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【金融多論】2015年の展望: ますます金融化、投機化する日本経済

【金融多論】2015年の展望: ますます金融化、投機化する日本経済

消費税を先送りし、経済成長戦略にフォーカスする安倍政権は昨年12月に行われた選挙で圧倒的な勝利を収めた。同時に、国際格付け機関の一部は日本国債をワン・ノッチ格下げした。
金融市場では、円安・金利安・政府日銀の市場関与で、株式などが上昇している。その副作用や金融化・投機化をうまくコントロールすれば、企業や個人のリスクが緩和されるだろう。
景気に明るさが出てきたとは言い難いが、長い間の閉塞感やデフレ・マインドに変化が見られようか。六本木など都内の繁華街は若者や社用車、タクシーで例年と比べてやや混んでいるようには見受けられる。米国経済の堅調さと120円近辺の円安傾向が続き、輸出企業が潤い始め、日本株式市場は、チャート上でも18000円を目指すようなさらなる上昇を示している。
本稿ではこうした金融経済のマクロ的な変化を見ながら、個人の主要な金融商品、2015年のいくつかのリスクから新興国を抽出し解説したいと思う。

日本最大の金融商品取引所である東京証券取引所。2015年はどのような物語を生み出すのだろうか

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円安、原油安と国債マイナス金利に象徴される歪な日本金融市場

 2014年7—9月期の我が国の実質GDP成長率は前期比マイナス0.5%(年率マイナス1.9%)を記録している。産業の空洞化や急激な円安反対論のなかで輸出は、米国経済の堅調な経済に支えられ、なおかつ円安で回復しつつある。個人消費や設備投資も緩やかながら改善の兆しが見られる。安倍晋三首相は財界の重鎮を集め、2015年春の賃金上げを要請している。外国からの旅行者など、非居住者の消費支出も強い。
 日本銀行は周知のように、消費税率引き上げ後の需要面での弱さ、原油価格の大幅な下落で、デフレ・マインド転換が遅れるリスクを考慮し、10月末に量的・質的金融緩和の拡大を行った。マネタリーベースで、長期国債の保有残高約80兆円(年間)と平均残存年限長期化、従来のETF(株価連動指数ファンド)、J-REITの買い入れに加えて、JPX日経400という高度な財務内容を有するとされる企業指数に連動するETFを買い入れる。
 こうした旺盛な追加緩和で、10年国債と超長期債の金利差が縮小している。一部の短期国債がマイナス金利になるという事態が起こっているが、多数の買い手が存在するのである。蛇足ながら、もちろん、そうした機関投資家は損を覚悟で買うことはないだろうが、異常な状態と言わざるを得ない。

より透明性が高まる日本の投資信託市場

 それでは、多くの個人投資家を呼び込んでいる2015年投資信託市場の展望はどうか。
 2014年の投資信託市場を振り返ってみると、純資産残高ベースで、11月末で82兆円にまで拡大している。これは前年と比較して15%の増加である。本年は個人投資家の貯蓄から投資へ向かうトレンド、NISA(少額投資非課税制度)の新規導入で、徐々にではあるが、リスク資産で形成される金融市場への個人資金の流入が見られた。日本株式市場は新たな波動に向けて上昇していると見受けられる。
 さらに、資金流入の背景には、世界的な低金利、日本を含むグローバルな株価上昇と円安が影響している。そうした金融環境は、米国の好調な経済とFRBを主軸とする主要中央銀行による継続的な金融緩和政策、より具体化するであろう安倍政権の成長戦略の第三の矢、10月末の日本銀行による追加的緩和により、市場にさらなる流動性が投入されたことも追い風となっている。前述のように日本銀行はJ-REITもETFも継続的に市場から買い上げる。
 新年も、現在の機関投資家や個人が投資の対象とする世界の金融市場、特に株式、債券などの市場では、金融緩和で生み出された過剰な流動性による歴史的な低金利マネーの動向が相場の上昇とサポート要因と考えられる。株関連では、業績のよい株式に注目が集まり、資源エネルギー銘柄などにも変化が見られよう。
 2015年は、2014年以上に国々の金融緩和政策の強弱に変化が見られると考えられている。すなわち、米国が金融緩和について、忍耐強く緩やかな転換を目指す一方で、今後デフレの懸念のある欧州、デフレからの脱却の道半ばであり成長軌道に向かう日本は、金融緩和を強化ないし継続する必要がある。
 自ずとそこに、金融緩和の濃淡が出てくることになる。デフレ懸念から欧州中央銀行(ECB)は政策金利を0.05%にまで下げ、市中銀行が手元余剰資金をECBに預けた場合、マイナス金利(マイナス0.20%)、すなわち、ECBへ金利を払って金を預金することになる。
 今年の投資信託の売れ筋をみると、個人投資家に資金純入額から人気のあったものは毎月分配型のインフラ関連株、REIT、欧州ハイ・イールド債券ファンドなどである。共通する点は、毎月分配型が組み込まれた投信で、シニア投資層から手堅い投資を目指す投資家まで強い人気があったことである。
 2015年も、定期的な分配金を志向する投資家の傾向は続くと考えられる。従来から、分配金は運用益から支払われるか、投資家の知識の進展と共に、元本を取り崩しているのかという点に投資家がより注目し始めている。
 これについて昨年12月1日に施行された改正投資信託法で、分配金を含めた通算損益の通知制度が開始され、運用報告書も図表を加え分かりやすくするよう義務づけられた。そうした投信市場に対する透明性の改善で、今後はより元本払戻金と分配金の関係が明確になり、投資家への情報が改善されものと期待される。

