に説明してから手本を見せたほうがいい人もいれば、実際の様子を見てからじゃないと、いくら言葉で詳しく説明しても全くイメージがわかない人もいるんだよ。

 へー。そうなんですか。

 その場合、見せた手本の「イメージ」が残っている間に、少しだけでも真似させてみると、指導の効果も高まる。

 なるほど。

 それで、3つ目の方法は、磯がさっき言った、「まずは、やってもらう」っていうやつだな。言われたとおりに動くことよりも、自分で工夫しながら物事のやり方を理解していくタイプには、やらせながら教えていくほうが早い。

 なるほど。フィードバックを与えていくんですね。

 そう。その時は、「こうしろ」と答えを直接教えすぎない方がいい。本人が色々と工夫して、その問題を解決していくことによって、スキルが身についていくわけだからな。

 そうなんですか。私、どうしてもああしろこうしろって言っちゃいそうだから、気をつけなきゃ。

 難しいですね。

 まあ、くれぐれも、教えている自分が好きな方法だけで教えてしまわないようにすることだ。そして、うまくいかないようなら、意識的に違う方法を試してみること。いずれにせよ、3つの方法を上手く組み合わせていくことが必要だな。

 はい、気をつけます。

 あと、当たり前のことだけど、一度に多くのことを教えようとしないこと。ある程度の期間をかけて、毎回少しずつ課題を与えていく、それができるのがいい指導者ってもんだ。

 なんか、教えるのも大変ですねー。

 そうだな。まあ、2人とも頑張れよ。

磯/六 どうもありがとうございます!

いかがでしたか? Will-Skillシリーズの3回目、今回はSkill(スキル)教育についてでした。Will(やる気)向上の方法と同様、「自分の好きな方法に偏らない」ということを意識して、相手のタイプに合わせたスキル教育を試してみてください。

六車/磯主任のチームにいる6年目の女性社員。いつも元気で顧客企業からの評判もいい、チームのお姉さん的存在


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なるほど思考術---戸部克弘戸部克弘(とべ・かつひろ)

企業受験ゼミナール 講師。東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻修了(工学博士)。 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンを経て、株式会社NTパートナーズ代表取締役に就任。株式会社NTパートナーズが運営する企業受験ゼミナールにて、就職活動に取り組む大学生、大学院生に対する支援、プログラム(講習会、個人面談など)を実施

http://www.kigyo-juken.com/

戸部克弘

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