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ゲーム業界の進むべき道

photo: ロイター/アフロ

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iPod=ゲーム機?

 ライフスタイルの変化により”ゲーム機”が多様化している。PS3やXbox、Wiiといった家の中でテレビにつないでじっくり遊ぶ据え置き型ゲーム機に、DSやPSPなどの持って歩ける携帯ゲーム機。携帯ゲーム機の利点は、いつでもどこでもゲームができるということだ。通勤・通学の時間にもできるし、友達を待ちながらだってできる。
 さらに、携帯音楽プレーヤーiPodも、今後ひょっとしたら携帯ゲーム機と呼ばなくてはならなくなるかもしれない。4つのiPodモデルのうちiPod touchのキャッチコピーは「抜群のiPod。抜群のポケットコンピュータ。抜群の携帯ゲーム機」。アップルは今、ゲーム機としてのiPod touchを猛烈にアピールしている。iPod touchをアメリカのDSに、世界のDSにするつもりなのか。まさか、と思われるかもしれないが、アップルが初代iPodを出した時、ここまで普及するとは誰も予想できなかった。それを思えば、iPod touchが携帯ゲーム機として世界の主流になる可能性も否定できない。そうなる前に、任天堂も当然、新しい手を打ってくるだろう。ソニーもしかり。これまでゲームとは直接関係のなかったアップルが参入してくることで、今後携帯ゲーム機市場が変わるかもしれない。

モバイルに力を入れるゲームメーカー

 携帯ゲーム機と同じく、否、それ以上にいつでもどこでも誰でもゲームできるのが携帯電話、モバイルだ。
「モバイルは考えようによっては、今最も普及しているゲーム機なんです。ゲームメーカーの中にはモバイルに力を入れているメーカーもあります。また、ゲーム機向けのゲームを作ったことのない会社も、モバイルのゲーム事業に参入しています」(阿久津氏)
 PCも“ゲーム機”だが、PCやモバイルのゲームで今注目されているのがソーシャルゲーム。ソーシャルゲームとはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上で、友達と一緒に遊べるアプリケーションのことだ。ソーシャルゲーム自体は基本的に無料で、運営サイドはアイテムへの課金や広告で収益を上げる。アプリケーションには非ゲーム系のほか、カジュアルゲームが比較的多い。カジュアルゲームとは、カードゲーム、パズルゲームなど、誰でも簡単に遊べるお手軽なゲームのこと。前回取り上げたように、ゲーム専用機でもみんなで一緒に遊ぶ楽しさは味わえるが、同じゲーム機と同じソフトを持っていなければならなかった。これに対してソーシャルゲームなら、ゲーム機種が違っても、ゲーム機を持っていなくても、一緒に遊べる。しかもお金がほとんどかからない。人気を集めるのも道理だ。

ハードの革新によりゲームは新たな展開へ

 さらに、ゲームメーカーにとって辛い話がある。昨年9月の新製品発表会で、アップルのスティーブ・ジョブズCEOは、他の携帯ゲーム機と比較しつつiPod touchのゲームタイトル数の多さをアピールした。いつのデータかは不明だが、PSPは607本、DSは3680本、iPod touchはiPhoneを含めて21178本、と言ったという。21178本とはiPod touchとiPhone向けにAppStoreで販売しているアプリ数だが、PSPやDSと比べて段違いに多い。なぜそんな数字になるかと言うと、アップルはゲームの開発を自らせず、外部に委ねる、しかもそのやり方として、既存のゲームメーカーだけを相手にするのではなく、一般の個人にも平等に、自作ゲームを発表して売ることができる場を提供する、そういう道を選んだからだ。アップルが提供する開発ツールを使ってゲームを作ると、AppStoreでワールドワイドにダウンロード販売できて、売れればアップルの手数料を差し引いた代金が口座に振り込まれる。ゲームを開発する個人にとって、こんなに都合のいい話はないだろう。
「ゲームメーカーとしては、これだけ数があると埋もれないようにするのが大変です(笑)。モバイルや携帯ゲーム機の革新によって、ゲームはまた新たな展開の時を迎えているのかな、と思います。まずは、モバイルにふさわしいゲーム、携帯ゲーム機向きのゲーム、もっと本格的に、家でがっしりと取り組めるゲーム、というように、ユーザーのライフスタイルに合わせてゲームを切り分けていく必要があるでしょうし、そうなっていくと思います。

 ガイアもそういった取り組みのひとつとして、08年からiPhone/iPod touch向けタイトルの開発を始めました。最初は社内の開発のトレーニングを兼ねて『六角パズル』というパズルゲームを作り、次にモバイルの中でチューリップを育てるゲームアプリ『ポケットフラワー』、そして、本格的に遊べる麻雀ゲーム『麻雀部へようこそ!』を作りました。普通、モバイルのゲームはキーボードを使って遊ぶんですが、iPhoneはDSと同じでタッチパネルです。ただ、『麻雀部へようこそ!』はiPhoneの縦画面で遊ぶようになっていたので、横画面にしてゲームができるようにと、ゲーム内容も含めて改良をしました。そして『麻雀部へようこそ!2』を昨年8月に配信しましたら、わずか4日で国内AppStoreの有料トップアプリケーション総合で1位を獲得しました。
 麻雀ゲームなので国内向けに開発したんですが、面白いことに海外でも買っている方がいるんですよ。アメリカのAppStoreをのぞいてみたら、コメント欄に『英語にしてくれると、もっとストーリーがわかる』というコメントが英語で入っていたんですね。ゲームは高校の麻雀部に入ってみんなで麻雀をやって勝ち抜いていくというストーリー仕立てにしているのですが、そのストーリーがわからない、ということなのでしょう。さらに、『麻雀部へようこそ!2』はアジアでも売れました。中国の麻雀のルールは日本とは少し違うと聞いたことがあるんですが、どのような方が購入しているんでしょうか」(阿久津氏)


阿久津幸宏氏阿久津幸宏氏:
アニメディア編集長、劇場用アニメ『ビーストウォーズ』などのプロデューサーを経て、現在ゲームソフト企画開発会社・株式会社ガイア取締役プロデューサー。七会静名で近著「よくわかる『世界の死神』事典」(廣済堂あかつき刊)

株式会社ガイア
iPhone/iPod touch向けアプリ『麻雀部へようこそ!2』をAppStoreにて販売中
iphone.gaia-games.jp

参考文献
浜村弘一著『ゲーム産業で何が起こったか?』(アスキー)
大谷和利著『iPhoneをつくった会社』(アスキー新書)

渡辺麻実

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