新興市場のなかでもロシアの世界戦略がリスク

 2014年の新興国市場では、経済制裁に加えてロシアなど急激な原油価格の低下、世界的な金融緩和で通貨安に見舞われた国々もあった。引き続きインドやトルコ経済、米国からの自立と改革路線を掲げる政権が誕生したブラジルなどの成長に期待が集まる。経済の減速が伝えられているが、2015年も、人民元を自由化し、巨大な政府支出に支えられた中国は、ロシアとともに、地政学リスクと収益機会、世界経済へのインパクトという両側面から注目される。
 特にロシアの見方については、著名な金融経済エコノミストやアナリストの間でも異なる。国際政治学者の中には、孤立し追い込まれるロシアの軍事行動に対して懸念を示す者もいる。欧州連合は経済制裁を強めているが、ロシアの孤立や想定外の行動を恐れ、解除可能な制裁としている模様だ。こうした状況に直面してロシアの経済は低迷しよう(2015年はマイナス成長)。ロシア中央銀行は、インフレの鎮静化、通貨ルーブルの急低下を緩和する目的で、2014年6回目となる政策金利の大幅引き上げ(10.5%から17.0%)を即日実行している。

企業・個人の金融化・投機化

 2015年は、企業にも個人にもますます金融化、投機化する動きが見られよう。日本人が学んだ1990年代のバブルの歴史が繰り返すとは言わないが、企業も個人もリターンを追求する限り、小さなバブルも含めてその可能性は否定できない。
 例えば、一般的な製造企業は、投下資本を用いて、モノづくりで15%のマージが得られるとする。しかし、現金化するには中長期的なサイクルを通じる必要がある。その一方で、一瞬で30%のリターンを稼ぐことができるとしたならば、企業はどのような経済行動に出ようか。
 地道な実入りがほとんどゼロの銀行預金や為替のリスクなどがない伝統的な金融商品を保有し続ける、保守的で堅い家計も存在する。一方で、今なら儲けのチャンスとぎらぎらした目で株、債券、外国通貨投資、投信、逆張りで金を保有する投資家層も見られる。2015年の相続税上昇も気になるところである。このように経済の金融化はこれからもしばしば見られるだろう。前者は分散投資で、後者は投資心理とリスクをコントロールしながら合理的に投資行動を起こすべきだろうか。投資機会が高まる状況で、将来の金融環境を自分なりに考えてみることも大切と思われる。それと共に、時には、さまざまな副作用を考えてみることも必要だろう。
 つまり、2008年の世界金融危機後、世界の中央銀行が紙幣を増刷し、その結果として、歴史的な超金融緩和状態、低金利状態を生み出し、世界のマネーを集める株式市場の上昇が常態化している。そのような中で予想外の出来事や副作用、実体経済との関係、雇用と賃金の動き、社会的不均衡の拡大など、考慮すべき問題は多い。


西村 訓仁(にしむら・くによし)
米国、フランスの国立銀行、ドイツ系金融機関等で主に国際金融業務、ファイナンスに従事。ロンドンなど欧州駐在では、汎欧州の金融ビジネスを経験。現在は、ロンドンに株式を上場している世界的なネットワークを有するインフォーマグループの金融市場・国際政治経済の分析会社「インフォーマ・グローバル・マーケット(株)」の代表取締役。大学院では国際政治経済学を専攻。

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