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英語嫌いが治せます 「多読」のススメ~楽しく、たっぷり~

英語嫌いが治せます

文意分析から文意把握へ

 インターネットの普及に伴い、ビジネスをめぐる環境は複雑多岐にわたるようになり、得るべき知識、得られる情報の量は格段に増えている。私たちはこれまで以上に母語・外国語を問わず「読む力」を求められている。あふれんばかりの情報を読みこなし、必要なものを抽出できるだけの情報処理能力を身につけるには、「多読」を通じて大量に読むことに慣れなければならない。
 このような潮流の中で、いわゆるTOEIC・TOEFLといった英語能力試験においても、大学入試においても、リーディングのボリュームが増えつつあり、従来型の「文意の分析」ではなく「大意の把握」という能力が問われるようになってきている。

夏目漱石、灘中高校長も支持した「多読」

 英語学習において「多読」が非常に効果的であることは、夏目漱石、丸山真男ら、実は今までも多くの先人達が強調してきた。
 以前BUAISOが取材した灘中学・高等学校(神戸市東灘区)の和田孫博校長も、英語教師としての立場から「多読」の重要性を唱えていた。同校では近年海外の大学や大学院へ進学する卒業生が増えつつあり、英語で「読む力」をつけて送り出してやることが不可欠だという。
 また、数学を中心に、大学入学後も見据えた高度な学力指導で評判・実績ともに高い進学塾SEG(東京都新宿区)でも、古川昭夫代表が英語指導のメソッドとして積極的に「多読」を取り入れている。
 従来は英語の入門期から「多読」を行うための洋書の入手が難しかったが、インターネットの普及に伴って簡単に入手できるようになり「多読」の拡大を後押ししている。

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辞書を引かない、飛ばす、やめる

 酒井氏が編み出した「多読」3原則はユニークだ。 1、辞書を引かない 2、わからないところは飛ばす 3、読むのが辛くなったらやめる。「これを言うと、日本中の英語の先生を敵に回してしまいます(笑)」。
 驚く取材陣に酒井氏は屈託なくさらに面白いものを見せてくれた。「電気通信大学に入学してくる学生の大半は受験英語に懲りて、『もう英語なんて勉強したくない』と思っています。そんな英語嫌いな学生が最初に読む本です」。なんと、この本には文字がない。「でもイラストにはちゃんとストーリー性があるのですよ」–これは語学習得の教育的観点からシリーズ化されている。読み進めると次第に文字-登場人物の名前とそれ以外の簡単な名詞、接続詞、冠詞-が出てくる。文字がイラストと密接に関連しているので、自然に入っていくことができる。一見これで英語力が身につくのかと不安になるほどの超初歩的なレベルだが、酒井氏によれば「大量の易しい本」を読むことが重要なのだそうだ。
 教育絵本と呼ばれるこれらのシリーズ本は、英語を吸収しやすい仕掛けが満載である。同じ言葉が繰り返されたり韻を踏んだりと、研究し尽くされた内容だ。酒井氏はこの教育絵本を「離乳食のようなもの」と表現する。「をさなごのやうに」–赤ん坊が母語を獲得していくプロセスと同じように、英語も離乳食から始めていく。これが酒井流「多読」アプローチである。

電気通信大学准教授・酒井邦秀氏

電気通信大学准教授・酒井邦秀氏

「それでも少しずつ難易度が上がると、あぁわからないなぁと躓くこともある。そんな時に大事なのは仲間です。インターネットのおかげで多読仲間が作りやすくなりました。多くの人が多読村やSSS(Start with Simple Stories)の掲示板に集い仲間を増やしています」。
多読村 www.tadoku.org
SSS www.seg.co.jp/sss/bbs/
 意外なことに、多読にハマる年齢層で一番多いのは30代から40代のビジネスパーソン。まさにBUAISO世代である。「学生は試験や成績など外的要因で英語を半ば強制的に勉強させられている場合が多いですが、ビジネスパーソンは英語を勉強することで、自分の可能性を広げるために一歩進み出る自主性が伴います。だからこそ学生より遥かにうまくいくように思います」。
 受験英語を経験した社会人であっても「大量の易しい本」から始めるべきだと酒井氏は説く。「今、自分のカバンの中にペーパーバックが入っていない人は、皆ゼロから始めるべきです」。

ボトムアップからトップダウンへ

 従来の日本の英語教育では、文意を得るために個々の語意を調べて積み上げていくという精読が主流であった。これをボトムアップというならば、「多読」はトップダウンだ。つまり、最初から精読できなくてもよく、多読を続ける中で話の流れをつかみ、次に段落の意味を理解し、徐々に細かい文法の意味や語意がわかるようになるという学習法である。
 これまではボトムアップゆえに、英語力=単語力+文法知識というのが常識であった。一方で酒井氏は「英語力=吸収量」だと言う。
「ざっと250ページから300ページくらいで、総計10万語という長さのペーパーバックがあったとすると、そのうちの8万語は 「the」「 I」「you」「of」「have」「be」など一番基本的な1000語の繰り返しでできています。一方で4000語、5000語までの1000語というのはたった1%の貢献度しかありません。
 この基本の1000語という数は、中学校の指導要領が指定している必須単語数とほぼ同じですが、中学校を卒業していれば8割は理解できるのかというとそうは問屋が卸しません。つまり、たった1000語の言葉が繰り返し使われているということは、『それぞれの語が多彩な意味で使われている』と言えるのです」。
 基本語一つひとつの根本にある意味をしっかり体得するためには、大量の英文に触れる必要があるが、中学英語の薄い教科書ではその意味を体得できるほどの頻度で基本語に出合うことは望めない。だからこそ酒井氏は「多読」を通じて英語を五感で捉え、体得していくというフィロソフィーに行き着くのである。
 英語の勉強には「いい加減さ」が重要なのだと酒井氏は強調した。
「こと英語の本を読もうとするとみんな几帳面な性格になる。一語一句辞書を引かないと気が済まなくなるのです。英語の勉強は特別じゃない。いい加減でちょうどいい。子供のように素直に吸収し、素直に表現すればいいのです」。 楽しく楽(ラク)して英語と遊ぼう! Happy reading!


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