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【金融多論】医学とMBA学生のコラボレーションによる起業 日本逆上場と190億円のファイナンス

【金融多論】医学とMBA学生のコラボレーションによる起業 日本逆上場と190億円のファイナンス

今回は、やや趣を変えて一人の日本人医学生の起業と国境を越えた上場、資金調達に至るダイナミックなビジネスの成功要因を考えてみたい。本年2月に東証マザーズに上場した米国のアキュセラ・インク創設者の窪田良氏は、東京の大学病院に勤務後、米国に留学、現地大学の研究サポートや米国の友人の貴重なネットワークなどを活用して、米国で起業に成功し日本に上場した。これは、米国籍企業としては、7年ぶりとなる日本株式市場への上場である。日本でのIPOを通じて、中小企業としては大型の約190億円の資金調達も成功させている。

社会貢献を旨に米国シアトルで起業

 彼は、日本の大学を卒業し、病院勤めをした後、米国のワシントン大学(シアトル市)に留学している。眼科が専門医で、高齢者に多い緑内障治療など眼の病気の分野で研究を進め、忙しく大学研究室と下宿を往復する日々のなかで、この大きなチャンスを掴んだといえる。
 ワシントン大学の研究開発援助は、ハーバードなど東海岸の有名大学と比較して、縛りが少なく経済的にも自由度が高いという。それは、研究者にとって、自分の信じる研究を追求できる点でも大きなメリットであろう。加えて、たまたま出会ったMBA課程の友人とコラボレーションを進めたということが大きかった。医療研究をより社会に役立てたいという思いを実現する強力なサポーターを得たのである。
 窪田氏は医学研究を経営ビジネスの研究論文の資料に利用したいというその友人に協力すると同時に、その経営修士生のシナリオを参考にして、初期のビジネスモデルを構築したという。すなわち、MBA学生のビジネス研究をするロードマップやストーリー展開と彼の医学研究情報をスワップしたのである。
 また、米国の食品、医薬品の許可を司る行政機関であるFDA(食品医薬品局)からも、早期に優先的に研究を進める分野であると認められ、数々のアドヴァイスを受ける立場にあることも同社の強みであろう。既に日本の大手製薬企業とも提携協力関係を築いている。
 眼科の病気の分類では、緑内障が30%、網膜剥離22%、ドライアイ13%と緑内障の比率が高い。彼はそれを解決することをライフワークにする決意をしたという。会社の理念、経営理念にそれを掲げ、研究の傍ら企業化を進めた。彼のビジネス開発のポイントは緑内障を飲み薬で治すことである。こうして経営理念も企業理念も、盲目から人々を救うという社会貢献に落とし込まれていく。

自分を補完する経営者チームを組成

 地下室での研究生活から、経営者チームを作り上げ、自ら会長兼CEOとなり、会社運営に着手した。時代の波で、女姓の各分野のスペシャリストや経営者も多数、チームに迎え入れている。財務ディレクターには、大企業と中小企業で、買収、IPOなどコーポレートファイナンスについて豊富な経験を有する人材を登用し、着々と強い企業とチーム作りを進めていった。
 このマネージメントチームは、会長兼社長CEOの同氏と研究と商品開発、財務、人事、IT担当の役員で構成され、窪田氏以外はアメリカ人が中心である。経営チームのビジョンにも、眼の病気を抱えた人々を助けていくという使命を銘記している。


西村 訓仁(にしむら・くによし)
米国、フランスの国立銀行、ドイツ系金融機関等で主に国際金融業務、ファイナンスに従事。ロンドンなど欧州駐在では、汎欧州の金融ビジネスを経験。現在は、ロンドンに株式を上場している世界的なネットワークを有するインフォーマグループの金融市場・国際政治経済の分析会社「インフォーマ・グローバル・マーケット(株)」の代表取締役。大学院では国際政治経済学を専攻。

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