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中国でIT・モバイルベンチャーの成長を支える日本人

北川伸明氏

 北京市北西の北京大学、清華大学近くに中関村という、家電販売店の集積する地域がある。そこは、東京の秋葉原に似ていて、家電、パソコン、携帯電話から電子部品などさまざまな品々が割安な値段で販売されている。そうした地域を北京市政府はIT関連産業の集積地として後押しし、今やマイクロソフトなどの立派なビルが立ち並ぶ地域へと発展した。
 また、立地の良さから北京大学、清華大学などの優秀な卒業生を雇用しやすく、今後ますますIT関連産業の発展が見込まれているのだ。
 こうした背景から、海外のIT関連への海外投資ファンドの多くは北京に拠点を構えている。日本から中国のインターネット関連ベンチャー企業への投資を行っているサイバーエージェント北京代表の北川伸明氏を訪問した。 

自己の強みに集中して他社との差別化を図る

 中国では今年、携帯電話サービスが第3世代に入り、モバイルインターネット関連のビジネスが黎明期を迎えた。「そうしたことを背景に、中国のIT・モバイル業界の今後の見通しは、最低でも4~5年は明るいと考えています。インターネットもモバイルも、契約数の増加もまだ期待できる上、一人当たりのユーザーがサービスに対して使う金額も経済成長に伴い、間違いなく増加すると思われます。量と質双方の掛け算で市場が拡大するポテンシャルが最も高いのが中国のマーケットだと思っています」。
 サイバーエージェントの中国投資の特徴は、インターネット先進国でもある日本の事業会社として培った、インターネット事業の運営ノウハウや経験といった強みを活かせる分野に特化した投資戦略を取っている点だ。「インターネットの事業会社として中国市場で積極的にベンチャー投資事業を行っている企業は、日米問わず実はあまり多くありません」。
 欧米および中国資本で知名度が高く、資金力も豊富な投資ファンドは数多く市場に参入しているが、同社はインターネット・モバイルという自己の強みに集中する戦略を取ることで差別化を図っている。

成功する企業は本質的に変わらない

 北川氏は大学時代に「現在は、放送が無線で通信は有線が主流だが、近い将来それが逆転する」という言葉を耳にして同業界に足を踏み入れることになった。その後、日本の大手通信キャリアで海外投資事業を担当し、サイバーエージェントの中国投資事業に参画することになる。ベンチャー投資経験豊富な北川氏にとって、日本と中国のビジネス環境が違っても、モバイル・IT業界において成功するベンチャー企業は本質的に変わらないという。「成長市場を見極め、競合とは異なる強みをしっかり持ち、明確な経営戦略を自分の言葉で語ることができて、かつ強いチームを作り上げられる優秀な経営者がいる企業が成功する可能性が高い、という原理原則は普遍的なものだと思っています」。
 リーマンショック以降、中国のベンチャー投資市場も金融危機の影響を受けている。2009年に入ってから6月までの市場全体の投資金額は、前年比3分の1から4分の1程度まで落ち込んでいるそうだ。「しかしながら、回復の傾向はすでに見え始めていて、2009年4~6月期には投資金額自体は低水準ではあるものの、投資件数は金融危機後初めて四半期ベースで上昇に転じました。世界的に見ても数少ない成長市場への投資家の回帰が始まった兆しだと考えています」。ただ、今回の金融危機はこれまで過熱感もあった中国市場に調整をもたらしたという点で、投資家の立場からすると、逆に絶好の投資タイミングであるようだ。サイバーエージェントは金融危機後も以前と変わらないペースでコンスタントに投資実績を積み重ねているという。

変化する“中国の活かし方”

 北川氏の成功の定義は、現在携わっているベンチャー投資事業が、今後新しい市場や産業を形成する企業や、近い将来に国や世界を代表するような企業を発掘、投資、育成して、その企業と共に自分も成長することだそうだ。
「ベンチャー投資における自分の成功は、世の中や社会の発展にも貢献したといえると思います。それが一番の夢でしょうか」。
 今までは中国の安い労働力の活用を目指して中国にやってくる日本企業、特に製造業が多かったが、これからは日本の高い技術、ユニークなビジネスモデルを中国で活かす日本企業の進出が増えると思われる。特に、日本のインターネット、IT・モバイル関連企業の中国進出動向が今後の注目だ。


仲 智行(なか・ともゆき)
東京大学経済学部卒業後、ソロモンブラザーズアジア証券(現日興シティグループ証券)入社。事業法人70社余りにB/S、P/Lの改善のためのコンサルティング営業に従事。そこで不良債権処理、証券化、デリバティブを用いたリスクヘッジ案件に数多く携わる。その後、中国留学を経て、中国不動産投資ファンド会社にて、本部長として北京オフィス証券化ファンド、PEファンドを手がける。現在、日中双方向での投資・ビジネスコンサルティングを行うZENパートナーズ(株)代表取締役社長

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