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マンダリンオリエンタル ホテル

天空の城

 東京、日本橋室町。地下鉄の駅から直結し、東京駅からも徒歩12分と絶好の場所にマンダリンオリエンタル東京はある。最上階のフロントへは直通のエレベーターで。左右に広がるパノラマに言葉を失う。「お越しいただくお客様を最高の景色でお迎えしたかったのでフロントを最上階にもってきました」(PRオフィサー中原佐知子さん)。ほとんどのビルを眼下に見下ろし、天空の住人になったような感覚にさえ陥る。
 日本橋にはもともと超高層ビルがない。だからこの高層フロアからは丸の内や都心部、東京湾まで見渡せる。空気が澄んだ朝の景色も、酔いしれるような夜景も、そして夕方の赤い空に浮かび上がる富士山もこの場所ならではの贅沢だ。この景色をすべての来館者が楽しめるように客室やレストランが配置されているのがうれしい。

土地の完成と文化 さりげなさとこだわり

 日本橋といえば江戸時代に呉服問屋が連なり、商業の要所として栄えた伝統ある由緒正しい町である。2005年12月、日本で初めてのマンダリン・オリエンタルを開業するにあたり、その呉服の町の伝統を、ホテルのデザインコンセプトを表現する方法として取り入れた。呉服、つまり布を使ったのだ。日本の美しい自然「森と水」をテーマにホテルの中のすべてのファブリックはデザインされた。
 一見ただの幾何学模様に見えるそれぞれのデザインには深い意味がある。エントランスの壁や床には木の根や年輪、水の輪が広がる様が表現された布地が使われている。途中階の壁やソファには幹、小枝、クヌギの葉、ドングリなどが幾何学的に織り込まれ、各部屋のベッドカバーには落ち葉や木漏れ日がデザインされている。わかりやすいこれ見よがしな日本らしさを配置するのではなく、よく見れば気付く、さりげないこだわりを随所に散りばめている。
 テキスタイルデザイナーがデザインし、日本中の伝統工芸の職人たちが布を織り、家具が完成するまで、ゆうに5年はかかったという布へのこだわり。それは呉服問屋の町、日本橋に敬意を表してのことだった。トイレに入れば糸巻きが飾ってあるのも、壁のアートワークをよく見ると帯が使われているのも、すべては呉服の町、日本橋へのリスペクト、布へのこだわりである。こんなこだわりとさりげなさがこのホテルらしさなのだ。
 東京の例のようにマンダリン・オリエンタルは新しくホテルを開業する際、土地の文化を大切にし、その研究と開業の準備に非常に長い時間をかける。「Senseof Place――それぞれの土地の感性と文化を取り込み、個性をもったホテルをつくる」。これはホテルが最も大切にしている哲学だ。

伝統の良さを理解し、生かしきる

 もちろんエッジのきいたモダンなインテリアも随所に見受けられる。1階に25メートルもの高さの吹き抜けを有する地上195メートルの日本橋三井タワー全体も、直線的で、先鋭的な新しさを感じるデザインである。しかしこのホテルのすごさは、この新しいタワーと、重要文化財にも指定されているあの三井本館とを渡り廊下で結び、両方の良さをホテルとして充分生かしきっている点にある。
 バンケットルーム、ビジネスセンターなどとして利用されている三井本館エリアは、改装はしてあるものの、その伝統の重みを全身で感じさせ、圧倒的な存在感で来る者を迎える。それは決して威圧的なものではなく、温かく、落ち着いて、そして威厳のある雰囲気だ。これは真に伝統のある本物だけがもつ空気なのだろう。
 マンダリン・オリエンタルは世界各地で歴史を持つ優れた建物をホテルとして利用している。イギリスではジェントルマンズクラブとして建てられた19世紀の古い建物を、プラハでは14世紀の建物を、それぞれ外観を損ねることなく、その良さを最大限に生かし、ホテルとして再生させているのだ。その地の伝統を大切にし、生かす。その心が日本でも生きている。


マンダリン オリエンタル 東京
東京都中央区日本橋室町2-1-1
TEL 03-3270-8800
www.mandarinoriental.co.jp/tokyo/

文:羽田祥子(編集部)

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