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【金融多論】 FRB政策に揺れる金融市場

【金融多論】 FRB政策に揺れる金融市場

金融危機回避のために設計されたFRB政策に翻弄される金融市場。米政策金利上昇は必要か?
おそらくFRBは米国経済の実態を重視し、年内に穏やかな金利の上昇をスタートさせるだろう。

 世界的に注目された9月17日の米国FOMC(連邦公開市場委員会)では、2008年から継続的に行われたゼロ金利政策解除は発表されず金融政策の現状再確認に留まった。その理由として、FRB(連邦制度理事会)は米国経済を取り巻くグローバルな外的な要因に言及している。
 これによりFRBによる新たなFF金利の利上げは10月か年内、あるいは、今回のイエレン議長の発言内容や米国インフレーションの低さを考慮して2016年1月以降という予測まで出ている。OECD(経済協力開発機構)は米国に対して、現状では利上げを行わないようにという見解を示し、G20ではなぜ米国は金利調整が必要かという議論まで出ている。IMFも2016年の利上げを米国に要請した。
 FRBが重視する雇用の水準の指標である失業率は直近5.1%であり、経済理論的に非自発的失業を除外した失業率では、完全雇用と解されるデータ水準である。
 このような米国の状況下で、グローバルな金融政策に組み込まれている日本銀行の追加緩和は、米国の金融政策転換とその影響を注意深く観察しながらの実施となろう。10月にFRB、日本銀行ともに政策に動きが出る可能性もある。

FRBの政策転換を材料に取引するトレーダー

 2008年のリーマン・ブラザーズの破綻に象徴される金融危機から続いた量的緩和巻き戻しゼロ金利政策の解除、市場の正常化に向けたFRBの政策転換がもたついている。イノベーションとコスト減で、株式市場の本源的な価値を決める企業業績は向上している。金融危機以降、心配された金融システムの崩壊も起こってはいない。問題は、今後のFRBの政策変更のサプライズと市場の過剰反応である。
 過剰流動性状態にある経済において、世界景気や金融政策動向に米国株式市場が神経質に反応し、その影響を受けて低迷する世界の国々の株式市場の構図が出来上がっている。ドル円為替市場も、ドルとの金利差との相関より、むしろ、市場リスクに関係する動きである。金利の動きに一番敏感なのは債券トレーダーで、わずかな金利の動きで収益が左右される。
 このところ、日々500ドル、1000ドルという単位で大きな上下動を繰り返す株式市場は、高い変動率を伴いながら、心理的な不安定さや将来の不確実性を表現している。もちろん、これだけ振れ幅が大きいと売り買いを繰り返すヘッジファンドの一部に利益をもたらすとも推察される。
 しかし、限られた資産を有する一般個人投資家層には、大事な銀行預金や年金運用の市場としては、いくら過去数十年のトレンドから長期的には上昇するといわれても不安であろう。
 異常低金利下においても、将来的なハイパー・インフレーションという副作用も想定したが、どうやら現在まで、物価に対してはそれほど危害を加えていない。折からの原油など国際資源価格の歴史的な低下もあり2%程度のマイルドなインフレーション目標すら達成され得ない。これはFRBばかりか、わが日本銀行についてもジレンマである。
 それはさておき、その考案された量的およびゼロ金利という金融緩和政策が、金融市場の機能を損ない、逆説的に株式など金融市場にクラッシュをもたらす可能性を秘めた大きなリスクとなっている。ボルカールールなど強化された金融規制も市場の動きを緩慢にする。
 クラシカルな経済理論のテキストブックには当てはまらぬこの現象。FRBの金利上昇の政策の延期を、バブル崩壊による中国経済の長期低迷による市場の不安と変動に求めることも可能だろう。しかし、例えば、0.125%というような小刻みな変動に対して米国経済はその耐性がないほど回復していないのだろうか。
 もし、民間ベースの取引条件をも決める政策金利が上昇するならば、FRBの政策変更から、実体経済への影響も考えられる。銀行間の預け入れレートや企業・個人の預金レートは上昇しても、企業の長短期の借り入れコストに影響を及ぼし、好調な米国住宅市場を支える変動住宅ローン金利、原油安も追い風とした自動車販売ファイナンスを支えるオート・ローン金利のレベルにも影響を与えるだろう。
 しかし、それをもって米国経済が大きく変調するとは思えない。金利政策転換の動きで投資家が次々とポジション調整を行い、それが米国市場の大きな調整、クラッシュを連想する投資家の、コントロールできないリスク・オフの心理につながることは避けたい。
 去る9月17日のFOMCでは、この利上げという政策変更を慎重に検討し先送りにした。それを正当化する理由は、最近の世界経済や金融の動向である。即ち、上述の中国経済の減速、国際金融市場の混乱など外部的な要因を考慮する。
 市場との対話を通じての成果だろうか、FRBは、世界の中心である米国のみならず、ある時点からギリシャ債務問題になど欧州、新興国など海外景気、景況感にも配慮するようになっている。


IMG_2390西村 訓仁(にしむら・くによし)
米国、フランスの国立銀行、ドイツ系金融機関等で主に国際金融業務、ファイナンスに従事。ロンドンなど欧州駐在では、汎欧州の金融ビジネスを経験。現在は、ロンドンに株式を上場している世界的なネットワークを有するインフォーマグループの金融市場・国際政治経済の分析会社「インフォーマ・グローバル・マーケット(株)」の代表取締役。大学院では国際政治経済学を専攻。

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