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市民が資産形成と街や産業の発展に直接参加するJ-REIT市場

自分の利用するオフィス・商業施設などを
育てていく投資とその評価の視点

 J-REITは、東京・丸の内など都心のオフィスビルをはじめ郊外のオフィスや都心、地方都市などの商業施設、一般住宅や産業用倉庫に投資する。そして、その受取賃料収入などを原資として、配当可能利益の90%を投資家への分配金に向けることなどで、法人税が免 除される投資ヴィークル、通常、投資法人と呼ばれる。
 いわば不動産と金融が融合した商品であり、投資法人のバランスシート構造は、資産(オフィスビル、商業施設、住宅など)と負債(投資法人債や銀行借り入れ)、投資家からの出資(IPOファイナンス)と簡単だが、資産運用会社へ出資するスポンサー企業、運用会社のモラルやその質の高さが重要となる商品である。
 J-REITの投資資産に組み込まれたオフィスビルやショッピングモールは、自分が仕事や余暇で利用するものであったり、通勤・通学で毎日見ている馴染みの建物であったりする。病院や倉庫、リゾートマンション組み入れの資産クラスも多様化している。投資家層も大手機関投資家、地銀、一般企業、個人、そして、外国法人や外国の個人投資家など多様である。

 REITに投資した場合には、その物件が所在する街の様子、景気や発展を実感しながら、投資対象を育て見守るという、現預金投資とは一味違う楽しみがあるかもしれない。現 在35のJ-REIT銘柄が上場され時価総額はおよそ3兆円の規模に達している。
 J-REIT市場の全体のパフォーマンスを測るものとしては、東証REIT指数がある。2003年3月31日の時価総額を「1000」とし、現在の時価総額がどのくらい変動したかを表すもので、全銘柄を対象としている。ちなみに11月22日時点の終値ベースで1119。歴史的な東証REIT指数は2007年をターニングポイントに大きく下落しており、1000を下回る低迷期を経て今後の拡大が期待される。
 この他、後述する不動産証券化協会の提供する不動産投資インデックス、QUICKのインデックスも有用である。東証REIT指数先物取引指標では「Tdex」があり、裁定取引などに用いられる。投資口価格については、銘柄ごとに価格が表示される。
 理論上の投資口価格は、一口あたりの分配金と現在価値(長期金利+リスクプレミアム)で算出される。J-REITのリスクプレミアムは諸外国のREITと比較しても割安水準にある。この点で、外国人投資家も日本市場に注目し投資が増えているようだ。
 投資対象の評価、留意点には専門的な項目も含まれ、信頼できる証券会社など投資のプロのアドバイスを受けることも必要である。個別REITを評価するケースでは、裏付けとなる資産クラスにより異なるが、投資のリターンを上げリスクを軽減するために、次のような点を調べることができると良いだろうが、実際にはなかなか情報が取れないものもある。
 スポンサーの背景、質などや運用者の方針とスキル、ポートフォリオを構成する取得物件の状況、鑑定評価額、物件価値を上げるための取り組み、空室率、賃料の水準、投資法人債の格付レベル、コストとNOI(事業損益+減価償却費)、NOI利回りの推移、LTV(借入比率)など財務比率、今後特に問われるグリーン・ビルディングなど環境配慮型の物件投資、そして今後の予想収益や分配金などがポイントとなるかと考える。

黎明期から11年目のJ-REITの軌道とその特性
――決して箱入り娘ではない試練の体験

 2001年9月、三菱地所を中心に創設されたジャパンリアルエステイト投資法人と三井不動産を主要スポンサーとして組成された日本ビルファンドの2銘柄(いずれもオフィスREIT)が初めて上場され、上場J-REITの時代が始まった。このコアとなった2社の財務力と経営手法が高く評価され市場は拡大した。
 この10年を概観すると、マクロ的な景気動向の変化や人口減少に加えて、団塊の世代の退職に伴いオフィス需要が伸び悩む2003年問題、国内耐震強度偽装問題、CMBS(商業不動産担保証券)市場の危機、2008年のリーマン危機、2009年の税改正、不動産市場安定化ファンド創設、そのほか東日本大震災、欧州不動産バブルの崩壊、金融収縮、欧州債務危機など、数々の試練を経て成長を続けた。
 このJ-REITも2007年のピーク時には42銘柄、7兆円に迫る時価総額を記録した。しかし、その後、資金繰りの悪化が伝えられた一つのREITの民事再生法申請、REIT低迷期、REIT間のM&Aを経験、REITに対する一層の透明性や財務力強化が求められた。2011年東証REIT指数は26%下落している。
 しかし、債券と同じように価格の下落は利回りを高め、通常預金金利を上回る5%以上の配当を行うものもある。テナントの退出がなければ、比較的安定した賃料を収益の源泉に据えたJ-REITは、平均的にはミドルリスク・ミドルリターンという商品特性に当てはまるかもしれない。

 だが、過去の年間の騰落率を概観すると、内外景気動向、株式市場や不動産会社の株価、CDSレベルなどに相関する側面も見られ、年により日本株式や日本債券より変動が大きいことも考慮せねばならない。
 もちろんJ-REIT以外にも、高い配当を狙う年金運用仕様の私慕型不動産ファンドなど、ハイリスク・ハイリターン投資もある。こうした私募・非上場ファンドの増加とともに、2012年10月には私募・非上場ファンドのデータを既存のJ-REITデータと組み合わせたインデックスが不動産証券化協会から発表され、運用パフォーマンスの測定に役立つインデックスが整備されている。
 また、日本銘柄を中心としたJ-REIT投信、ブラジルREITなど南米のエマージング不動産市場の案件に投資するもの、ファンド・オブ・ファンズ、通貨選択型で豪ドル、インドネシアルピーなどで運用する多様な商品が出ている。
 このようにさまざまな投資家のニーズとリスク選好の度合に応じたメニューが豊富である。しかし、顕在潜在するリスクや投資効果を慎重に予測・検討しながら投資すべきであることは言うまでもない。


参考文献:ニッセイ基礎研究所・金融研究部門発行レポート4/2012年 ほか

西村訓仁(にしむら・くによし)
ニューヨーク、フランスの国立銀行、ドイツの多国籍銀行などで金融業務に従事。ロンドンなど欧州駐在では、国際金融業務を経験。現在はインフォーマグループの英国ロンドン市場に上場する、金融市場・国際政治経済の情報分析会社インフォーマ グローバル マーケット ジャパン株式会社の代表取締役を務める。銀行、事業法人、コンサルティング会社、研究所に向けて市場や政治経済の情報を執筆。大学院では国際政治経済学を専攻。

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